861 / 1,085
第五章 親愛なるものたちのために
第七百七十五話 伝書を読み解く
しおりを挟む
ランスロットさんは、ゆっくりと腰を上げて立ち上がると、戸棚の中から
一つの瓶、グラス、それから小型のナイフを所持して俺の前へと来る。
美しい装飾が施されたナイフをテーブルの上に置くと、瓶を開けてグラスへと注ぐ。
「この水は命真水だ。量はこれだけで十分。これに君の血液を浸し、直ぐに
飲み干しなさい」
「時間が経つと効果が失われるんですか。それじゃ……」
俺は言われた通りに指先をナイフで傷つけ、血を少しグラスに垂らして一気に飲み干した。
当然、美味しくはない。
ランスロットさんは頷いて、話を進める。
「私に伝書は見せなくていい。部屋の鍵を渡すから、そこで横になってから、伝書
を読み解きなさい。成功したら、明日の朝、その効果を私と訓練場で試してみよう。
伝書の内容は口で説明するより、君自身が体験する方がいいだろう。成功を祈る」
「わかりました。ありがとうございます。やってみます」
「これが部屋の鍵だ。ここを出て直ぐのところに、青い紋様が刻まれた部屋がある。
私の……息子が使っていた部屋で申し訳ないが、そこならゆっくりと伝書を読み
解けるだろう。では、私は休むとするよ……そうだ、ルイン君」
「はい、何でしょう?」
「ここにおいてある食べ物は、自由に部屋へ持っていって構わない。
好きなだけ、食べるといい。先ほど食事はあまり取っていなかったようだからね」
「お気遣い有難うございます、ランスロットさん。お休みなさい」
……こちらの行動が、見透かされているようだった。
俺はエルバノとプリマに遠慮して、食事を殆ど取っていなかった。
この人は本当によく見ているな。
――まず部屋を確認しにいき、鍵をあける。とても立派な部屋だ。
きちんと清掃もされている。
部屋を確認したら直ぐに戻り、両手で抱えられるだけ食事を抱えて、再び部屋へ
戻ると直ぐに、エルバノとプリマ二人に出てきてもらった。勿論パモもだ。
全員に静かにするよう伝えると、食事を振舞う。
……俺も少しだけ食事を手にした。
「にしてもよかったのう。さぁ早く伝書を読み解いてみよ!」
「プリマたちもここにいたら、まずいんじゃないのか?」
「そうだな。二人とも食事も済んだだろうし、一度戻っててくれるか。
何があるかわからないし」
「仕方ないのう。飯も美味かったし、後で酒もとってくるんじゃぞ」
「そこまで図々しくは出来ないって。そっちはお土産だから、ギオマと一緒に
飲んでくれよ。明日には戻るからさ」
「そうじゃったな。我慢してやるか。ぎゃははは!」
「なぁ。プリマも明日、外に出て買い物とかしてみていいか?」
「んーと、そうだな。帽子を借りれば出来なくはないか。グレンさんに相談
してみるよ。プリマの耳はいい感じで可愛いけど、ここだと目立つだろ?」
そう言うと、プリマは嬉しかったのか、耳をピョコピョコさせていた。
案外子供っぽいところもあるんだよな……初めて会った時は怖かったけど。
照れながらも俺に憑りつくプリマ。これはやっぱり怖いんだよね……。
「さて、気を取り直して……パモ、伝書を出してくれるか?」
「パミュ」
パモから伝書を受け取ると、パモも眠かったのか、直ぐに封印へと戻って
いった。ごめんな。こんな遅くに起こしてしまって。
伝書を手に持ち、立派なベッドへ横にな。
その表紙を確認してみる。
……あれ、目がかすむような感覚がある……ピンぼけしてよく見えな……。
……そうか。読み解くってのは、文字を読んでいくんじゃないんだな。
それでランスロットさんは、俺を休める場所……一人になれるような場所へ
誘導したのか……。
――ピンボケの視界から戻ると――俺は、はっきりした意識のまま、
焼け焦げるような匂いを嗅ぎつつ、燃え盛る町の中にいた。
「……これは、夢なのか。伝書を見ていたはずだけど」
自分の体を確認すると、着ている服などは別物。
なんだったら視点が少し違う。顔を触って髪も触ってみる。
……どう考えても別人だ。
触っている感覚はある。
別人になった? 伝書の効果で? でも、ここはどこだ。
パチパチと火花の音が聞こえてくる。
これは、伝書が見せる風景なのか?
