異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

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第五章 親愛なるものたちのために

第七百三十二話 ラルダの宿でひと時の休息を

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 エルバノとプリマが水浴びに向かったので、男三人腰を据えて話をする。
 まずはジュディにお礼をしよう。

「……にしても、こんな面白い旅になるとは思わなかったぜ。無事に目的地まで着けたし」
「今までの旅だと、だいたい一波乱あるんだけどな。今回は苦労せず
辿り着く事が出来たよ。ジュディのお陰だ。ありがとう」
「礼なんていらねーぜ。俺は俺がやりたいように行動しただけだ。
それにあんただったら俺がいなくても乗り切れたんじゃないかな」
「どうにかしなければならないなら、そうするだろう。それでもこうして力を
借りれた方が、安全だということを学んだんだ」
「俺も見習わないといけませんね。先生はそんな危険な旅をしてきたんですか?」
「ああ、そうだな……」

 二人に簡単な経緯を話してやると、顔を青ざめ、驚き、困惑した表情を浮かべた。

「……それでよくここまで生きていたな……いや、ほぼ一度死んでるよな」
「常闇のカイナにやられた時は、本当に死んだと思ったよ。
何せ胴体をぶった切られたからな」
「うぅ……想像しただけで痛そうです」
「痛いってよりどうしようって感覚の方が強かったな。
俺がここで死んだら、主をこいつらは追うかもしれない。
恩を返せずここで死んでいいはずがない……って」
「死の直前まで他者の事を思うか……本当、変わった魔族だな、ルインは」
「信じてもらえるかはわからないが、俺は転生者だ」
「ええ? それなら神兵と同じですか?」
「神兵と同じ? ……ああ、そういえば神兵ってのは殆どが人の魂を入れた器だったか」
「はい、そう聞いています。それを転生というのではないのですか?」
「難しいところだな……魂のみを器に入れ替えたものを転生といっていいのかどうか。
俺の場合は文字通り、ゼロ歳児からの生まれ変わりだ。
両目共に見えず、常に闇だったけど」
「そんな状態を治してしまう代物があるってだけで驚きだぜ……ん? 誰かきたか」
「お待たせしましたぁ……お酒をお持ちしましたよぉ……アメーダちゃんから
聞きましたぁ……とても沢山、面白い事を知ってるとぉ。シカリーちゃんが目を
つけたがる魂なんてぇ、久しぶりねぇ……」

 お盆を手に持ち、泡立つ何かの飲み物を沢山持ってきたラルダさん。
 おいおい、何だそれは……。


「……なんかブクブク噴水のように湧き上がってる物なんですが、これは
何ですか……ドライアイス?」
「爆酒っていうお酒なのぉ……見た事なぁい?」
「あるわけないだろ……マグマみたいな色なんですけど?」
「美味しいのよぉ。飲んでみて……ね?」
「ジュディ。逝けるか?」
「お、おう……俺はそもそも液体類には強いからな……やばかったら切り離せばいい」
「やーねぇ……美味しいただのぉ、飲み物よぉ」

 どう考えてもただの飲み物のわけないだろ! 
 しかも爆酒ってなんだ? 飲んだら体内で爆発でも引き起こすのか? 
 
「さぁ、ぐいーっとぉ、飲んでね」
「頂くぜ……ぐむっ……うおおおおお!」
「大丈夫かジュディ! 顔が真っ赤だぞ!」
「ぐっ……は、この、喉を通る爆発的な印象は何だ? まるで爆発してるような
感じだぜ! 喉にあるつまりをとってくれるみてーな……」

 そういえばジュディはいびきがひどかったが……もしかしてこれはそれをすっきり
させられるのでは? 

「美味いぜ、気に入った! じゃんじゃん持ってきてくれ。代金はどうしたらいい? 
これでいいか?」
「まぁ! ヴァンピールの牙ですかぁ? 頂いてもぉ、いいの?」
「勿論だ。すげーぜルイン。お前も飲んでみろよ。喉に穴があいたみてーだぜ。
声もすっきりだ!」
「そういえばジュディさんの喋り声、すっきりしてますね。俺も飲んでみても
いいですか?」
「あなたにはぁ、まだ早いからぁ。甘い飲み物を持ってきてあげるねぇ。
今日は私もぉ……飲んじゃおうかなぁ……」
「あーー! おんしら。エルバノ様が戻って来る前にいっぱいはじめよって!」
「うわぁ! だから服着ろっていってるだろ!」

 俺たちが酒盛りを開始したと同時に、エルバノとプリマも戻って来る。
 こいつには服を着る習慣がないのだろうか。
 毎回裸で戻って来られたらたまったもんじゃない。

「あらあらぁ。寝具も水浴びの場所にぃ、置いてあったはずですよぉ? 
こちらへいらしてくださいねぇ……うふふ」
「窮屈な着物など着とうないんじゃがのぉ。まぁよい、案内せい」
「さっきエルバノが話してたやつ、あれだろ。プリマにも飲ませ……」
「お前もいいから服を着てこい!」
「ちぇ。めんどうだなぁ……」

 再び俺たちは盛大なため息を漏らす。
 向こうが水浴びを終えたとのことだったので、俺たちも水浴びを終わらせ、アメーダ
が作ってくれた食事を取り、その日は眠りに着いた。
 エルバノはぎりぎりまで爆酒を煽り飲み、プリマは一口飲んでエルバノに怒りを
ぶつけて食事で口を濁していた。
 ……随分と賑やかなパーティーになったが、明日でやるべきことをおえられる……んだよな。
 ルーンの町に戻れば……いよいよ我が主に会えるのだろうか。
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