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第四章 シフティス大陸横断
第七百話 パトモスから始まる旅路
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雪道をゆっくりと踏みしめながら歩く俺たち。
日はまだ登り始めたばかりなので、照り返しは弱いが、視界が妙にまぶしく見える。
「立ち並ぶ廃墟に気配がございますね。この辺りからは戦士たちの実力がぐっと上がるのでございます。
十分気を付けて欲しいのでございます」
「プリマには関係無いけどな。なんなら全部倒してきてやるぞ?」
「喧嘩を売りにきたわけじゃないんだ。頼むから大人しくしててくれ……ところでパトモスってのは
町……なんだよな? 廃墟じゃなくて。エプタがいまいち教えてくれなくてさ」
「町と言うほどの規模ではございません。村というのが妥当な呼び方かもしれないのでございます」
「野党とかに襲われたりはしないのか? アースガルズのような国であればトループがいるから
町民は安心して暮らせるだろう?」
「先ほどもお話したように、戦士たちの実力がぐっと上がるのでございます。野盗など沸いたところで
瞬殺でございますよ」
「強者は野盗にはならないのか?」
「野盗に落ちる程度の者を、強者とは言い難いのでございます。この地は見ての通り極寒の地で
ございます。過酷な環境で生き抜くにはそれなりの術が必要なのでございます」
「おい。なんかいるぞ」
プリマの呼びかけに反応してみると、歩いている道の奥に一匹の……狼のような生物がいた。
早速モンスターか。到着してそうそうだな……まぁ墓場でスケルトンやゾンビに襲われるよりはましか。
「少々お待ちして欲しいのでございます……あれは誰かに飼われている狼のようでございますね」
「匂いに反応してきたか、或いは調べるように命令されたか……」
狼のようなそれは、ゆっくりとこちらへ近づいて来る。
灰色の体毛に覆われた、体長一メートル程の素早そうな体つき。
鋭そうな牙を見せ、尻尾は長く美しい。
「ッ!上でございます!」
「封剣! ターゲットに反応は無かったぞ!」
フードを被ったやつが上空から俺に切りかかって来ていた。
それと同時に狼がプリマに向けてとびかかろうとしている!
「……プリマ、殺すな!」
「えー」
「アメーダがいるのを忘れないで欲しいのでございますね……お手を挙げて欲しいのでございます」
アメーダが股下から取り出した短剣を男の背中にぴたりとつける。
しかし次の瞬間そいつはとんでもない行動に出た。
……そのまま身を後ろに下げ、ナイフを突き立てさせたのだ。
「……! 何をしてる! 死ぬぞ!」
しかし、血は一滴も落ちず、アメーダはとっさに短剣から手を離す。
すると短剣はそいつの体に吸い込まれるようにのみこまれてしまった。
くるくると回転しながら俺たちと一度距離をとるそいつ。
そいつはちらりと狼の方を見る。
「おいやめろ。くすぐったいだろ。何だお前。プリマの事が好きなのか?」
「……」
その状況を見てそいつは剣を収めた。
背中に手を回すと、背中に刺さったはずの短剣を取り出し、こちら側に投げつけ、アメーダがそれを
受け取る。
「なぜラウンズの墓場から突如現れた。アンデッドか何かか」
「違う。俺たちは……ただの旅人だよ」
「ただの旅人がそのような身のこなしなどしないだろう。明らかに強者だ。
パトモスに何しにきた。どうやって現れた?」
「何だお前、乗せてくれるのか?」
「ピール! 何をしている。相手は敵かもしれないんだ!」
「クゥーン……」
「……ちっ。早々にここを出ていけ」
「おいおい、いきなり襲っておいてそれはないんじゃないか?」
「いきなり表れたお前たちが悪いんだ」
「そうは言ってもな。ここが一番近かったんだよ、大陸横断するのに」
「何?」
