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第五章 親愛なるものたちのために
第七百三十話 伝説の竜、ギオ・マ・ヒルドの骨
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エルバドの技により綺麗に刈り取られた草。
造られた道の先を目を凝らしてみるが、俺にはここからだと竜の骨は見えない。
ジュディには遠くにあるそれが見えているという。
「妖氷雪造形術、コウテイ、アデリー、フンボルト、マカロニ」
いつものように彼らを呼ぶと、全員で搭乗して直ぐに出発した。
「あんたの乗り物、私の風斗車より速いわね。負けていられないわ!」
「このまま真っすぐ行けば着くのか?」
「そうでございます。予想していたより早く到着しそうでございますね」
「到着する頃には暗くなる。どこかで夜を明かした方がいいんじゃないか?」
「平気でございますよ、ジュディ様。結界内まで辿り着く事ができれば、後は
こちらに任せて欲しいのでございます」
「その結界ってのが俺には見えないよーだぜ……」
「見えたら大変でございます。それでは結界の意味がございません」
「ターゲットに反応がある……今のところ見えないが、モンスターが近くに
いるかもしれない。皆気をつけろ」
「ほう、お主は察知能力も持っておるのか? 普通の妖魔ではなさそうだの」
「先生は凄いんです。色々な技や術を持っていますよ」
「ふうむ。確かに妖魔は強いが……どれ、ここはエルバノ様が相手をしてやろうかの」
「いいえ皆さま。問題ございませんよ。もう間もなく結界内へと入るのでございます」
「おいおい、まだギオ・マ・ヒルドの骨へ到達するのに随分と距離があるぜ?」
「俺も目視出来ていない。こんなに遠くから結界を張っているのか?」
「そうでございます。あの骨は目印……のようなものでございますから」
「たしかにギオ・マ・ヒルドは強かったの。あやつを鎮めるのは苦労したもんじゃあ。
ぎゃははははは!」
「師匠はあれと戦った事があるんですか?」
「うむ? 幾度かあるが、あやつ、何で死んだと思う?」
「ええと……強い戦士に囲まれたとか?」
「バカ言うでない。エルバノでもまともに太刀打ちできぬ程凶悪な竜じゃぞ。
あやつはな……食あたりじゃ! 本当バカじゃったのう。ぎゃはははは!」
「食あたり……しかしあの骨の大きさを見る限り納得いくぜ。あの巨体じゃ
外的要因で倒すのは難しいだろ」
「せっかく見てやろうと思うて近づけば暴れるしの。おとなしくなるまで近づけんかったんじゃ。
これでも戦いあった仲じゃからな。看取ったのはエルバノ様だけよ」
「師匠が看取ったのですか? その、ギオ・マ・ヒルドを?」
「うむ。その時手に入れたのが御霊吸手甲という
アーティファクトじゃ。手にはめて集落に戻り一晩酒を飲みほしておったら
ぽっくりと魂事手甲に持ってかれたんじゃよ。残った抜け殻を見たエルダートが
わしの墓を九弦の洞穴にもっていき、エルバノ様の装備事埋葬したというわけじゃな」
「そんな経緯が……それじゃエルバノ様は既に亡くなられているわけではないのですか?」
「この状態を死んでないと言っていいものかのう……死霊族のもの、どう思う?」
「そうでございますね……死とは肉体と魂の乖離した状態も指すと思いますので、死んでいるで
よいのかもしれないのでございます。死霊族にとってみれば、死など過程に
過ぎぬのでございますから……どうやら襲われる前に結界に入れたようでございます」
特段何も変わった気配はない。俺の目にも白い巨大な何かの断片がようやく見える程度。
そして日が沈み始めた。コウテイたちは素早く移動しているのだが、それでも
まだ大分距離がある。確かに半日程はかかりそうだ。
「我は死霊族、シカリーに連なる者アメーダ! 約束の地にて安息の儀を
執り行うため、この地に来た所存! 全て偽りなきこの者たちとともに、我らを
受け入れ真実の道を示せ!」
アメーダとは思えない程大きな声を発し、両手を上に掲げながら天を見上げている。
アメーダを中心に光りの円が発生し、俺たち全員をその円が包み込んでいく。
その円が一気に広がり、閃光に包まれると――――目の前の風景が一変。
ターゲットの反応は消え、一匹の巨大な竜が目に入った。
そしてその足元には町のようなものがあるのが見える。
「これ……は……」
「随分と大きな結界だったのね……凄い技量だわ、これ」
「ここがギオ・マ・ヒルドの町でございます。エルバノ様においてはお久しぶりではございませんか?」
「おお、おお……そうか。死霊族が魂だけこの地に留めておったのか。あやつめ……そうか。
そうだったんじゃな……これで一発殴る事ができよう!」
「嘘だろ……あんなでかい竜の足下に町があるなんて」
「かの竜は魂吸の竜種でございます。エルバノ様をお見受けした時、ギオ・マ・ヒルドの
お友達ではと思ったのでございますが、やはりそうだったのでございますね」
「友達? 少し違うの。けんか相手じゃな。ちっとも勝てなかったんじゃがな。
ギャハハハハハ!」
「あの竜と戦って生きてるだけ凄いな……まともにやりあったらただじゃ済まないだろう」
「まともにやりあってはおらんの。だいたい酒の飲み比べとかじゃしな」
「そっちか! それにしても凄い覇気だ……今は寝てるのか?」
「そのようでございますね。アメーダもお会いするのは久しぶりでございますから。
本日はもう遅いので、ラルダの宿に泊まり、明日用事を済ませるのでございます」
「わかった。案内を頼む」
訪問先がこのような場所だとは思わなかった。
竜の足下にある死霊族の町……なのか?
