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第五章 親愛なるものたちのために
第七百八十話 お礼とお詫びをするために
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伝書の力を試し終えた俺は、ランスロットさんに再び礼を告げると、モジョコに
挨拶をしにいく。
……というよりも、グレンさんがモジョコを抱えて俺の所まで来た。
「ルイン殿ー! モジョコを預かってもらえないか? 急いで支度を
しないといけなくて!」
「あ、ああ。すまないな。俺がやらないといけないのに、代わりにやってもらって」
「モジョコなら大丈夫、一人でルインお兄ちゃんの所まで行けるよってお話したの。
でもグレンお姉ちゃんは心配だからって」
既に過保護気味だな。この館の人たちは親切だ。モジョコ一人でも何の心配も
ないだろうに。
「どうだモジョコ。グレンさんが本当のお母さんになったら」
「凄く嬉しいの。でも、モジョコはきっと大変だから……」
「グレンさんなら大丈夫だろう。それにあの町ならモジョコも明るく元気に過ごせるさ。
さて、俺はこれからお詫びとお礼をしに、レンブランド・スミスっていう鍛冶屋の
所まで行かなきゃいけないんだけど」
「モジョコも一緒に行っていい? ルインお兄ちゃんがまた帰って来ないんじゃ
ないかって、心配なの」
「ああ。一緒に行こう。その方が不審者って思われなくていいだろ、きっと」
小さい子を抱っこした戦士なら、それだけで周囲の目は緩和されるだろう。
それに、せっかく町まで来たんだ。ぼんやりしか見えなくても、モジョコに町の
雰囲気を、よく確かめさせてやりたいしな。
ランスロットさんに許可をもらい、ナチュカで侍女さんが町中央まで運んでくれる
ようだ。
帰りはその周囲にいる、剣と馬のマークがあるナチュカ式乗り物を探して欲しいと
言われた。
このナチュカ式乗り物の正式名は【ナチュカーブ】というらしい。
……確かにナチュカなら急カーブにも対応できそうだけど、そのカーブじゃないん
だろうな。
――直ぐに町付近まで連れてきてもらったが、道は単純だし帰りは走ってもいいな。
俺の足なら時間はかからないだろう。
「それでは、お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
侍女に挨拶をして、モジョコを抱っこし、町を歩く。
一足早い父親……だな、これは。
こうしていると、モジョコもとても嬉しそうだった。
でも……きっと景色を見る事は叶わない。俺がそうだったように。
「ルインお兄ちゃん。風が気持ちいいよ。モジョコ、お外歩くの好きなの。
でもお外は危ないからあまり歩けないの」
「町に帰ったら好きなだけ歩けるぞ。まずは場所を覚えないといけないけど。
モジョコの面倒を見たがりそうなのはグレンさんだけじゃないんだよな……一杯
可愛がられるだろう。やたらと騒がしい骨たちとか、壁の中にいる魔族とか。
頭のいい土偶とか。王様スライムエルフなんてのもいるぞ。今から覚悟しておくんだ」
「本当に? 凄く面白そう。ミットちゃんも一緒に行ける?」
「それは難しいかな。あの子はこの町の宿屋で働いてるだろ? お仕事の邪魔をしちゃ
いけない」
「うん。でも、モジョコはミットちゃんにお返ししたいの」
「お返し? そうか。ぬいぐるみ渡してもらったんだよな……お揃いで買って
あげたけど」
少し思案する。ちょうど商店街だし、何か買って宿屋にも迷惑をかけたお礼を
するか……。
小さい女の子でも喜びそうなものといえば……髪留めかな。
子供用の小さな髪留めを買っていこう。宿屋の女将さんには重い物を持ちやすくする
滑り止めができそうな手袋がいいだろう。
この商店街には実に色々な物が売っている。流石は人間……手先が器用な
種族だからこそ細かい物を作るのに長けている。
だからこそ、様々な宝を手に入れても、それをただ使うための道具ではなく、模造
したり、より良い物をそれらを見習って造るという知恵が働くのだろう。
ドワーフが器用だという話はよく聞く話だが、技術と知恵を用いる術に
おいて、人は決して負けてなどいない。
ドワーフで思い出した……ジオは元気にしてるかな。あいつ、ドワーフだったよな。
いや、あのタイプは死んでも死なないようなタイプだ。今頃地底で元気に
女性に軽蔑されて過ごしている事だろう。
