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第四章 シフティス大陸横断
第七百一話 神風橋を渡る前に
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襲ってきたそいつは、俺のつぶやきに鋭く反応し、動きを完全に止めた。
どうやらタブーだったのか、先ほどとは違い殺気を帯びている。
「つまり神風橋を渡るつもりか。それだけの実力者ってことだな。
目的は何だ。なぜ越えようとする。あの一線を越えればこちらにも被害が出る可能性がある。
言え、いわないならここで食い止めるまでだ」
「花を置きに行くだけだ」
「その通りでございます」
「なんだそうだったのか。プリマはちっとも知らなかったぞ」
「だからついてくるなって言ったろ……」
「花だと? そんなもののためになぜ東へ行く」
「そういう仕事の依頼だ。なぜかまでは聞いていない。
それと王女の声を取り戻すためってのも伝えないといけないか」
「王女の……声? ……それはアースガルズの王女、ミレーユ様のことか」
「そうだよ」
「……少し話が聞きたい。いきなり襲ったのは悪かった。だが信用したわけじゃない。
ついてこい」
「……断るといったら?」
そいつはクイクイと指を示してみせる。
そちらを見ると……プリマは既に狼にまたがって移動し始めていた。
「……まぁ、いいか。殺気は消えたしおかしなことをするにしてもプリマがいれば逃走は可能だ」
「そうでございますね。名を訪ねてみてはいかがでございますか? そうすればアメーダには
知る術があるのでございます」
「本名を名乗るとは思えない。嘘をついたらかなりまずいことになるのだろう?」
「それは……その通りでございますね。やめておきましょうか、ちゃんと打ち解けるまでは」
「ああ……」
――――そいつに案内されて着いた場所は、少しましな廃屋。
中にはテーブルや椅子が乱立しており、掃除は多少してあるものの、綺麗とはいえない。
「なんだ随分と汚い場所だな。お前こんなところに住んでるのか」
「……なんでピールがそんなに懐く。他の誰かに気を許すやつじゃないのに」
「それで、話ってのはなんだ」
俺もアメーダも椅子には腰かけず、立ったまま話しかける。
そいつはピールに餌をやりながら話し始めた。
「ここは元々ミレーユ王女の故郷があった場所だ」
「……どういうことだ? ミレーユ王女……いや、すまん。何でもない」
「……? ここは元々大きい国があった場所だ。今でこそ墓場と廃墟しか残っちゃいないが
大きな湖、そして豊かな大地に森を兼ね備えたいい場所だったんだ。
だが……環境は悪くなるばかり。いつからかここには人が住めるような環境じゃなくなった」
危うく王女がここにいることをばらしそうになったが、どうやらこの男は気づいてはいないようだ。
「それで、そんな場所にいるお前は一体ここで何をしてるんだ? いや、正確にはお前たち……かな」
「墓守と、墓荒らしを防いでいる。言っても信じないだろうけどよ。
こんな世界じゃいつ墓荒らしが来るかもわからんだろ」
「別に信じないわけではないが……お前さっき、アメーダのナイフが刺さっても、体にすり抜けて
いたよな。人じゃないのか?」
「無機人種って、知ってるか」
「いや、聞いた事が無いな」
「それなら無機質系のモンスターは知っているか?」
「スライムとかだろう? それくらいは知ってるぞ。血液を持たず、液体などを媒介にした魔族……だよな」
「俺は無機人種。王女が多くのモンスターを招来できるのは聞いた事があるだろう?」
「ああ。数百ものモンスターを同時に招来して、挨拶をして見せるのがアースガルズでは評判だと
聞いた事がある」
つまりその王女に纏わる故郷であるならば、多くのモンスター種がいても不思議じゃないってことか。
「つまり……お前は亜人の部類か」
「言い方を変えたらそうなるな。お前からも亜人の匂いがする。だから容赦なく襲った」
「悪いが俺は妖魔だな。亜人とは少し違う」
「……魔族か。なら東側の奴ら寄りってわけか。その割には殺気だってねえ」
「東寄りでも西寄りでも何でもない。俺の出身はトリノポートだしな」
「何だと? トリノポートに強者がいるとは思えん。いつ滅ぼされてもおかしくない大陸だろう」
