異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百十話 第一回、ジャンカの町闘技大会開会式

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 ――翌朝。いよいよ本日、ジャンカの町にて闘技大会が開催される。
 既に会場には、今か今かと待ち受ける人々で溢れていた。
 闘技場には入りきらず、外で声だけを楽しむ者も多い。
 また、立ち寄った店で詳しく話を聞くもの。
 事前に仕入れた情報で、傭兵斡旋所レンズへと駆け込み、座っている者などなど。
 
 デイスペル闘技大会とは違う場所での初闘技大会いということもあり、ジャンカの町は
その規模を遥かに上回る、あらゆる種族の者たちで一杯となった。

 しかし、激しい争いなどは起こった形跡がなく、開始を告げる時刻が差し迫っていた。

「見当たらないズラ」
「本当、一体女王って何処にいるわけ? 何処にもいないじゃない」
「おかしいズラ。賞金の金貨も見当たらないズラ」
「そりゃ当たり前でしょ。見えるとこに金貨置くバカが何処にいんのよ」
「最もズラ……つまり、女王も見えないところに置いてるズラね」
「まぁ、そんなとこでしょ。でも大会の開会式は女王が宣誓するに決まってるわ。
大人しく待ちましょ……」


 闘技大会参加者は、現在控室にいる。総勢百六十名の参加者は、いまかいまかと
待ちわびていた。
 
「参加者の方は闘技場リングの周辺にお集まりください」

 案内がかかると、一人一人ゆっくり外へ出ていく。
 空には燃斗と思われるような炎が無数に打ち上げられてゆく。

「あれ。女王はやっぱいないズラ」
「見てあれ。何者かしら。変な仮面付けた男がいるわ」
「何ズラ。あれが女王ズラ?」
「どう見ても男にしかみえないわ。実は女王じゃなくて王だったとか?」

  周囲のざわめきが落ち着いてくる。仮面の男は片手を振りかざし、注目を集めた。


「ようこそお集まりいただいた! あー……声がでかかった。すまん。お集まりいただい
た皆様。本日は闘技大会に参加してくださり、有難うございます。大会企画者の……ツイ
ンです。私の出番は直ぐ終わるので安心してください。今日は、司会がおります!」

『おおー』という歓声が沸き起こる。
 ざわざわという声の方が徐々に大きくなってきた。

「お、おい見ろよあの美人」
「すげーー、何て可愛いんだ。一目ぼれした」
「うひょー。あれ、アイドルのニニーより可愛いんじゃねえか?」

「ご紹介します! 司会といっても実力者! 元、死流七支が一角。
セフィアです! 盛大な拍手を!」

『うおおおおおお!』と大きな大歓声が沸き上がる。
 そして可愛い仕草を見せつけるセフィアに、更に大歓声となる。

「皆さま! これだけではありません! もう一名! 幻妖団第二隊長、イビンさん
です!」

 今度は「誰だ?」というざわざわ音と、「なはは」という笑い声が挙がっていた。
 
「お静かに。続いて、今大会は特別審査を設けております。この審査はバトルロイヤルと
もいえる初戦から観ていただく予定です。それぞれあまりにも実力者であるため参加を見
送った方々です。大会の最大注意事項として告知いたします。絶対に刺激しないでくださ
い!」

 再びざわざわとした音が鳴り響いた。
 すると……リングの闘技場に、一人のいかにも目立ちたがりっぽい男が上がる。
 既に用意した席に座る三名に向けて、長髪する姿勢を取り始めた。

「おいばかやめろ。まじで死ぬぞ! よせ、ベルベ……」

 仮面の男が言い終わる前に、その男の足下へ紫の閃光が走り、煙を上げる。
 その者の隣にいる大男が大きく息を吸い込んだのを、慌てて止めている者もいる。

「な……なんだ……いまの……」

 男は慌ててリングから降りる。しかし会場からは出ないので戦う気は満々のようだ。

「いい実例ができたところで、司会へ交代します。私も参加者なので」

 最後のざわざわが起こると、男は司会へ音を増幅させるようなマジックアイテムをセ
フィアとイビンに手渡した。

「らんれすかぁ、わらしらんて、そんらうまく喋れるわけ……」
「わわっ。もう僕がやるの? えっと、開始する前にセフィアさんに水を飲ませて……皆さ
んちょっと待ってくださいねー」

 全員セフィアに見とれていた。水を飲む仕草も可愛く映っていたようだ。

「ぶはぁー。おいこらてめえら! 耳の穴かっぽじってよくききやがれ。きかねえと死なす
からなこら! いいか、バトルロイヤルってのはなぁ。ルインに聞いた話じゃ闘技場に上
がった二十人同士で殺り合うって話だ。最後に残った奴が勝ちあがる。分かり易いだろ? 
全員死ね!」

 ……会場はその途端、静寂に包まれた。

「あ、あのー。皆さん! 司会進行を務めることになったイビンです! 応援するので頑
張ってください! なお、敗退したとしても、景品が出る可能性もありますので、最後ま
で見ていってください!」
「なんて優しさだ……すげーいいやつだ」
「ああ。神だ」
「いいぞ! イビン!」

 イビンコールが一斉に湧き上がり、顔を真っ赤にするイビン。
 これほどのギャップを与えてみせたセフィアは、その場で気持ち悪そうにしていた。

「では! ツインさんに代わり、大会開始を宣言します! これより……今皆さまが立って
いる位置に番号が浮かびあがります。係の者が番号札をお渡ししますのでそのままお待ちく
ださい! その後、二十番までの方は闘技場リングAへ。二十一番から四十番までの方は闘
技リングBへ上がってください! 他の方は控室へお戻り頂いて結構です!」

 イビンの司会進行により、まもなく闘技大会が開催されようとしていた。

「らんれすかぁ。わらしは無視れすかぁー!」

 セフィアは暴れ出したため退場。
 ルインの目論見はからくも失敗し、彼女の代わりに連れて来られたのは、闘技大会参加を
破棄したライラロだったという。
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