「ルインお兄ちゃん?」
「いや済まない。ちょっと考え事を……これとこれをくれ」
「銀貨四枚だけど、いいかい?」
「ああ。助かるよ」
「おや? あんたこないだミットちゃんにぬいぐるみを買ってあげてた人だね。
また利用してくれて有難う。こいつはサービスだ。持っていきな」
どうやら同じ店だったらしく、小さいイヤリングのような物を頂戴した。
全然気付かなかったよ……いい物ってのはいい商売人に偏るものなのかね。
皆へのお土産は昨日買ったし……先にレンブランド・スミスへ行くか。
――商店街を後にし、少し嫌な記憶が残る道を進む。
昨日来たばかりなので、道は良く覚えている。迷わずに
レンブランド・スミスへと辿り着けた。綺麗に清掃が行き届いている。
今日も俺は時間がない。素早く店内に入ると……レンブランド・カーィさんは不在。
腕を組んでこちらを不審な目で見ながら立っている男に近づき、カーィさんに
貰ったプレートを見せた。
「これを見せれば、カーィさんが飛んでくると言ってたんですけど」
「……おや? マスターの知合いでしたか。鍛冶屋へ子供連れで来るのは
感心しないね」
「すまない。今日、国を発つ予定で。どうしても見せて回りたかったんだ」
「そうだったのか。そいつは悪かった。マスターを直ぐ呼んでくるよ」
店の奥へ戻っていく店主。そりゃそうだよな。武器が乱立している場所へ
小さな子供を連れて行くべきじゃないのはわかってるけど。
置いていけない理由がちゃんとある。
また宿屋に迷惑をかけるわけにもいかないし。
……あらためて見ても、いい武器や防具が置いてある。
兵士一人一人がこんな武器で戦ったら、強い集団になるだろう。
武器を眺めていると……慌ただしい足音と共に、レンブランド・カーィさんが
やって来た。
「ルインさん! よかった……ご無事だったんですね」
「カーィさん。この度は本当にご迷惑を……あなたが気づいてなかったら、俺は
この町でならず者になっていたかもしれない」
「あなたが約束を守らない人なんて微塵も思いませんでしたから。
お怪我はありませんか?」
「問題ない。しかし、せっかく預かった杖のうち二本、失くしてしまったんだ。
本当に申し訳ない。それに、襲われた時、少しだけ店の名前を利用させてもらった。
申し訳ないと思っている」
「それならばあちらにたてかけてあります。ちゃんとお持ちくださいね。
お話はランスロットさんから伺ってますよ。何の問題もありません。
レンブランド・スミスは五つの統治者が手出し不可能な鍛冶屋ですから。
それよりもそちらの子は……お子さんですか?」
「モジョコなの。初めましてお姉さん」
「あら……目が不自由なんですね……可哀そうに。そうだ! 少し待っていてください」
……何も言ってないが、モジョコの目の事も直ぐ見抜くか……。
確かにカーィさんの方を見て話してはいないけど、それだけで確定は出来ない。
やはり……そうなのか。
「これをかけたら、少しは良くならないかと思って」
「眼鏡か? 君がこれを作ったのか!?」
「ええ。かけてみてください」
「しかし……普通の眼鏡ではきっと効果は無いぞ」
影がぼんやり見える程の視力なら、もはや視力矯正は効かない。
そう思っていたが……「あれ。色がわかるの。色がついたの! モジョコの目、色が
見えるの」
「何だって? はっきりと映るのか?」
「ううん。色だけ見えるの」
「やはり、不完全ですか……」
「いや、色が見えるってだけでも凄い。これはマジックアイテムの類か?」
「はい。浅色望遠という技術を学び、研究して作った試作品です」
「これを……買わせてもらっていいか? いや、頼む。売ってくれないか」
「お代はいりません……いえ、お題よりも私は、あなたとの繋がりが欲しいんです」
「それはわかっている。だがそれとこれとは別で……」
「では、お題の代わりに……あなたについて行くというのはどうでしょうか?」
「え? いやいや、だって町の外に出るんだぞ?」
「はい。伺ってます」
「この店はどうするんだ?」
「私の跡を継ぐものは何人かいますから。確かな鑑定眼を持つのは私だけです
けどね」
「そんな人物が町を留守にして、本当に平気なのか?」
「……ルインさんは鍛冶師にとって、何が一番大事だと考えるかわかりますか?」
そう言われて思案する。鍛冶師にとって大事な事。
真っ先に浮かぶのはニーメの顔。
ニーメは何のために鍛冶をしていた?
