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第四章 シフティス大陸横断
第七百十五話 神風橋、後編二、中継点
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エンシュを気絶させた俺は、彼を肩に担いで三人の許へ向かう。
アメーダはにっこりとそっぽを向きながら微笑み、ジュディは少し驚いているようだった。
プリマは物凄く機嫌がよくなったが、やはり体がまだつらそうなので、憑依させておくことにした。
だが、今度はちゃんと言うことを聞くように指示をすると、すんなりと受け止めたようだ。
大分反省してくれたのか?
「その青年、どうするのでございますか?」
「あの場所に放置しておくわけにもいかないだろ。どこか休めるような場所にでも連れて、おいていけばいいだろう」
「なぁ。やっぱり担いでくれよ」
「わかった。今コウテイを呼ぶから」
「そうじゃないんだ。話をしながら歩きたい」
仕方ない、大人しくしてるならこの程度の我儘は聞いてやるか。
コウテイにエンシュを乗せると、再びジュディを先頭に歩き出す。
「褒めてくれ。プリマを」
「話ってそれか? はぁ……お前は俺を殺せるだけの実力がある。
エンシュと対峙しても特に何も感じなかったが、お前と初めて対峙したとき、命を取られると思った」
「それでそれで?」
「お前はこの地で力を失うとわかった後でもついてきた。誰よりも勇気がある。
それに俺の言うことをちゃんと聞く。そうだろ?」
「ああ! そうだ。プリマは凄いだろ? へへへ……」
「少し褒めすぎでございますよ。こそばゆくなってくるのでございます」
「何だ、アメーダも構って欲しいみたいだぞ。しょうがないやつだな」
「それをプリマが言うのか……」
「お前たちを見てるとなんかこう……死地に向かっている感じがしなくあんる。不思議だな……それにしても
ルイン。あんた相当な実力者だったんだな。ただの王女の護衛なのかと思ったけど」
「あれ? 派手に勘違いされてるな……俺は王女の護衛じゃない。本来の護衛は護衛任務を外されて、現在は
アースガルズと俺の国との協定に勤しんでるよ」
「お前の……国? どういうことだ」
「気になるなら安全な所まで行ったら話すよ。それよりジュディ。こいつ……エンシュだったか。
実力的にはどうだ?」
「その青年はまだ幼い。しかも純粋な神兵じゃないようだ。実力的には下の下だろうな。
見張りといっていたし、何か余程大がかりな儀式をやってるのかもしれん。好機かもしれないぞ」
「やっぱりそう思うか。一気にわたり切りたいけど、出来ると思うか?」
「かなり進む事は出来るが、今日中に抜けるのは不可能だ。もうじき中継点がある。
そこなら直進してくる神風は防げるだろう。その青年を下ろすならそこだろうな」
「わかった。それにしても長い橋だな……モンスターが来ないのは幸いだが……」
「それはそうでございますね。神風のお陰で橋の上以外のものの心配をしなくていいのは助かるのでございます」
結局そのままプリマは寝てしまったので、担いだまま移動することになる。
まったく……この状況で襲われるとたまったものではない。
しかし……懐かしいな。メルザを担いでいる時も、こんな感じだった。
ぶんぶんと首を横に振り、目的に集中する。
花を届けるというが……シカリーはなぜそのような事をさせるのかがわからない。
アメーダとシカリー。本当の目的は何だろうか?
