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第四章 シフティス大陸横断
第七百十六話 神風橋 終編 神風橋から九弦の洞穴へ
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神の空間で休憩をさせている間に、いい情報を仕入れられた。
コウテイやアデリー、ゴマキチ、レドッピー、ブラッピーたちを総動員し、橋の先まで
偵察をさせてきた。
どうやら儀式とやらの影響でなのか誰もいないので、一気に橋を抜けられそうだ。
戦い辛いこの場所で戦闘になるよりは、橋を抜けて行動しやすくした方がいいに決まっている。
急ぎ神の空間内に戻ると、極度の緊張感と神風に神経をとがらせていたからか、ジュディは昏睡していた。
アメーダも疲労の表情が見受けられる。
プリマはぐっすり眠ったままだ。エンシュもまだ目を覚ましていない。
……起こすのは少々忍びないが、この機会を逃すわけにはいかない。
そう思っていたら、真っ先に目を見開いたのはエンシュだった。
「……ここは」
「橋の中継点だ。お前はここで置いていくつもりだ。見張りなんだろ」
「先に進んだら死ぬだけだと言ったはずだ。幾らあんたが強くても、この先は……」
「偵察に向かったんだが橋には誰もいないようだった。抜けるなら今だ」
「なんだって? 橋にはいつも二人……ログラとドーメがいるはずなのに」
「そいつらは純粋な神兵か」
「そうだよ。どっちも俺なんかよりずっと強い。修行がてら橋へ追いやったのも二人だ。
その二人がいない?」
「ああ。誰もいなかったことを確認した」
「おかしいな、あの二人が呼び出されたのか? ……なぁあんた。もし、もしも俺があんたらを案内するといったらどうする? 信じるか?」
「そうだな、こちらには死霊族がいる。もしお前が嘘をつけばすぐにわかるはずだ」
「死霊族にそんな能力があるっていうのか!?」
「お前は他者の外面しか見ていない。本質を見抜く力を学べ。お前はまだ若い」
「……さっきの話の続きだ……もし案内をして、目的を果たせたら……弟子にしてくれないか?」
弟子? 弟子……って俺の弟子になるってことか? 神兵が?
なんかイビン以来久しぶりに聞いたな。
イビン、元気にしてるかな……今頃神兵とともに……ってあれ? これはもしかして。
「弟子はとってないけど、俺が教えられる事があるのなら教えてもいい。
同じような回答をしたやつがもう一人いる。そいつはスキアラの神兵とともに……」
「い、今なんて……」
「ん? だからスキアラの神兵と修業してる、俺の弟子……ではないな、仲間がいる」
「そうか……そんな凄い仲間が。絶対神の神兵と修業している仲間がいるとは」
「あ、こいつらには内緒な。死霊族は絶対神、嫌ってるから」
「細かい事は気にしないし、言うつもりはない。俺は……もっと強くなりたいんだ」
「それも同じ台詞だな。いいだろう。だがもう一つだけ言う事がある」
「何だ? 何でも言ってくれ」
「プリマにちゃんと、謝っておけ。こいつは弱くないし俺より強いかもしれん。プライドも高い。
きっと色々なものを抱えて生きている……いや死んでるのか? たまに
こんがらがるんだよな、死霊族って言う存在にさ」
「? よくわからないけど、俺の考えが間違ってたのは確かだ。神兵の間では、死霊族は雑魚だって
言われてたから。現に俺が見た事がある死霊族だって大したことはなかったんだ」
「世界は広い。それを言うなら人間だって圧倒的強者もいればそうでないものもいるだろう。
種族、肌の色や髪の色、瞳の色なんかで差別するのは間違ってる。いいな」
「ああ……いや、わかりました。ルイン先生」
急に背中がこそばゆくなった。ルイン先生……いや、ちょっとだけいい響きだけど
俺にそんなこと言われる資格はない。
ベルローゼ先生に聞かれたら、フッ……っと笑われるに違いない。
シーザー師匠はガハハと笑うだろうな。
「さて……話の続きは後だ。橋を抜けられたら神兵と遭遇せず休める場所はあるか?」
「あります。九弦の洞穴という、少し大きめの穴があるのでそちらへ。
俺の……隠れた修業場所で誰も来ない場所です」
「よし、まずそこへ向かおう。ジュディ、アメーダ、プリマ……悪いが起きてくれ。
急いでこの橋を抜けるぞ」
「んあ……」
「がっ!? 悪い、爆睡しちまった」
「……アメーダとしたことが……ここは安らげる空間でございますね……」
全員を揺り起こすと、俺は急ぎ妖術で、コウテイ、アデリー、フンボルト、マカロニを
呼ぶ。そして……全速力で移動を指示した。
「ジュディを先頭に直列隊列。位置は常に中央固定、神風の合図で散開、そしてまた中央に固定だ。
いいな!」
『ウェーイ!』
例え敵がいなくても、神風自体は気が抜けない。
綺麗に縦列に並ぶペンギンは圧巻だ。
アデリーだけはいつものように余裕を見せている。
急いだ甲斐あってか、この長い神風橋を、俺たちは一気に抜ける事ができた。
……だが、帰りを考えるとそうもいかないだろう。なにせここが大陸横断の要の場所。
待ち構える変な奴とかいてもおかしくはない場所だ。
橋を抜け切ると、地面の色の違いに驚く。
この地面は黒い……真っ黒なペンキでも塗ったかのような大地だ。