これからどうすればいいんだ……そう考えていると――突如頭の中に何かが
聞こえてきた。
一つの瓶、グラス、それから小型のナイフを所持して俺の前へと来る。
美しい装飾が施されたナイフをテーブルの上に置くと、瓶を開けてグラスへと注ぐ。
「この水は命真水だ。量はこれだけで十分。これに君の血液を浸し、直ぐに
飲み干しなさい」
「時間が経つと効果が失われるんですか。それじゃ……」
俺は言われた通りに指先をナイフで傷つけ、血を少しグラスに垂らして一気に飲み干した。
当然、美味しくはない。
ランスロットさんは頷いて、話を進める。
「私に伝書は見せなくていい。部屋の鍵を渡すから、そこで横になってから、伝書
を読み解きなさい。成功したら、明日の朝、その効果を私と訓練場で試してみよう。
伝書の内容は口で説明するより、君自身が体験する方がいいだろう。成功を祈る」
「わかりました。ありがとうございます。やってみます」
「これが部屋の鍵だ。ここを出て直ぐのところに、青い紋様が刻まれた部屋がある。
私の……息子が使っていた部屋で申し訳ないが、そこならゆっくりと伝書を読み
解けるだろう。では、私は休むとするよ……そうだ、ルイン君」
「はい、何でしょう?」
「ここにおいてある食べ物は、自由に部屋へ持っていって構わない。
好きなだけ、食べるといい。先ほど食事はあまり取っていなかったようだからね」
「お気遣い有難うございます、ランスロットさん。お休みなさい」
……こちらの行動が、見透かされているようだった。
俺はエルバノとプリマに遠慮して、食事を殆ど取っていなかった。
この人は本当によく見ているな。
――まず部屋を確認しにいき、鍵をあける。とても立派な部屋だ。
きちんと清掃もされている。
部屋を確認したら直ぐに戻り、両手で抱えられるだけ食事を抱えて、再び部屋へ
戻ると直ぐに、エルバノとプリマ二人に出てきてもらった。勿論パモもだ。
全員に静かにするよう伝えると、食事を振舞う。
……俺も少しだけ食事を手にした。
「にしてもよかったのう。さぁ早く伝書を読み解いてみよ!」
「プリマたちもここにいたら、まずいんじゃないのか?」
「そうだな。二人とも食事も済んだだろうし、一度戻っててくれるか。
何があるかわからないし」
「仕方ないのう。飯も美味かったし、後で酒もとってくるんじゃぞ」
「そこまで図々しくは出来ないって。そっちはお土産だから、ギオマと一緒に
飲んでくれよ。明日には戻るからさ」
「そうじゃったな。我慢してやるか。ぎゃははは!」
「なぁ。プリマも明日、外に出て買い物とかしてみていいか?」
「んーと、そうだな。帽子を借りれば出来なくはないか。グレンさんに相談
してみるよ。プリマの耳はいい感じで可愛いけど、ここだと目立つだろ?」
そう言うと、プリマは嬉しかったのか、耳をピョコピョコさせていた。
案外子供っぽいところもあるんだよな……初めて会った時は怖かったけど。
照れながらも俺に憑りつくプリマ。これはやっぱり怖いんだよね……。
「さて、気を取り直して……パモ、伝書を出してくれるか?」
「パミュ」
パモから伝書を受け取ると、パモも眠かったのか、直ぐに封印へと戻って
いった。ごめんな。こんな遅くに起こしてしまって。
伝書を手に持ち、立派なベッドへ横にな。
その表紙を確認してみる。
……あれ、目がかすむような感覚がある……ピンぼけしてよく見えな……。
……そうか。読み解くってのは、文字を読んでいくんじゃないんだな。
それでランスロットさんは、俺を休める場所……一人になれるような場所へ
誘導したのか……。
――ピンボケの視界から戻ると――俺は、はっきりした意識のまま、
焼け焦げるような匂いを嗅ぎつつ、燃え盛る町の中にいた。
「……これは、夢なのか。伝書を見ていたはずだけど」
自分の体を確認すると、着ている服などは別物。
なんだったら視点が少し違う。顔を触って髪も触ってみる。
……どう考えても別人だ。
触っている感覚はある。
別人になった? 伝書の効果で? でも、ここはどこだ。
パチパチと火花の音が聞こえてくる。
これは、伝書が見せる風景なのか?
これからどうすればいいんだ……そう考えていると――突如頭の中に何かが
聞こえてきた。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~
すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。
無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』!
クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが……
1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる