異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
779 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第六百九十六話 大いなる戦い

しおりを挟む
「地獄の王が命ず。我が配下よ、ソロモンの名の許にはせ参じよ。パーガトリーゲート」

 長くそびえる蒼黒い髪が、地へと突き刺さり、イカリのように引き上げられる。
 その先には二体の者が引きずりだされるように浮かび上がって来た。

「デカラビア、参上つかまつる」
「ギーヒャヒャヒャヒャヒャ。ダンタリオン、再・降・臨!」

 出てきた瞬間ぐしゃりと踏み潰されるダンタリオン。
 こいつはやかましいからしつけが必要だ。

「ギヒャー! 何しやがるてめぇ! おうおう? おめえ本当にベリアルか? 
ギヒャアーー……随分と面白そうなやつと対峙してやがんなあ? 力が必要か? 貸してください
お願いしますダンタリオン様っていえ!」
「おいよせダンタリオン。とばっちりを食うのは御免だ。
相手はどちらですか?」
「三姉妹だ。派手にやれ」
「ギーヒャヒャヒャヒャ! あの女共、食っていいのか? いいんだな? ならやるぜ!」
「そんな楽な相手じゃねえ。精々無様をさらさねえようにするこったな、ダンタリオン」
「ギヒャ? 俺を舐めてるってのか? このダンタリオン様をよぉ!」
「御託はいい。さっさといけ。こっちは……けん制だけで今のところ手一杯か」

 見えざる幻手……これがとにかく厄介だな。
 三姉妹はあいつらでどうにか防いでいられるだろ。
 本体をけん制しつつ動き回らねえといけねえ。

「そうだった、こいつはアルカーンの知る由もないところだったな……改変! 時の中のルーニー! アルデバラン!」
「何? それは闇の……ルーニーをとどめておけん!}
「ホロロロー!」

 稲光を発したまま静止していたルーニーが、闇のモヤを纏い動き出す。
 それは幻魔界でルーニーへと封じたバラム・バロムそのもの。
 
「時を改変されたか……ならば対応せねばなるまい」

 ルーニーへと対応を始めたアルカーンを見て、一気に勝負を詰めるべく、詠唱を開始した。

 【 ᚴᚢᚾᛋᛏᚢᚴᚢᛚᛚ ᛚᛁᚴᛖ ᚹᚨᚷᛖ ᚢᚾᛚᛁᛏ ᚠᛁᚾᛘᛁᚴᚦᛖ ᛏᛖᚲᛁᛋᛚ ᚾᛟᛘᛁᚾᛋᛚᚨ ᚠᛁᚾᛘᛁᚴᚦᛖ ᚢᚾᚷᛁᛋᛚᛁᛋ ᚠᚨᚢᚾᛁᚴᛁ ᚦᚨᚱᚴᛋᛚ】

「来い、エゴイストテュポーン」

 大きな裂け口を持つ怪物が突如空中に現れる。
 それはかつて竜の集団を丸のみにした怪物。
 裂け口が動き出すと、空中に静止していた六つの武器が吸い寄せられ、飲み込まれていく。

「……先手を打たれたか。だが……」
「ギヒャヒャヒャヒャー! あの女共強すぎるぜ。だったら本体狙っちまえばいいのよ! おめえから
食らってやるぜ!」
「支配する汝の刻限」

 背後から近づいて襲おうとしていたダンタリオンは、自らの複数ある顔だけが前に出て、胴体は
後方にあるままだった。
 己自身の体がバラバラに動き出し、意味の無い攻撃が空を切る。

「ぎゃは! どうなってやがる。なんで体がこっちへこねえ?」
「時は不可逆。貴様の行いもまた、不可逆だ。弾き飛べ、時空流裏ジクウルリ

 別々に行動していた体がそれぞれ弾かれるように吹き飛び、消えてしまう。
 亜空間送りだな、ありゃ。
 下卑た笑いをするやつには容赦なくってとこか。
 まぁダンタリオンなら呼びつければまた来るが……まじいな。あの三姉妹を
デカラビアだけじゃ防ぎきれねえ。

「やっぱもう、勝負を決めるしかねえ」
「来い。十分に余暇は楽しんだろう。時の強さを受けるがいい……。
「こっちも負けてられねえんだよ! 。
レヴナント死から戻りゆくカタストロフィ変革の一撃

 片腕が主砲となり、相手を貫く程の一撃を放つ。それは闇を纏うルーニーと共に
アルカーンへと一気に押し寄せる。
 こいつには撃っても撃っても攻撃があたらねえ。
 全てすんでのところで止められちまう。
 だが無限に止められるはずもねえ。
 それにこちらが攻撃を行うタイミングの時は、見えざる幻手は動かねえ。

「何度やっても同じことだ。その攻撃は……」
「リーサル・レデク!」

 ギリギリとコラーダが手を離れ、一直線にアルカーンを襲う。しかしこの一撃はアルカーンではなく
三姉妹の内の一名がデカラビアとの戦いから離脱し、身代わりとなって受け、消滅した。

「……? 何だ今の違和感は」
「その技は時を超える。止める事は恐らく叶わん。受け止める、防ぐなどの方法以外ではな」

 だが決定打にはなっていない。仮に同じ事ができたとしても、後の二名がそれを防げるということだ。
 デカラビアではあの姉妹を消滅させられないだろう。なら……どうするか。
 打つ手を考えていると、ルーニーから突如黒い羽根の生えた四十一の鳥が飛び立つ。

「あれは……バラムの四十一のガァスホォークか!」

 無数の黒い鳥はアルカーンに向けて一斉にとびかかる。
 闇そのものを止める事はできないのだろう。
 煩わしそうにそれらを回避しつつ、デカラビアへ対峙していた二姉妹が鳥を追い払いだす。

「交われ、ティソーナ、コラーダよ。俺に力を貸せ。絶神剣ティラーナ、その姿を現せ」

 二つの剣は交わり、、紫色の超長曲刀を握りしめる。
 
「よく聞きやがれアルカーン! おめえはリルやサラに、だましているような感覚をずっと持っているのかもしれねえ。詫びたい気持ちもあるかもしれねえ。だがな……あいつらにとっちゃおめえがアルカーンだろうが、管理者だろうが関係ねえ。ここまであいつらを成長させたのはおめえだろ! だからな……おめえの感じる罪を俺が断ち切ってやるよ……いくぜ!」

 四メートルもあるティラーナを、直接アルカーンにむけ斬りにいく。
 その直線状には四十一のガァスフォークのうち二匹がいて、俺の時を止める行動を封じる。

「ふふふ……時の管理者を断ずる剣。受けてやろう。時空……」
「お兄ちゃん、もうやめて! お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
「断罪の剣 コンビクシオン!」

 サラは、アルカーンが神・真化してからずっと叫んでいた。
 俺の話を聞いて、ようやく気が付いたのかもしれない。
 そして力を抜いた瞬間、俺の断罪の剣は、アルカーンへと深く刻まれた。

「お兄ちゃーーーーん!」
「貴様の……勝ちだ……」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【スキルコレクター】は異世界で平穏な日々を求める

シロ
ファンタジー
神の都合により異世界へ転生する事になったエノク。『スキルコレクター』というスキルでスキルは楽々獲得できレベルもマックスに。『解析眼』により相手のスキルもコピーできる。 メニューも徐々に開放されていき、できる事も増えていく。 しかし転生させた神への謎が深まっていき……?どういった結末を迎えるのかは、誰もわからない。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

処理中です...