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第五章 親愛なるものたちのために
第七百九十五話 盟約の印
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ルジリトのお陰でどうにか話はまとまった。
なんだかんだでこちらの案を全て飲ませる事に成功はしたが……本当に
守ってもらえるのだろうか?
「では盟約の印を」
「ルジリト、俺ってそういえば印鑑的なもの、持ってないぞ」
「あらあら。一国の代表がそのようなことでいいのかしらね」
「おや? こちらでは既に幾つか頂いているようだが?」
と、メイズオルガ卿が疑問に思っておられる。
あれ? メイズオルガ卿に印鑑なんて押した覚えはないが……そうか。
ルジリトが一任して受けてくれたのか。
「主殿。勝手とは思いましたが必要だった故、取り急ぎニーメ殿に
作って頂きました。名称は入っておりません。この町の印ともいえる、ルーニー殿の
彫り物が入った物を使用しております」
「ほう。少し見せてくれるか」
ルジリトがシカリーに印を渡すと、目を見張り眺めている。
気に入ったのかもしれない。
「見事な造りだ。早速一つ取引をしたい」
「シカリー殿。それは後ほど」
「ああ、すまない。あまりに見事だったのでな」
「ふうん。わたくしの雷印とどちらが凄いのか見比べて差し上げますわ。
ビローネ!」
「はいお姉様」
すると、対抗意識を燃やしたのか、ベルベディシアはビローネに命令して
手のひら程の印を取り出させる。
あのー、どこにしまってるんですか。見ないようにしてたけど。
こいつ、ファナクラスか……何がとは言うまい。見てないし。
「さぁ特と見るのですわ! 見るのよ! 見るのね! 見るに違いないわ!」
「でかいな」
「てかい」
「大きいですな」
「うふふっ。大きいのでございますね……」
シーンという静けさが漂う。
でかく雷の文字が一文字刻まれているだけだ。
時折紫色の電流が走っている以外、造形物としてさして
美しくはないだろう。
それに、皆が言う大きいは、その印鑑の事じゃない。
いや何がとは言うまい。
こいつもきっと、わざとやってるのだろう。
「驚いて声もでないのですわね。それで? あなたが使用しているというその
小さいの。わたくしに見せなさい」
「はあ。よろしいですか? 主殿」
「ああ。構わないよ」
ルジリトが差し出すと、まじまじとそれを確認するベルベディシア。
「どうなってますの。この小さい物の中にこんなに詰め込んで。
こんな小さいものでは、うまく押して写るわけありませんわ」
「そうよ。お姉様の言う通り!」
「我が君の方が断然大きい。今回は圧勝だったようだな」
「押した物がこちらになりますが……」
……おお。俺も初めて見るがこいつは凄い。要所要所ルーニーだと
判別がつく工夫がしてある。嘴は剣形態のものだ。また腕を上げ
たな、ニーメ。
「なんだと!? ばかな。あれでこれが浮かび上がるはずがなかろう!」
「そうよ! 嘘だわ!」
「んじゃ、試しに押してみなって。鍛冶師は命を賭けてこういった道具を
製作するんだ。クリエイター、舐めるなよ」
「命を賭けるですって?」
「そうだ。寝ないで夜通し作業したりしてるニーメを俺は知ってる。
だから全面的に信頼してるんだ。あいつの製作した道具全てにだ。
子供だったあいつはもう子供じゃない。立派な大人だ」
「……本当ですわ。いいですわ。わたくしも作り直しましょう」
「あのー。そういう話で印鑑をお貸ししたのではないのですが……」
あ、俺も含めてだわ、これ。
ルジリト、ごめんなさい。深くお詫びいたします。
俺がぺこりとお辞儀をしているのを見て察したのか、ルジリトは少し
笑みをこぼしている。
「おほん。では、各自の印を持って盟約成立と致します。
ただちに書面を模写いたしますので……」
「やってー、おきましたよーお?」
「うふふっ。ラルダ姉様は、実は執筆が得意なのでございます。
隠れた才能でございますよ」
「おお! 実は書記役がおらぬので困っていたのです。今後ぜひ
お力添えを……」
「おいルジリト。それ、さっきのと同じだ」
「はっ!? 私としたことが……失礼した!」
いやいや、いいんだよ。仕事熱心なのはわかるけど。
しかしあのラルダさんがねえ……宿屋の状況を見るに、そちらの
方が仕事はあってるんじゃないだろうか。
気ままな宿屋が好きなのかな。
でも、お客さん来ないよね……その宿。
「よし。これで一段落したな。ギオマと晩酌してくるか。
ルイン。褒美と地底の件はまた後程な」
「はい。有難うございました。シカリーさん」
「ルイン殿。貴殿にも報告があるだろうが、出産を終えたばかりの大切な
者たちがいるだろう。こちらも後ほどで構わないが、一席設けよう。
日付は追々ルジリト殿を通して話そう」
「ええ。メイズオルガ卿。ご足労感謝します」
「ルインとやら。わたくしを早くリンのところへ」
「あんたはちょっとだけ遠慮しろ!」
「貴様、我が君に不遜な態度を!」
「そうよそうよ! お姉様泣いちゃうでしょ!」
「テンガジュウ。泣きなさい」
「もう泣きそうなんだけど、俺帰ってもいいかぁ?」
「帰る? 何を言っているのテンガジュウ。これからリンの許へ
向かうのですわ!」
「お供します。我が君」
「私も!」
「ではわたくし、残りますわ……」
こいつら、またやってる……まぁいいんだけど。
というか帰ってくれないのかよ……。
「主殿。一度盟約の印を結んだからには、もう大丈夫かと存じまず。
少々常識外れなところがある魔王かと思いますが……」
そこからは小声となって俺だけに聴こえるよう告げる。
「完全に掌握出来るかは、主次第。頑張ってくだされ。
町を気に入れば今後、他の絶魔王とも上手く取引出来るかもしれませぬ
からな」
「わかった。やってみるよ……気が重いけど」
「では皆さま。ルジリトも失礼致します。雷帝殿。
そちらへの連絡手段などは如何すればよろしいか?」
「テンガジュウ。あれを」
「キュペーテの一部だ。こいつに文なりなんなり乗せれば、勝手に城へ着く」
「ほう。わかり申した。お預かりしましょう」
「あなた様。雷帝様をリンドヴルム様の許へ案内するのはアメーダが引き受ける
のでございます。あなた様はお子様の所へ」
「いいのか? 結構大変だと思うぞ」
「アメーダにお任せを。得意分野でございますから」
にっこりと微笑むアメーダ。
毎回頼ってばかりだな。何かねぎらう方法はないものか……考えておかないと。
結局漫才トリオみたいな奴らは、リンドヴルムの許へ案内しろと騒ぐので
連れて行くことにした。
くれぐれも問題などは起こさないように誓わせて。
厄介事が多いけど、これでようやく……メルザと子供の許に行ける。
なんだかんだでこちらの案を全て飲ませる事に成功はしたが……本当に
守ってもらえるのだろうか?
「では盟約の印を」
「ルジリト、俺ってそういえば印鑑的なもの、持ってないぞ」
「あらあら。一国の代表がそのようなことでいいのかしらね」
「おや? こちらでは既に幾つか頂いているようだが?」
と、メイズオルガ卿が疑問に思っておられる。
あれ? メイズオルガ卿に印鑑なんて押した覚えはないが……そうか。
ルジリトが一任して受けてくれたのか。
「主殿。勝手とは思いましたが必要だった故、取り急ぎニーメ殿に
作って頂きました。名称は入っておりません。この町の印ともいえる、ルーニー殿の
彫り物が入った物を使用しております」
「ほう。少し見せてくれるか」
ルジリトがシカリーに印を渡すと、目を見張り眺めている。
気に入ったのかもしれない。
「見事な造りだ。早速一つ取引をしたい」
「シカリー殿。それは後ほど」
「ああ、すまない。あまりに見事だったのでな」
「ふうん。わたくしの雷印とどちらが凄いのか見比べて差し上げますわ。
ビローネ!」
「はいお姉様」
すると、対抗意識を燃やしたのか、ベルベディシアはビローネに命令して
手のひら程の印を取り出させる。
あのー、どこにしまってるんですか。見ないようにしてたけど。
こいつ、ファナクラスか……何がとは言うまい。見てないし。
「さぁ特と見るのですわ! 見るのよ! 見るのね! 見るに違いないわ!」
「でかいな」
「てかい」
「大きいですな」
「うふふっ。大きいのでございますね……」
シーンという静けさが漂う。
でかく雷の文字が一文字刻まれているだけだ。
時折紫色の電流が走っている以外、造形物としてさして
美しくはないだろう。
それに、皆が言う大きいは、その印鑑の事じゃない。
いや何がとは言うまい。
こいつもきっと、わざとやってるのだろう。
「驚いて声もでないのですわね。それで? あなたが使用しているというその
小さいの。わたくしに見せなさい」