どうやらこいつからは、こちらの情報と引き換えに、様々な情報を引き出せるかもしれない。
丁寧に今一度話し合ってみるとしよう。
どうやらタブーだったのか、先ほどとは違い殺気を帯びている。
「つまり神風橋を渡るつもりか。それだけの実力者ってことだな。
目的は何だ。なぜ越えようとする。あの一線を越えればこちらにも被害が出る可能性がある。
言え、いわないならここで食い止めるまでだ」
「花を置きに行くだけだ」
「その通りでございます」
「なんだそうだったのか。プリマはちっとも知らなかったぞ」
「だからついてくるなって言ったろ……」
「花だと? そんなもののためになぜ東へ行く」
「そういう仕事の依頼だ。なぜかまでは聞いていない。
それと王女の声を取り戻すためってのも伝えないといけないか」
「王女の……声? ……それはアースガルズの王女、ミレーユ様のことか」
「そうだよ」
「……少し話が聞きたい。いきなり襲ったのは悪かった。だが信用したわけじゃない。
ついてこい」
「……断るといったら?」
そいつはクイクイと指を示してみせる。
そちらを見ると……プリマは既に狼にまたがって移動し始めていた。
「……まぁ、いいか。殺気は消えたしおかしなことをするにしてもプリマがいれば逃走は可能だ」
「そうでございますね。名を訪ねてみてはいかがでございますか? そうすればアメーダには
知る術があるのでございます」
「本名を名乗るとは思えない。嘘をついたらかなりまずいことになるのだろう?」
「それは……その通りでございますね。やめておきましょうか、ちゃんと打ち解けるまでは」
「ああ……」
――――そいつに案内されて着いた場所は、少しましな廃屋。
中にはテーブルや椅子が乱立しており、掃除は多少してあるものの、綺麗とはいえない。
「なんだ随分と汚い場所だな。お前こんなところに住んでるのか」
「……なんでピールがそんなに懐く。他の誰かに気を許すやつじゃないのに」
「それで、話ってのはなんだ」
俺もアメーダも椅子には腰かけず、立ったまま話しかける。
そいつはピールに餌をやりながら話し始めた。
「ここは元々ミレーユ王女の故郷があった場所だ」
「……どういうことだ? ミレーユ王女……いや、すまん。何でもない」
「……? ここは元々大きい国があった場所だ。今でこそ墓場と廃墟しか残っちゃいないが
大きな湖、そして豊かな大地に森を兼ね備えたいい場所だったんだ。
だが……環境は悪くなるばかり。いつからかここには人が住めるような環境じゃなくなった」
危うく王女がここにいることをばらしそうになったが、どうやらこの男は気づいてはいないようだ。
「それで、そんな場所にいるお前は一体ここで何をしてるんだ? いや、正確にはお前たち……かな」
「墓守と、墓荒らしを防いでいる。言っても信じないだろうけどよ。
こんな世界じゃいつ墓荒らしが来るかもわからんだろ」
「別に信じないわけではないが……お前さっき、アメーダのナイフが刺さっても、体にすり抜けて
いたよな。人じゃないのか?」
「無機人種って、知ってるか」
「いや、聞いた事が無いな」
「それなら無機質系のモンスターは知っているか?」
「スライムとかだろう? それくらいは知ってるぞ。血液を持たず、液体などを媒介にした魔族……だよな」
「俺は無機人種。王女が多くのモンスターを招来できるのは聞いた事があるだろう?」
「ああ。数百ものモンスターを同時に招来して、挨拶をして見せるのがアースガルズでは評判だと
聞いた事がある」
つまりその王女に纏わる故郷であるならば、多くのモンスター種がいても不思議じゃないってことか。
「つまり……お前は亜人の部類か」
「言い方を変えたらそうなるな。お前からも亜人の匂いがする。だから容赦なく襲った」
「悪いが俺は妖魔だな。亜人とは少し違う」
「……魔族か。なら東側の奴ら寄りってわけか。その割には殺気だってねえ」
「東寄りでも西寄りでも何でもない。俺の出身はトリノポートだしな」
「何だと? トリノポートに強者がいるとは思えん。いつ滅ぼされてもおかしくない大陸だろう」
どうやらこいつからは、こちらの情報と引き換えに、様々な情報を引き出せるかもしれない。
丁寧に今一度話し合ってみるとしよう。
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