プリマはなぜ俺を狙い、異世界の話に興味を持つのか。
アルカイオス幻魔とは……神兵とは……ゲンドールの世界の理とは何なのか。
考える事はある。
でも何よりも俺が考えている事は……元気な笑顔を見せるメルザに会えること。
ただそれだけを願い、行動している。
「そのためなら俺は……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもないよジュディ。そろそろ中継点か?」
「ああ。ここまでは案内した経験がある。ここから先は未経験の領域だよ。
俺も少々目的ができたようだ。お前たちを無事に目的地まで届けたい。ピールも……そうしろって言ってる」
「ウォン」
「いいのか? 命を落とす危険だってあるぞ」
「どうせ俺はただの墓守だ。多少腕が立つ程度で、このまま一生墓守として終わっていいのか、考えていた。
無機人族ってのは寿命が長い。エルフ程とはいかないが、それでも数百年は生きるんだ」
「その間、ずっと墓守だけを行おうとしてたのか?」
「剣技は極めてみたいと考えていた。オズワル師匠にはそう言われた。お前は筋がいい。努力さえ
怠らなければ開花する事が出来るだろうってな」
「……そうか。英雄がそういうなたそうなんだろうな」
「だが同時にこうも言われた。長い人生において無関心が過ぎれば堕落した人生ともなる。
いい筋を潰すも活かすもお前次第。だが活かす術ってのは出会いから生まれるもんだ……ってな。
これがオズワル師匠の言う出会いなのかは俺にもわからん。だが……お前についていけば、俺は
新しい道を歩めるかもしれない。そう思ったんだ」
「そいつはまた、責任重大だな……だが、俺について来れば確かに、波乱の生涯になるだろうな。
何せおかしなことに巻き込まれる性分でね。困りごとに絶えないんだ。それに人手は幾らあっても
いい。なんなら無機人族全員、歓迎するぜ」
「ふふっ。俺たち全員を受け入れる? 墓事面倒見てくれるってのかい?」
「出来るなら、構わないよ。必要であればそうするだけだ。墓は必要なものだろう?
移せるのかはわからないけれど……な」
「墓を移す……か。考えてもみなかった。大切なものは墓そのものじゃないってことか」
「そりゃそうだ。大切なのは故人を思う気持ち。他者を思う中にこそ、魂の芽吹きは存在する。
俺はそう思っている」
「あなた様……やはりアメーダはあなた様にずっと、憑いていくのでございます……」
何かおかしなことを言っただろうか?
アメーダを感動させてしまった。
そっぽを向くアメーダ……いや王女ですらこちらを凝視していた。
口を開けたまま。
「そう考えられる者は多くないってことだろう。俺も……驚いたよ。
魂の芽吹きは他者の意思に存在する……か。俺の意思の中にも、死んだあいつらの魂が、あるのかな……」
「きっとあるさ。お前はずっと墓守として戦ってきたのだろう? そんな嬉しい行動されたら、死んだ俺なら
泣き崩れるぜ。きっとな」
「ははは……まるで死んだことがあるみたいな言いぶりだな」
「まぁ、そうだな……ここが中継点か?」
先ほどと同じように円に柱があるような場所へと出る。
最初に見つけた円の場所よりぐっと円の部分が広く、しっかりやすめるようなスペースがある。
「ああ。だがここで休むわけにはいかないだろう。先を急ごう」
「今回の旅路はかなり危険を伴う事、そしてメルザに近しい能力を使えるアメーダやプリマ
がいることを考えて、神の空間を持ってきたんだ。アメーダ、使えるか?」
「これは……珍しいアーティファクトをお持ちでございますね。使用制限が強いアーティファクトでございますが、喉から手が出る程欲しいアーティファクトでございます。展開するのでございます」
アメーダが神の空間を展開すると、五メートル四方の部屋が展開される。
ジュディは呆気に取られているが、俺はさっさと部屋に入り、プリマを下ろした。
スースーと眠っているプリマを見ていると、少し安堵してしまう。
本当に似ているな……特殊な耳が無ければメルザそのものに見える。
「アルカイオス幻魔の血ってのはプリマみたいな子が多くいるのか?」
「いいえ、プリマ様は原初の血が濃いのでございます。アメーダとは随分と異なるのでございますよ」
「瞳と髪の色も似ているけど少し違うな」
「そうでございますね……プリマ様はラングの血が無ければ完全なる原初の幻魔だったのでございましょう」
「そうか……」
「この空間、神風は平気なのか? 上部が少しガードからはみ出ているみたいだが」
「問題ないだろう。ここから先の道のりとかを少し偵察したい。俺の術で先行して探ってみる。
二人ともゆっくりやすんでいてくれ」
俺は妖氷雪造形術を駆使し、神風橋の先を探るべく、一人外へと出た。
アメーダはにっこりとそっぽを向きながら微笑み、ジュディは少し驚いているようだった。
プリマは物凄く機嫌がよくなったが、やはり体がまだつらそうなので、憑依させておくことにした。
だが、今度はちゃんと言うことを聞くように指示をすると、すんなりと受け止めたようだ。
大分反省してくれたのか?
