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第四章 シフティス大陸横断
間話 悲しき宿命に終わりなき愛を、アルカーン その三
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そして俺は……別の管理者と接触した。
タルタロス・ネウス。
奴は俺には興味を示さなかった。
管理者として不完全な存在だからなのか。
或いは別の目的あってのことだろうか。
そして奴の存在は……俺よりも強大だった。
神を封じる力を有し、冷静に事を運ぶ。
自らの役割に徹しているように見えた。
だが……危惧することはあった。
一体何千年同じことを繰り返しているのか。
俺であれば気がおかしくなるかもしれん。
そこが未熟さなのかもしれないが……出来るだけ早く、こいつの許から
離れたくなった。
――――久しぶりにフェルス皇国へと戻ると、国民は皆無事。
そして統治はエルフの娘が行っていた。
大したものだと感心した。子供というのはこうも容易く成長するものなのか。
リルやサラではこうもいくまい。そう考えていた。
しかし……リルもサラも結婚していた。
サラは出産もするという。
どちらも……とても幸せそうにしていた。
二人とも、とても嬉しそうに俺へ報告しに来た。
何か作ってやろう、そう思った。
ルインと接触するようになり、俺は兄としての人格を得たのかもしれない。
あいつにも、感謝をしなければ。
俺に出来る事はなんだ? あいつにはかなりの物を作ってやった。
だが、何か足りない。
どのような物を作って渡しても、満たされる事が無い。
ならどうすればいい?
アルカーンとして……いや、もしかしたらそうではないのかもしれん。
あいつは自分をさらけ出して生きている。
俺は自らを隠して生きている。
本当に感謝を示すなら……俺もさらけ出さなければならないのかもしれん。
そして……ある時、地底への道が封鎖された。
普段ならいつでも行く事が可能な地底。
しかしどうあがいても進入する事が出来なかった。
手を尽くしたが……恐らくどこかに開いている道を探さなければ
入る事は叶わないだろう。
あちら側にはフェルドナージュ様やベルローゼ。それにリルもいる。
心配ではあるが、リルはとてもたくましく成長していた。
かつて出会ったフェルドナーガ程度であれば、もう敵ではない。
だが奴自身も成長しているだろう。
鉢合わせたら一体どうなるかと思うと、なぜか辛い感覚を覚えた。
しかしいくら研究しても、地底への道筋は見えなかった。
そんな折、あいつは随分と厄介な者と関り始めていた。
そいつの話では、地底へ向かう術があるという。
他者を頼るのには少々抵抗があるが、背に腹は代えられん。
俺はルインと合流し、地底へ行く事を決意する。
リルを思えば未だに胸がざわつく。
これが……弟を思う感情というものなのかはわからない。
或いはデシアの言ったことを忠実に守ろうとしているだけかもしれない。
だが……ざわつきを止めるためには地底へ向かうしか方法はないだろう。
ただ、俺がアルカーンとして地底へ向かうというのであれば、他者に
反対される可能性はある。
それならルインにだけでも打ち明けておくべきだろう。
それをイネービュが許してくれるのだろうか。
だが、イネービュは既にルインを気に入っていた。
打ち明ければ或いは消滅させられる可能性もあるかもしれない。
だが……もう決めた事だ。
今更考えるまでもない。
俺がアルカーンでないことを告げると……あいつはとても悲しそうな顔をした。
……なぜか嬉しかった。だが、なぜ嬉しいのかがわからん。
しかし、こいつに打ち明けられた事で、俺も嬉しくなった。
今こいつとこのひと時を……大いに楽しもう。
それが今俺にできる全て。
こいうに応えることができる全てだ。
『【真化!】』
タルタロス・ネウス。
奴は俺には興味を示さなかった。
管理者として不完全な存在だからなのか。
或いは別の目的あってのことだろうか。
そして奴の存在は……俺よりも強大だった。
神を封じる力を有し、冷静に事を運ぶ。
自らの役割に徹しているように見えた。
だが……危惧することはあった。
一体何千年同じことを繰り返しているのか。
俺であれば気がおかしくなるかもしれん。
そこが未熟さなのかもしれないが……出来るだけ早く、こいつの許から
離れたくなった。
――――久しぶりにフェルス皇国へと戻ると、国民は皆無事。
そして統治はエルフの娘が行っていた。
大したものだと感心した。子供というのはこうも容易く成長するものなのか。
リルやサラではこうもいくまい。そう考えていた。
しかし……リルもサラも結婚していた。
サラは出産もするという。
どちらも……とても幸せそうにしていた。
二人とも、とても嬉しそうに俺へ報告しに来た。
何か作ってやろう、そう思った。
ルインと接触するようになり、俺は兄としての人格を得たのかもしれない。
あいつにも、感謝をしなければ。
俺に出来る事はなんだ? あいつにはかなりの物を作ってやった。
だが、何か足りない。
どのような物を作って渡しても、満たされる事が無い。
ならどうすればいい?
アルカーンとして……いや、もしかしたらそうではないのかもしれん。
あいつは自分をさらけ出して生きている。
俺は自らを隠して生きている。
本当に感謝を示すなら……俺もさらけ出さなければならないのかもしれん。
そして……ある時、地底への道が封鎖された。
普段ならいつでも行く事が可能な地底。
しかしどうあがいても進入する事が出来なかった。
手を尽くしたが……恐らくどこかに開いている道を探さなければ
入る事は叶わないだろう。
あちら側にはフェルドナージュ様やベルローゼ。それにリルもいる。
心配ではあるが、リルはとてもたくましく成長していた。
かつて出会ったフェルドナーガ程度であれば、もう敵ではない。
だが奴自身も成長しているだろう。
鉢合わせたら一体どうなるかと思うと、なぜか辛い感覚を覚えた。
しかしいくら研究しても、地底への道筋は見えなかった。
そんな折、あいつは随分と厄介な者と関り始めていた。
そいつの話では、地底へ向かう術があるという。
他者を頼るのには少々抵抗があるが、背に腹は代えられん。
俺はルインと合流し、地底へ行く事を決意する。
リルを思えば未だに胸がざわつく。
これが……弟を思う感情というものなのかはわからない。
或いはデシアの言ったことを忠実に守ろうとしているだけかもしれない。
だが……ざわつきを止めるためには地底へ向かうしか方法はないだろう。
ただ、俺がアルカーンとして地底へ向かうというのであれば、他者に
反対される可能性はある。
それならルインにだけでも打ち明けておくべきだろう。
それをイネービュが許してくれるのだろうか。
だが、イネービュは既にルインを気に入っていた。
打ち明ければ或いは消滅させられる可能性もあるかもしれない。
だが……もう決めた事だ。
今更考えるまでもない。
俺がアルカーンでないことを告げると……あいつはとても悲しそうな顔をした。
……なぜか嬉しかった。だが、なぜ嬉しいのかがわからん。
しかし、こいつに打ち明けられた事で、俺も嬉しくなった。
今こいつとこのひと時を……大いに楽しもう。
それが今俺にできる全て。
こいうに応えることができる全てだ。
『【真化!】』
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