「橋を抜けたら左へ曲がってください。ここからは神風の影響はありません」
「見た所、岩で阻まれてるように見えるぞ?」
「岩に突進を」
「突進……?」
コウテイやアデリー、ゴマキチ、レドッピー、ブラッピーたちを総動員し、橋の先まで
偵察をさせてきた。
どうやら儀式とやらの影響でなのか誰もいないので、一気に橋を抜けられそうだ。
戦い辛いこの場所で戦闘になるよりは、橋を抜けて行動しやすくした方がいいに決まっている。
急ぎ神の空間内に戻ると、極度の緊張感と神風に神経をとがらせていたからか、ジュディは昏睡していた。
アメーダも疲労の表情が見受けられる。
プリマはぐっすり眠ったままだ。エンシュもまだ目を覚ましていない。
……起こすのは少々忍びないが、この機会を逃すわけにはいかない。
そう思っていたら、真っ先に目を見開いたのはエンシュだった。
「……ここは」
「橋の中継点だ。お前はここで置いていくつもりだ。見張りなんだろ」
「先に進んだら死ぬだけだと言ったはずだ。幾らあんたが強くても、この先は……」
「偵察に向かったんだが橋には誰もいないようだった。抜けるなら今だ」
「なんだって? 橋にはいつも二人……ログラとドーメがいるはずなのに」
「そいつらは純粋な神兵か」
「そうだよ。どっちも俺なんかよりずっと強い。修行がてら橋へ追いやったのも二人だ。
その二人がいない?」
「ああ。誰もいなかったことを確認した」
「おかしいな、あの二人が呼び出されたのか? ……なぁあんた。もし、もしも俺があんたらを案内するといったらどうする? 信じるか?」
「そうだな、こちらには死霊族がいる。もしお前が嘘をつけばすぐにわかるはずだ」
「死霊族にそんな能力があるっていうのか!?」
「お前は他者の外面しか見ていない。本質を見抜く力を学べ。お前はまだ若い」
「……さっきの話の続きだ……もし案内をして、目的を果たせたら……弟子にしてくれないか?」
弟子? 弟子……って俺の弟子になるってことか? 神兵が?
なんかイビン以来久しぶりに聞いたな。
イビン、元気にしてるかな……今頃神兵とともに……ってあれ? これはもしかして。
「弟子はとってないけど、俺が教えられる事があるのなら教えてもいい。
同じような回答をしたやつがもう一人いる。そいつはスキアラの神兵とともに……」
「い、今なんて……」
「ん? だからスキアラの神兵と修業してる、俺の弟子……ではないな、仲間がいる」
「そうか……そんな凄い仲間が。絶対神の神兵と修業している仲間がいるとは」
「あ、こいつらには内緒な。死霊族は絶対神、嫌ってるから」
「細かい事は気にしないし、言うつもりはない。俺は……もっと強くなりたいんだ」
「それも同じ台詞だな。いいだろう。だがもう一つだけ言う事がある」
「何だ? 何でも言ってくれ」
「プリマにちゃんと、謝っておけ。こいつは弱くないし俺より強いかもしれん。プライドも高い。
きっと色々なものを抱えて生きている……いや死んでるのか? たまに
こんがらがるんだよな、死霊族って言う存在にさ」
「? よくわからないけど、俺の考えが間違ってたのは確かだ。神兵の間では、死霊族は雑魚だって
言われてたから。現に俺が見た事がある死霊族だって大したことはなかったんだ」
「世界は広い。それを言うなら人間だって圧倒的強者もいればそうでないものもいるだろう。
種族、肌の色や髪の色、瞳の色なんかで差別するのは間違ってる。いいな」
「ああ……いや、わかりました。ルイン先生」
急に背中がこそばゆくなった。ルイン先生……いや、ちょっとだけいい響きだけど
俺にそんなこと言われる資格はない。
ベルローゼ先生に聞かれたら、フッ……っと笑われるに違いない。
シーザー師匠はガハハと笑うだろうな。
「さて……話の続きは後だ。橋を抜けられたら神兵と遭遇せず休める場所はあるか?」
「あります。九弦の洞穴という、少し大きめの穴があるのでそちらへ。
俺の……隠れた修業場所で誰も来ない場所です」
「よし、まずそこへ向かおう。ジュディ、アメーダ、プリマ……悪いが起きてくれ。
急いでこの橋を抜けるぞ」
「んあ……」
「がっ!? 悪い、爆睡しちまった」
「……アメーダとしたことが……ここは安らげる空間でございますね……」
全員を揺り起こすと、俺は急ぎ妖術で、コウテイ、アデリー、フンボルト、マカロニを
呼ぶ。そして……全速力で移動を指示した。
「ジュディを先頭に直列隊列。位置は常に中央固定、神風の合図で散開、そしてまた中央に固定だ。
いいな!」
『ウェーイ!』
例え敵がいなくても、神風自体は気が抜けない。
綺麗に縦列に並ぶペンギンは圧巻だ。
アデリーだけはいつものように余裕を見せている。
急いだ甲斐あってか、この長い神風橋を、俺たちは一気に抜ける事ができた。
……だが、帰りを考えるとそうもいかないだろう。なにせここが大陸横断の要の場所。
待ち構える変な奴とかいてもおかしくはない場所だ。
橋を抜け切ると、地面の色の違いに驚く。
この地面は黒い……真っ黒なペンキでも塗ったかのような大地だ。
「橋を抜けたら左へ曲がってください。ここからは神風の影響はありません」
「見た所、岩で阻まれてるように見えるぞ?」
「岩に突進を」
「突進……?」
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