「その青年、どうするのでございますか?」
「あの場所に放置しておくわけにもいかないだろ。どこか休めるような場所にでも連れて、おいていけばいいだろう」
「なぁ。やっぱり担いでくれよ」
「わかった。今コウテイを呼ぶから」
「そうじゃないんだ。話をしながら歩きたい」
仕方ない、大人しくしてるならこの程度の我儘は聞いてやるか。
コウテイにエンシュを乗せると、再びジュディを先頭に歩き出す。
「褒めてくれ。プリマを」
「話ってそれか? はぁ……お前は俺を殺せるだけの実力がある。
エンシュと対峙しても特に何も感じなかったが、お前と初めて対峙したとき、命を取られると思った」
「それでそれで?」
「お前はこの地で力を失うとわかった後でもついてきた。誰よりも勇気がある。
それに俺の言うことをちゃんと聞く。そうだろ?」
「ああ! そうだ。プリマは凄いだろ? へへへ……」
「少し褒めすぎでございますよ。こそばゆくなってくるのでございます」
「何だ、アメーダも構って欲しいみたいだぞ。しょうがないやつだな」
「それをプリマが言うのか……」
「お前たちを見てるとなんかこう……死地に向かっている感じがしなくあんる。不思議だな……それにしても
ルイン。あんた相当な実力者だったんだな。ただの王女の護衛なのかと思ったけど」
「あれ? 派手に勘違いされてるな……俺は王女の護衛じゃない。本来の護衛は護衛任務を外されて、現在は
アースガルズと俺の国との協定に勤しんでるよ」
「お前の……国? どういうことだ」
「気になるなら安全な所まで行ったら話すよ。それよりジュディ。こいつ……エンシュだったか。
実力的にはどうだ?」
「その青年はまだ幼い。しかも純粋な神兵じゃないようだ。実力的には下の下だろうな。
見張りといっていたし、何か余程大がかりな儀式をやってるのかもしれん。好機かもしれないぞ」
「やっぱりそう思うか。一気にわたり切りたいけど、出来ると思うか?」
「かなり進む事は出来るが、今日中に抜けるのは不可能だ。もうじき中継点がある。
そこなら直進してくる神風は防げるだろう。その青年を下ろすならそこだろうな」
「わかった。それにしても長い橋だな……モンスターが来ないのは幸いだが……」
「それはそうでございますね。神風のお陰で橋の上以外のものの心配をしなくていいのは助かるのでございます」
結局そのままプリマは寝てしまったので、担いだまま移動することになる。
まったく……この状況で襲われるとたまったものではない。
しかし……懐かしいな。メルザを担いでいる時も、こんな感じだった。
ぶんぶんと首を横に振り、目的に集中する。
花を届けるというが……シカリーはなぜそのような事をさせるのかがわからない。
アメーダとシカリー。本当の目的は何だろうか?
