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第五章 親愛なるものたちのために

第七百五十八話 魔対戦の遺物

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 こちらへ接近してくる音がどんどんと大きくなる。
 ……これは車輪の動くような音? モンスターじゃない……のか。

「来るぞ。威嚇攻撃せぬとそのままあやつらを追うぞ!」

 エルバノの掛け声とともに横へ大きくそれる。
 物凄い速さで辿って来た道を爆走するのは……やはり車輪のようなものだ。
 しかしなんだ? 上半身がモンスターのように見える。

「あれは! 太古に造られたデバイスモンスターという奴じゃ! この辺りにもおったか。
急ぎ止めよ!」

 プリマが上空へ高く飛び跳ね、鎌で上部のモンスター部分を狙う。
 こちらは鉄器兵のような形をしている。しかし腕は二本じゃない。
 下の部分は四輪駆動の自動車のような形状をしているが、こちらも動きがおかしい。
 そして何よりも速い! だがこちらへ突っ込んでくる速度とタイミングを合わせた
プリマの攻撃は、吸い込まれるように狙い通り上空のモンスターへ襲いかかる。

 俺はサイドより車輪部分へ赤閃を放ちつつ、道へ氷の塊を置いた。
 だが……「くぅ、力出ない」
「プリマの上からの攻撃を防いだ!? あの速度でなんて器用な奴だよ」
「手強い相手じゃ。覚悟してかかれ!」

 プリマの上空からの攻撃を、白羽取りのように受け取り、残りの腕で持つランスのような武器で
プリマを撃ち抜こうとする。
 そのままマックスターンで回転してこちらの氷を道の外へ弾き飛ばした。
 それぞれに意思があるような動きを見せる、こいつはもしかして……「キメラ種のようなものか!」
「その通りじゃ。どこぞの異世界から来た者が作ったと聞いたが……厄介なものを作ってくれよったわい! 
わしらを敵としてしっかり認識したようじゃな」

 鎌を振り下ろしたプリマは、突き出されたランスに蹴りを入れて一度遠くへと着地した。
 ラング族の最大の特徴はこの跳躍力……足のバネが人間など遥かに陵駕している。
 
「ぐっ……歪術さえ使えればこんなやつ……」
「無理するなよ……今変わるっての」

 ベリアルに催促され、選手交代する。
 あんまり派手に暴れ過ぎないで欲しいんだけどな。
 なにせここは完全な未開の土地。
 俺にはどんなモンスターが出てくるかもわからない場所だ。

「……心配すんな。こいつとはちょっと因縁があんだよ……いくぜ。本当の獣化ってのが
どんなものか、見せてやるよ」

 停車したデバイスモンスターの中央正面に立ち、ティソーナとコラーダを胸の前でクロスして
構えると、デバイスモンスターは直ぐに突進してきた。
 それを跳躍で回避する。

「ちっ。直ぐにははらせてくれねえか。エルバノ、プリマ。手を貸せ」
「ふん。プリマに命令していいのはルインだけだが、いいだろう」
「仕方ないのう。わしはあんまりこの手のモンスターは得意じゃないんじゃがなぁ」

 抜刀の構えを取るエルバノと、二鎌を構えるプリマは、突進を回避したベリアルの後方にいる
デバイスモンスターへと斬りかかる。
 
「抜刀術、酒気帯び」
「ラングの力を思い知れぇーーー!」

 エルバノの抜刀術からは鋭い酒の刃状のものが放出される。
 弧を描きながら後輪部分へ衝突するが、傷一つおっていない。
 プリマは再び高い跳躍から騎兵部分に襲い掛かるが、こちらもやはり簡単に防がれてしまう。

「それでいい……十分な時間稼ぎだぜ」

【ベリアル獣真化】

 それは左右の手に炎を携え、燃える獣毛におおわれ、二つの角を持つ
大きな獣。
 目は赤く光り、肉体の中央にはクロスされた剣が二本収納されている。
 燃え盛る手で首をごきごきと鳴らして感触を確かめる。
  
「……こいつが正真正銘本物の、炎獣魔ベリアル様だぜ。おめえ自身に恨みはねえが、おめえの
仲間にゃ随分と苦汁を嘗めさせられたもんだ」
 
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