「はあ。よろしいですか? 主殿」
「ああ。構わないよ」
ルジリトが差し出すと、まじまじとそれを確認するベルベディシア。
「どうなってますの。この小さい物の中にこんなに詰め込んで。
こんな小さいものでは、うまく押して写るわけありませんわ」
「そうよ。お姉様の言う通り!」
「我が君の方が断然大きい。今回は圧勝だったようだな」
「押した物がこちらになりますが……」
……おお。俺も初めて見るがこいつは凄い。要所要所ルーニーだと
判別がつく工夫がしてある。嘴は剣形態のものだ。また腕を上げ
たな、ニーメ。
「なんだと!? ばかな。あれでこれが浮かび上がるはずがなかろう!」
「そうよ! 嘘だわ!」
「んじゃ、試しに押してみなって。鍛冶師は命を賭けてこういった道具を
製作するんだ。クリエイター、舐めるなよ」
「命を賭けるですって?」
「そうだ。寝ないで夜通し作業したりしてるニーメを俺は知ってる。
だから全面的に信頼してるんだ。あいつの製作した道具全てにだ。
子供だったあいつはもう子供じゃない。立派な大人だ」
「……本当ですわ。いいですわ。わたくしも作り直しましょう」
「あのー。そういう話で印鑑をお貸ししたのではないのですが……」
あ、俺も含めてだわ、これ。
ルジリト、ごめんなさい。深くお詫びいたします。
俺がぺこりとお辞儀をしているのを見て察したのか、ルジリトは少し
笑みをこぼしている。
「おほん。では、各自の印を持って盟約成立と致します。
ただちに書面を模写いたしますので……」
「やってー、おきましたよーお?」
「うふふっ。ラルダ姉様は、実は執筆が得意なのでございます。
隠れた才能でございますよ」
「おお! 実は書記役がおらぬので困っていたのです。今後ぜひ
お力添えを……」
「おいルジリト。それ、さっきのと同じだ」
「はっ!? 私としたことが……失礼した!」
いやいや、いいんだよ。仕事熱心なのはわかるけど。
しかしあのラルダさんがねえ……宿屋の状況を見るに、そちらの
方が仕事はあってるんじゃないだろうか。
気ままな宿屋が好きなのかな。
でも、お客さん来ないよね……その宿。
「よし。これで一段落したな。ギオマと晩酌してくるか。
ルイン。褒美と地底の件はまた後程な」
「はい。有難うございました。シカリーさん」
「ルイン殿。貴殿にも報告があるだろうが、出産を終えたばかりの大切な
者たちがいるだろう。こちらも後ほどで構わないが、一席設けよう。
日付は追々ルジリト殿を通して話そう」
「ええ。メイズオルガ卿。ご足労感謝します」
「ルインとやら。わたくしを早くリンのところへ」
「あんたはちょっとだけ遠慮しろ!」
「貴様、我が君に不遜な態度を!」
「そうよそうよ! お姉様泣いちゃうでしょ!」
「テンガジュウ。泣きなさい」
「もう泣きそうなんだけど、俺帰ってもいいかぁ?」
「帰る? 何を言っているのテンガジュウ。これからリンの許へ
向かうのですわ!」
「お供します。我が君」
「私も!」
「ではわたくし、残りますわ……」
こいつら、またやってる……まぁいいんだけど。
というか帰ってくれないのかよ……。
「主殿。一度盟約の印を結んだからには、もう大丈夫かと存じまず。
少々常識外れなところがある魔王かと思いますが……」
そこからは小声となって俺だけに聴こえるよう告げる。
「完全に掌握出来るかは、主次第。頑張ってくだされ。
町を気に入れば今後、他の絶魔王とも上手く取引出来るかもしれませぬ
からな」
「わかった。やってみるよ……気が重いけど」
「では皆さま。ルジリトも失礼致します。雷帝殿。
そちらへの連絡手段などは如何すればよろしいか?」
「テンガジュウ。あれを」
「キュペーテの一部だ。こいつに文なりなんなり乗せれば、勝手に城へ着く」
「ほう。わかり申した。お預かりしましょう」
「あなた様。雷帝様をリンドヴルム様の許へ案内するのはアメーダが引き受ける
のでございます。あなた様はお子様の所へ」
「いいのか? 結構大変だと思うぞ」
「アメーダにお任せを。得意分野でございますから」
にっこりと微笑むアメーダ。
毎回頼ってばかりだな。何かねぎらう方法はないものか……考えておかないと。
結局漫才トリオみたいな奴らは、リンドヴルムの許へ案内しろと騒ぐので
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