プリマはなぜ俺を狙い、異世界の話に興味を持つのか。
アルカイオス幻魔とは……神兵とは……ゲンドールの世界の理とは何なのか。
考える事はある。
でも何よりも俺が考えている事は……元気な笑顔を見せるメルザに会えること。
ただそれだけを願い、行動している。
「そのためなら俺は……」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何でもないよジュディ。そろそろ中継点か?」
「ああ。ここまでは案内した経験がある。ここから先は未経験の領域だよ。
俺も少々目的ができたようだ。お前たちを無事に目的地まで届けたい。ピールも……そうしろって言ってる」
「ウォン」
「いいのか? 命を落とす危険だってあるぞ」
「どうせ俺はただの墓守だ。多少腕が立つ程度で、このまま一生墓守として終わっていいのか、考えていた。
無機人族ってのは寿命が長い。エルフ程とはいかないが、それでも数百年は生きるんだ」
「その間、ずっと墓守だけを行おうとしてたのか?」
「剣技は極めてみたいと考えていた。オズワル師匠にはそう言われた。お前は筋がいい。努力さえ
怠らなければ開花する事が出来るだろうってな」
「……そうか。英雄がそういうなたそうなんだろうな」
「だが同時にこうも言われた。長い人生において無関心が過ぎれば堕落した人生ともなる。
いい筋を潰すも活かすもお前次第。だが活かす術ってのは出会いから生まれるもんだ……ってな。
これがオズワル師匠の言う出会いなのかは俺にもわからん。だが……お前についていけば、俺は
新しい道を歩めるかもしれない。そう思ったんだ」
「そいつはまた、責任重大だな……だが、俺について来れば確かに、波乱の生涯になるだろうな。
何せおかしなことに巻き込まれる性分でね。困りごとに絶えないんだ。それに人手は幾らあっても
いい。なんなら無機人族全員、歓迎するぜ」
「ふふっ。俺たち全員を受け入れる? 墓事面倒見てくれるってのかい?」
「出来るなら、構わないよ。必要であればそうするだけだ。墓は必要なものだろう?
移せるのかはわからないけれど……な」
「墓を移す……か。考えてもみなかった。大切なものは墓そのものじゃないってことか」
「そりゃそうだ。大切なのは故人を思う気持ち。他者を思う中にこそ、魂の芽吹きは存在する。
俺はそう思っている」
「あなた様……やはりアメーダはあなた様にずっと、憑いていくのでございます……」
何かおかしなことを言っただろうか?
アメーダを感動させてしまった。
そっぽを向くアメーダ……いや王女ですらこちらを凝視していた。
口を開けたまま。
「そう考えられる者は多くないってことだろう。俺も……驚いたよ。
魂の芽吹きは他者の意思に存在する……か。俺の意思の中にも、死んだあいつらの魂が、あるのかな……」
「きっとあるさ。お前はずっと墓守として戦ってきたのだろう? そんな嬉しい行動されたら、死んだ俺なら
泣き崩れるぜ。きっとな」
「ははは……まるで死んだことがあるみたいな言いぶりだな」
「まぁ、そうだな……ここが中継点か?」
先ほどと同じように円に柱があるような場所へと出る。
最初に見つけた円の場所よりぐっと円の部分が広く、しっかりやすめるようなスペースがある。
「ああ。だがここで休むわけにはいかないだろう。先を急ごう」
「今回の旅路はかなり危険を伴う事、そしてメルザに近しい能力を使えるアメーダやプリマ
がいることを考えて、神の空間を持ってきたんだ。アメーダ、使えるか?」
「これは……珍しいアーティファクトをお持ちでございますね。使用制限が強いアーティファクトでございますが、喉から手が出る程欲しいアーティファクトでございます。展開するのでございます」
アメーダが神の空間を展開すると、五メートル四方の部屋が展開される。
ジュディは呆気に取られているが、俺はさっさと部屋に入り、プリマを下ろした。
スースーと眠っているプリマを見ていると、少し安堵してしまう。
本当に似ているな……特殊な耳が無ければメルザそのものに見える。
「アルカイオス幻魔の血ってのはプリマみたいな子が多くいるのか?」
「いいえ、プリマ様は原初の血が濃いのでございます。アメーダとは随分と異なるのでございますよ」
「瞳と髪の色も似ているけど少し違うな」
「そうでございますね……プリマ様はラングの血が無ければ完全なる原初の幻魔だったのでございましょう」
「そうか……」
「この空間、神風は平気なのか? 上部が少しガードからはみ出ているみたいだが」
「問題ないだろう。ここから先の道のりとかを少し偵察したい。俺の術で先行して探ってみる。
二人ともゆっくりやすんでいてくれ」
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