自分が鍛冶をやりたい。それはもちろんあったと思う。
でも……「家族や仲間を守ったり、喜んでくれるため……か」
「……あなたからは暖かい答えが返ってくると思っていました。でもね。
それだけじゃないんです。鍛冶を営む者は
より良い物を作りたい。より便利な物を作りたい。そして、我々鍛冶師でも
作れない困難な物を、どう作り上げていくのか。それを知りたいんです」
探求心……そうか、そういうことか。
彼女は俺の装備にある、ルーニーを鑑定眼で見てしまったのか。
アルカーンはただの鍛冶職人などではない。
世界の理を歪められるほどの【管理者】
その管理者であるアルカーンに、ニーメは鍛冶を教わった。
しかしニーメはまだ若い。どのような物をどう造っていくか。
その大切な事をアルカーンは教えたりはしない。
アルカーンは何せ、時計造りにしか興味がないからだ。
「……わかったよ。連れて行こう。ただ、杖に関しては造ってもらって
もいいか?」
「約束を破棄したりはしませんよ。出発はいつですか?」
「この後宿屋にお礼を告げ、一度バーニィ家に戻る。その後直ぐだ」
「わかりました。私も直ぐ支度をしてバーニィ家に向かいます!」
……やれやれ。また人が増えてしまったな。
ギオマに何て言おう。
挨拶をしにいく。
……というよりも、グレンさんがモジョコを抱えて俺の所まで来た。
「ルイン殿ー! モジョコを預かってもらえないか? 急いで支度を
しないといけなくて!」
「あ、ああ。すまないな。俺がやらないといけないのに、代わりにやってもらって」
「モジョコなら大丈夫、一人でルインお兄ちゃんの所まで行けるよってお話したの。
でもグレンお姉ちゃんは心配だからって」
既に過保護気味だな。この館の人たちは親切だ。モジョコ一人でも何の心配も
ないだろうに。
「どうだモジョコ。グレンさんが本当のお母さんになったら」
「凄く嬉しいの。でも、モジョコはきっと大変だから……」
「グレンさんなら大丈夫だろう。それにあの町ならモジョコも明るく元気に過ごせるさ。
さて、俺はこれからお詫びとお礼をしに、レンブランド・スミスっていう鍛冶屋の
所まで行かなきゃいけないんだけど」
「モジョコも一緒に行っていい? ルインお兄ちゃんがまた帰って来ないんじゃ
ないかって、心配なの」
「ああ。一緒に行こう。その方が不審者って思われなくていいだろ、きっと」
小さい子を抱っこした戦士なら、それだけで周囲の目は緩和されるだろう。
それに、せっかく町まで来たんだ。ぼんやりしか見えなくても、モジョコに町の
雰囲気を、よく確かめさせてやりたいしな。
ランスロットさんに許可をもらい、ナチュカで侍女さんが町中央まで運んでくれる
ようだ。
帰りはその周囲にいる、剣と馬のマークがあるナチュカ式乗り物を探して欲しいと
言われた。
このナチュカ式乗り物の正式名は【ナチュカーブ】というらしい。
……確かにナチュカなら急カーブにも対応できそうだけど、そのカーブじゃないん
だろうな。
――直ぐに町付近まで連れてきてもらったが、道は単純だし帰りは走ってもいいな。
俺の足なら時間はかからないだろう。
「それでは、お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
侍女に挨拶をして、モジョコを抱っこし、町を歩く。
一足早い父親……だな、これは。
こうしていると、モジョコもとても嬉しそうだった。
でも……きっと景色を見る事は叶わない。俺がそうだったように。
「ルインお兄ちゃん。風が気持ちいいよ。モジョコ、お外歩くの好きなの。
でもお外は危ないからあまり歩けないの」
「町に帰ったら好きなだけ歩けるぞ。まずは場所を覚えないといけないけど。
