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第五部 主と建国せし道 第一章 ジャンカの町 闘技大会

第八百六話 大会参加予定者の一部

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 ジャンカの町を後にして、ルーン国へと戻って直ぐの事。
 新しく建ててもらった大きな家。
 ここはもう、二世帯何てレベルじゃない程、多くの者が集う。

「あうあー」
「この光景、面白いっしょ」
「だうー」
「そうね。あたしの旦那だから出来るのかしら」
「あうあー」
「でも、ちょっと可哀そうよね。涙目だわ」
「ううっ……あーっ! あーーっ!」
「やっぱダメだわ。エイナ。泣き出しちゃったもの」
「いくら何でも無理あるだろ、これ!」


 俺の子であるエイナ、レイン、そしてレピュトの手甲
まで使用してルティアも預かる。
 クウは……胡坐の上で浮いているという荒業だ……この子だけどうして
こうなったんだ。
 戻って来たら速攻で子供を託されたが、結局それぞれ再度子供たちを受け取り、可愛がり
始める。
 しかし全員子育てが好きなようだ。
 ジャンカの町にはしばらく行かないと言っているが、ルーン国側でも十分出歩く
楽しい場所はある。
 遊び相手にも困らない。
 クウだけは目を離したすきに何処かへ飛んでいってしまうので、一番大変な
わけだが……。
 三時間毎に起きるエイナは、案外大変では無かった。
 やっぱ大変なのはその子の性格なんだな……。
 エイナは大人しいし、泣き声も酷くない。
 上機嫌な事が多いのは、ファナに包まれているからかもしれない。
 ……いろんな意味で。

「それで、どうだったの? ジャンカの町」
「問題無い。予定通り明後日開催出来る。四人共、参加者は気になるか?」
『なるわ!』
「匿名登録だから実名かどうかわからない選手も多く居るが……」
「そもそも今回の大会、参加しないから詳しく聞かないようにして
たっしょ。どういった方法で戦うの?」
「最初に、一闘技場を二十名で争ってもらう。闘技場は二つ。
つまり一度に行えるのは四十人分だな。参加者は全部で百六十名」
『そんな集まったの!?』
「ああ。これでも減った方だ。残った八名が決勝。そこからは一対一だ」
「面白そうっしょ。参加したかったな」
「そう思ってる奴は結構いるだろう。ただ、運が悪いと俺も初戦敗退しそうだ」
「そんな強い参加者いるの?」
「ああ。ビローネとテンガジュウ。あいつらと同時に当たったら勝てない
だろう。なんなら老師とシーザー師匠。ハーヴァルさんにライラロさんもだ」
「師匠も出るのか?」

 と、後ろから声がしたので振り向くと、メルザがカルネを片手で抱えて来た。
 片手の癖が抜けていないのだろう。
 後ろから心配でしょうがないという動きをしているジェネスト付きだ。
 ちなみにクリムゾン……ではなくジェネストの方が大会に参加する。
 こいつも強敵だ。アーティファクトで肉体構成されたクリムゾンやサーシュは
そもそもが反則として認定されかねないってのもある。

「メルザ。ジェネストが倒れそうだから、カルネを預けてやりな」
「そーか? 別にへーきだけどよ。他に誰がでんだ? 俺様もしらねーんだ」
「後、めぼしいのはコーネリウスやビー、プリマ、アメーダ、四幻のうち二幻……」
「え? あいつら出るのか? んじゃ、ギオマも出るのか?」
「いいや、ギオマと雷帝ベルベディシア、アルカーンさんは審査側だ。
それと二幻も今回は出せない。サーシュとリュシアンは異能力過ぎる。沖虎、彰
虎、白丕、ビュイは出場する」
「そう言えばアーティファクトは使用禁止にするんだったわね。ルインは大丈夫?」
「ああ。公平じゃなくなるからな。ティソーナもコラーダも使用出来ない。
だが、久しぶりにデイスペルでの大会を思い出しながら戦えるよ」

 そう、今回の戦いはアーティファクト禁止。これは当然だろう。
 明らかに差が出てしまう。何なら反則レベルだ。
 下手すれば死人が出まくる。
 デイスペルと違うとするなら、レア度だな。
 モアユニークまでなら使用可能だ。
 あちらはセミユニークまでだったから、二つ上までのレア度が平気
という事になる。
 当然……装備は手配してもらっている。
 なぜモアユニークまでか。
 これは……町の入り口で武器・防具を販売していなかったのが要因。
 闘技場の直ぐ近くに、武器防具屋が明日、完成するのだ! 
 そして明日はそこに行列が出来るはず……という作戦だ。
 ここには広いスペースがある。
 俺は明日、直ぐ近くでニーメの武器を持ち、少しだけ演武する予定。
 相手は今回参戦しないクリムゾン。
 手の内はあまり見せるつもりは無い。
 俺の場合、ルーニーすら使用出来ないから、全部一新して装備を作って
もらった。
 今大会、負ける気は無い。
 デイスペルの闘技大会を再度思い出す、いいきっかけになればいいと考えている。

「けどよ。テンガジュウっておっさんも、ハクレイのじいちゃんも変な
鎧みたいなの着けれるんだろ? あれってずるくねーのか?」
「あれは装備品じゃないからな。魔王活性鎧……という、魔王種の力を秘めた独特の
状態らしい。俺も一度だけ浅黒い甲冑のような状態を纏ったが……」

 思い出すのもはばかれる。いや、正しくはははっきりと覚えていないオズワルとの戦闘。
 あの時確かに……浅黒い翼のようなものまで生えた。
 老師の形態とは明らかに違う状態だ。
 もう二度と使うまいと考えている恐ろしい力だった。なにせ……。
「ルイン?」
「いや済まない。考え事をしてた」
「それにしてもなんか物騒な名前ね……」
「誰でもそういう形態になって魔王……ってわけじゃないようだ。つまり
ベルベディシアはそうはならないが、テンガジュウはなる。魔族によりけりって事だな」
「ふーん。ルインがそーなるかわからねーんだな。俺様見てみたかったのによ」
「そう言われてもな……そうそう。ヨーゼフさんも大会に出るらしい」
「イネービュの庵に呼ばれたって聞いたけど?」
「ああ。そっちも深刻な話だった。その辺は全部後だな」
「私は、お兄ちゃんが大会でまともに審査出来るかの方が心配だわ……クウに
デレデレなのよね」
「ナナちゃんもよく遊びにきてるからな! ナナちゃん、一杯面倒見てくれるぞ。俺様好きだ」
「最近ビュイが忙しいからな。寂しいってのもあるんだろう。あいつらはベリアルのお気に
入りでもあるしな」
「そういえばベリアルの力ってのはどーしたんだ? つかえねーのか?」
「……わからないんだよ。あいつ、幾ら呼び掛けても応じないんだ」

 あいつの声を最後に聞いたのは、シフティス大陸だ。
 一体どうしちまったんだ、あいつは。
 闘技大会なんて聞けば、俺に戦わせろって直ぐに出てくると思ってたのに。

 ……俺が楽しんだ後出てきても遅いぜ、ベリアルよ。

「ふーん。腹でもいてーんじゃねーか? 食い過ぎてよ」
「そう言えば団子が好きなんだっけ? ベリアルって」
「そうだったな……明日、寄ってみるか」
 
 大会二日前の一日を終え、俺は眠りに着いた。
 闘技大会はまもなくだ。妙に平常心でいられるのは、俺が成長したからなのだろうか。
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