あれ、言っちゃまずかったかな。
しかし何なんだこいつは。突然やばい奴と鉢合わせてしまったのかもしれない。
日はまだ登り始めたばかりなので、照り返しは弱いが、視界が妙にまぶしく見える。
「立ち並ぶ廃墟に気配がございますね。この辺りからは戦士たちの実力がぐっと上がるのでございます。
十分気を付けて欲しいのでございます」
「プリマには関係無いけどな。なんなら全部倒してきてやるぞ?」
「喧嘩を売りにきたわけじゃないんだ。頼むから大人しくしててくれ……ところでパトモスってのは
町……なんだよな? 廃墟じゃなくて。エプタがいまいち教えてくれなくてさ」
「町と言うほどの規模ではございません。村というのが妥当な呼び方かもしれないのでございます」
「野党とかに襲われたりはしないのか? アースガルズのような国であればトループがいるから
町民は安心して暮らせるだろう?」
「先ほどもお話したように、戦士たちの実力がぐっと上がるのでございます。野盗など沸いたところで
瞬殺でございますよ」
「強者は野盗にはならないのか?」
「野盗に落ちる程度の者を、強者とは言い難いのでございます。この地は見ての通り極寒の地で
ございます。過酷な環境で生き抜くにはそれなりの術が必要なのでございます」
「おい。なんかいるぞ」
プリマの呼びかけに反応してみると、歩いている道の奥に一匹の……狼のような生物がいた。
早速モンスターか。到着してそうそうだな……まぁ墓場でスケルトンやゾンビに襲われるよりはましか。
「少々お待ちして欲しいのでございます……あれは誰かに飼われている狼のようでございますね」
「匂いに反応してきたか、或いは調べるように命令されたか……」
狼のようなそれは、ゆっくりとこちらへ近づいて来る。
灰色の体毛に覆われた、体長一メートル程の素早そうな体つき。
鋭そうな牙を見せ、尻尾は長く美しい。
「ッ!上でございます!」
「封剣! ターゲットに反応は無かったぞ!」
フードを被ったやつが上空から俺に切りかかって来ていた。
それと同時に狼がプリマに向けてとびかかろうとしている!
「……プリマ、殺すな!」
「えー」
「アメーダがいるのを忘れないで欲しいのでございますね……お手を挙げて欲しいのでございます」
アメーダが股下から取り出した短剣を男の背中にぴたりとつける。
しかし次の瞬間そいつはとんでもない行動に出た。
……そのまま身を後ろに下げ、ナイフを突き立てさせたのだ。
「……! 何をしてる! 死ぬぞ!」
しかし、血は一滴も落ちず、アメーダはとっさに短剣から手を離す。
すると短剣はそいつの体に吸い込まれるようにのみこまれてしまった。
くるくると回転しながら俺たちと一度距離をとるそいつ。
そいつはちらりと狼の方を見る。
「おいやめろ。くすぐったいだろ。何だお前。プリマの事が好きなのか?」
「……」
その状況を見てそいつは剣を収めた。
背中に手を回すと、背中に刺さったはずの短剣を取り出し、こちら側に投げつけ、アメーダがそれを
受け取る。
「なぜラウンズの墓場から突如現れた。アンデッドか何かか」
「違う。俺たちは……ただの旅人だよ」
「ただの旅人がそのような身のこなしなどしないだろう。明らかに強者だ。
パトモスに何しにきた。どうやって現れた?」
「何だお前、乗せてくれるのか?」
「ピール! 何をしている。相手は敵かもしれないんだ!」
「クゥーン……」
「……ちっ。早々にここを出ていけ」
「おいおい、いきなり襲っておいてそれはないんじゃないか?」
「いきなり表れたお前たちが悪いんだ」
「そうは言ってもな。ここが一番近かったんだよ、大陸横断するのに」
「何?」
あれ、言っちゃまずかったかな。
しかし何なんだこいつは。突然やばい奴と鉢合わせてしまったのかもしれない。
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