モジョコの面倒を見たがりそうなのはグレンさんだけじゃないんだよな……一杯
可愛がられるだろう。やたらと騒がしい骨たちとか、壁の中にいる魔族とか。
頭のいい土偶とか。王様スライムエルフなんてのもいるぞ。今から覚悟しておくんだ」
「本当に? 凄く面白そう。ミットちゃんも一緒に行ける?」
「それは難しいかな。あの子はこの町の宿屋で働いてるだろ? お仕事の邪魔をしちゃ
いけない」
「うん。でも、モジョコはミットちゃんにお返ししたいの」
「お返し? そうか。ぬいぐるみ渡してもらったんだよな……お揃いで買って
あげたけど」
少し思案する。ちょうど商店街だし、何か買って宿屋にも迷惑をかけたお礼を
するか……。
小さい女の子でも喜びそうなものといえば……髪留めかな。
子供用の小さな髪留めを買っていこう。宿屋の女将さんには重い物を持ちやすくする
滑り止めができそうな手袋がいいだろう。
この商店街には実に色々な物が売っている。流石は人間……手先が器用な
種族だからこそ細かい物を作るのに長けている。
だからこそ、様々な宝を手に入れても、それをただ使うための道具ではなく、模造
したり、より良い物をそれらを見習って造るという知恵が働くのだろう。
ドワーフが器用だという話はよく聞く話だが、技術と知恵を用いる術に
おいて、人は決して負けてなどいない。
ドワーフで思い出した……ジオは元気にしてるかな。あいつ、ドワーフだったよな。
いや、あのタイプは死んでも死なないようなタイプだ。今頃地底で元気に
女性に軽蔑されて過ごしている事だろう。
「ルインお兄ちゃん?」
「いや済まない。ちょっと考え事を……これとこれをくれ」
「銀貨四枚だけど、いいかい?」
「ああ。助かるよ」
「おや? あんたこないだミットちゃんにぬいぐるみを買ってあげてた人だね。
また利用してくれて有難う。こいつはサービスだ。持っていきな」
どうやら同じ店だったらしく、小さいイヤリングのような物を頂戴した。
全然気付かなかったよ……いい物ってのはいい商売人に偏るものなのかね。
皆へのお土産は昨日買ったし……先にレンブランド・スミスへ行くか。
――商店街を後にし、少し嫌な記憶が残る道を進む。
昨日来たばかりなので、道は良く覚えている。迷わずに
レンブランド・スミスへと辿り着けた。綺麗に清掃が行き届いている。
今日も俺は時間がない。素早く店内に入ると……レンブランド・カーィさんは不在。
腕を組んでこちらを不審な目で見ながら立っている男に近づき、カーィさんに
貰ったプレートを見せた。
「これを見せれば、カーィさんが飛んでくると言ってたんですけど」
「……おや? マスターの知合いでしたか。鍛冶屋へ子供連れで来るのは
感心しないね」
「すまない。今日、国を発つ予定で。どうしても見せて回りたかったんだ」
「そうだったのか。そいつは悪かった。マスターを直ぐ呼んでくるよ」
店の奥へ戻っていく店主。そりゃそうだよな。武器が乱立している場所へ
小さな子供を連れて行くべきじゃないのはわかってるけど。
置いていけない理由がちゃんとある。
また宿屋に迷惑をかけるわけにもいかないし。
……あらためて見ても、いい武器や防具が置いてある。
兵士一人一人がこんな武器で戦ったら、強い集団になるだろう。
武器を眺めていると……慌ただしい足音と共に、レンブランド・カーィさんが
やって来た。
「ルインさん! よかった……ご無事だったんですね」
「カーィさん。この度は本当にご迷惑を……あなたが気づいてなかったら、俺は
この町でならず者になっていたかもしれない」
「あなたが約束を守らない人なんて微塵も思いませんでしたから。
お怪我はありませんか?」