この旅一番の驚きだが、あんな竜が食あたりで暴れたら、さぞ大変だったんだろうな……。
造られた道の先を目を凝らしてみるが、俺にはここからだと竜の骨は見えない。
ジュディには遠くにあるそれが見えているという。
「妖氷雪造形術、コウテイ、アデリー、フンボルト、マカロニ」
いつものように彼らを呼ぶと、全員で搭乗して直ぐに出発した。
「あんたの乗り物、私の風斗車より速いわね。負けていられないわ!」
「このまま真っすぐ行けば着くのか?」
「そうでございます。予想していたより早く到着しそうでございますね」
「到着する頃には暗くなる。どこかで夜を明かした方がいいんじゃないか?」
「平気でございますよ、ジュディ様。結界内まで辿り着く事ができれば、後は
こちらに任せて欲しいのでございます」
「その結界ってのが俺には見えないよーだぜ……」
「見えたら大変でございます。それでは結界の意味がございません」
「ターゲットに反応がある……今のところ見えないが、モンスターが近くに
いるかもしれない。皆気をつけろ」
「ほう、お主は察知能力も持っておるのか? 普通の妖魔ではなさそうだの」
「先生は凄いんです。色々な技や術を持っていますよ」
「ふうむ。確かに妖魔は強いが……どれ、ここはエルバノ様が相手をしてやろうかの」
「いいえ皆さま。問題ございませんよ。もう間もなく結界内へと入るのでございます」
「おいおい、まだギオ・マ・ヒルドの骨へ到達するのに随分と距離があるぜ?」
「俺も目視出来ていない。こんなに遠くから結界を張っているのか?」
「そうでございます。あの骨は目印……のようなものでございますから」
「たしかにギオ・マ・ヒルドは強かったの。あやつを鎮めるのは苦労したもんじゃあ。
ぎゃははははは!」
「師匠はあれと戦った事があるんですか?」
「うむ? 幾度かあるが、あやつ、何で死んだと思う?」
「ええと……強い戦士に囲まれたとか?」
「バカ言うでない。エルバノでもまともに太刀打ちできぬ程凶悪な竜じゃぞ。
あやつはな……食あたりじゃ! 本当バカじゃったのう。ぎゃはははは!」
「食あたり……しかしあの骨の大きさを見る限り納得いくぜ。あの巨体じゃ
外的要因で倒すのは難しいだろ」
「せっかく見てやろうと思うて近づけば暴れるしの。おとなしくなるまで近づけんかったんじゃ。
これでも戦いあった仲じゃからな。看取ったのはエルバノ様だけよ」
「師匠が看取ったのですか? その、ギオ・マ・ヒルドを?」
「うむ。その時手に入れたのが御霊吸手甲という
アーティファクトじゃ。手にはめて集落に戻り一晩酒を飲みほしておったら
ぽっくりと魂事手甲に持ってかれたんじゃよ。残った抜け殻を見たエルダートが
わしの墓を九弦の洞穴にもっていき、エルバノ様の装備事埋葬したというわけじゃな」
「そんな経緯が……それじゃエルバノ様は既に亡くなられているわけではないのですか?」
「この状態を死んでないと言っていいものかのう……死霊族のもの、どう思う?」
「そうでございますね……死とは肉体と魂の乖離した状態も指すと思いますので、死んでいるで
よいのかもしれないのでございます。死霊族にとってみれば、死など過程に
過ぎぬのでございますから……どうやら襲われる前に結界に入れたようでございます」
特段何も変わった気配はない。俺の目にも白い巨大な何かの断片がようやく見える程度。
そして日が沈み始めた。コウテイたちは素早く移動しているのだが、それでも
まだ大分距離がある。確かに半日程はかかりそうだ。
「我は死霊族、シカリーに連なる者アメーダ! 約束の地にて安息の儀を
執り行うため、この地に来た所存! 全て偽りなきこの者たちとともに、我らを
受け入れ真実の道を示せ!」
アメーダとは思えない程大きな声を発し、両手を上に掲げながら天を見上げている。
アメーダを中心に光りの円が発生し、俺たち全員をその円が包み込んでいく。
その円が一気に広がり、閃光に包まれると――――目の前の風景が一変。
ターゲットの反応は消え、一匹の巨大な竜が目に入った。
そしてその足元には町のようなものがあるのが見える。
「これ……は……」
「随分と大きな結界だったのね……凄い技量だわ、これ」
「ここがギオ・マ・ヒルドの町でございます。エルバノ様においてはお久しぶりではございませんか?」
「おお、おお……そうか。死霊族が魂だけこの地に留めておったのか。あやつめ……そうか。
そうだったんじゃな……これで一発殴る事ができよう!」
「嘘だろ……あんなでかい竜の足下に町があるなんて」
「かの竜は魂吸の竜種でございます。エルバノ様をお見受けした時、ギオ・マ・ヒルドの
お友達ではと思ったのでございますが、やはりそうだったのでございますね」
「友達? 少し違うの。けんか相手じゃな。ちっとも勝てなかったんじゃがな。
ギャハハハハハ!」
「あの竜と戦って生きてるだけ凄いな……まともにやりあったらただじゃ済まないだろう」
「まともにやりあってはおらんの。だいたい酒の飲み比べとかじゃしな」
「そっちか! それにしても凄い覇気だ……今は寝てるのか?」
「そのようでございますね。アメーダもお会いするのは久しぶりでございますから。
本日はもう遅いので、ラルダの宿に泊まり、明日用事を済ませるのでございます」
「わかった。案内を頼む」
訪問先がこのような場所だとは思わなかった。
竜の足下にある死霊族の町……なのか?
この旅一番の驚きだが、あんな竜が食あたりで暴れたら、さぞ大変だったんだろうな……。
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