「問題ない。しかし、せっかく預かった杖のうち二本、失くしてしまったんだ。
本当に申し訳ない。それに、襲われた時、少しだけ店の名前を利用させてもらった。
申し訳ないと思っている」
「それならばあちらにたてかけてあります。ちゃんとお持ちくださいね。
お話はランスロットさんから伺ってますよ。何の問題もありません。
レンブランド・スミスは五つの統治者が手出し不可能な鍛冶屋ですから。
それよりもそちらの子は……お子さんですか?」
「モジョコなの。初めましてお姉さん」
「あら……目が不自由なんですね……可哀そうに。そうだ! 少し待っていてください」
……何も言ってないが、モジョコの目の事も直ぐ見抜くか……。
確かにカーィさんの方を見て話してはいないけど、それだけで確定は出来ない。
やはり……そうなのか。
「これをかけたら、少しは良くならないかと思って」
「眼鏡か? 君がこれを作ったのか!?」
「ええ。かけてみてください」
「しかし……普通の眼鏡ではきっと効果は無いぞ」
影がぼんやり見える程の視力なら、もはや視力矯正は効かない。
そう思っていたが……「あれ。色がわかるの。色がついたの! モジョコの目、色が
見えるの」
「何だって? はっきりと映るのか?」
「ううん。色だけ見えるの」
「やはり、不完全ですか……」
「いや、色が見えるってだけでも凄い。これはマジックアイテムの類か?」
「はい。浅色望遠という技術を学び、研究して作った試作品です」
「これを……買わせてもらっていいか? いや、頼む。売ってくれないか」
「お代はいりません……いえ、お題よりも私は、あなたとの繋がりが欲しいんです」
「それはわかっている。だがそれとこれとは別で……」
「では、お題の代わりに……あなたについて行くというのはどうでしょうか?」
「え? いやいや、だって町の外に出るんだぞ?」
「はい。伺ってます」
「この店はどうするんだ?」
「私の跡を継ぐものは何人かいますから。確かな鑑定眼を持つのは私だけです
けどね」
「そんな人物が町を留守にして、本当に平気なのか?」
「……ルインさんは鍛冶師にとって、何が一番大事だと考えるかわかりますか?」
そう言われて思案する。鍛冶師にとって大事な事。
真っ先に浮かぶのはニーメの顔。
ニーメは何のために鍛冶をしていた?
自分が鍛冶をやりたい。それはもちろんあったと思う。
でも……「家族や仲間を守ったり、喜んでくれるため……か」
「……あなたからは暖かい答えが返ってくると思っていました。でもね。
それだけじゃないんです。鍛冶を営む者は
より良い物を作りたい。より便利な物を作りたい。そして、我々鍛冶師でも
作れない困難な物を、どう作り上げていくのか。それを知りたいんです」
探求心……そうか、そういうことか。
彼女は俺の装備にある、ルーニーを鑑定眼で見てしまったのか。
アルカーンはただの鍛冶職人などではない。
世界の理を歪められるほどの【管理者】
その管理者であるアルカーンに、ニーメは鍛冶を教わった。
しかしニーメはまだ若い。どのような物をどう造っていくか。
その大切な事をアルカーンは教えたりはしない。
アルカーンは何せ、時計造りにしか興味がないからだ。
「……わかったよ。連れて行こう。ただ、杖に関しては造ってもらって
もいいか?」
「約束を破棄したりはしませんよ。出発はいつですか?」
「この後宿屋にお礼を告げ、一度バーニィ家に戻る。その後直ぐだ」
「わかりました。私も直ぐ支度をしてバーニィ家に向かいます!」
……やれやれ。また人が増えてしまったな。
ギオマに何て言おう。
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