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第四章 シフティス大陸横断

第六百九十一話 団子屋モギにて

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「……落ち着いたか」
「いや全然」
「追加でに十本頼む。んで何でおめえらが団子屋手伝ってんだ?」
「雇ってもらっただ! 世界一美味い団子をベリアルに食べさせるだ!」
「そもそもお主がいったんだろう。団子くらい作れるようになれと」
「あー、そうだったかもな。働くのはいいことじゃねえか。おめえら大食女共を遊ばせておくわけには
いかねえしな」
「いいんですかルインさん? こんな可愛い子たちをうちで働かせても?」
「こき使って構わねえがその分すげえ食うぞ」
「それが、この団子屋凄い人気で。お店を大きくしようと今新しいのをムーラさんに頼んで建設中
なんです! 人手の補充がモラコ族たちだけじゃ足りなくて……とっても助かります!」
「ついでに沖虎、彰虎を仕入れにでも雇ってやってくれ。彰虎は外出中だが、時期に戻るはずだ」
「何か、新しいお仲間沢山増えたんですね。本当、素敵です」
「ちなみにおめえの言うルインは俺とはちょっと違ぇからな。まぁ説明がだるいからルインで構わねえが」
「……?」

 団子屋モギとは古い知り合いだったな。
 ベルディスか……あれとも戦ってみてえがあいつはスキアラの許で修行中だったな。
 うっかり名前を出すような質問がこねえことを祈りてぇもんだ。

「おいアメーダ。シカリーはまだ来てねぇのか?」
「いいえ、既に領域は繋げてありますからとっくに来ていてもおかしくはないのでございますが……
シカリー様は体を入れ替えて遊ぶ趣味がございまして。どのような形相をとっておられるか」

 盛大に茶を噴き出すプリマ。
 どうしたんだ? 

「おいイネービュ。いい加減にしろ!」
「んー? 何をそんなに怒ってるんだい?」
「何で茶を飲んで睨んでたらそんな変な顔するんだ! 噴き出しただろう!」
「……こいつら、案外仲悪くねえんじゃねえか……」
「ところでベリアルの方だよね。どう? ブレディー復活のための鍵は、手に入れかい?」
「……ああ、一応な。だがよ。王女を戻さねえと闇の知識は手に入らねえだろ」
「おや? アメーダに憑いてる彼女は……ふふふ、そういうことか。次の目的地はシフティス大陸東だね」
「めんどくせぇがそうなるな。シカリーの要件もそこと同じ場所だろ。部分的肉体の再構成……新しく
作っちまった方が手っ取り早いと思うが」
「そうもいかないんだよ。神の遣いですら新しい情報を作らず元の形に肉体を戻すのは厳しい事だ。
情報がずれるからね。しかし――――」
「おい。プリマを無視して話をするな。殺すぞ」
「だから殴り合い殺し合いはだめだっていってるだろうが……」
「あれ、そうだった。これは癖だ」
「……はぁ。別におめえを無視してるわけじゃねえ。ただシカリー側の依頼、それとこちら側の目的が
一致してんだよ。それでシフティス大陸を横断する必要があるってわけだ」
「そうか。ならプリマも行ってやる」
「いや、ついてくんな」
「そうか。ならプリマも行ってやろう」
「ほぼ言い方変わってねえし……つれていかねえって」
「なら、勝手について行こう」
「……無駄でございます。どうやら相当気に入られたようでございますね……」
「うふふ。彼の魅力はこんなものじゃないよ。きっとシカリーだって手なずけるだろうね」
「よからぬことを言うんじゃねえ……はぁ。出来る限り少人数で行きてえんだよ」
「あの橋が目立つからでございますね」
「そういうことだ。おめえが歪術で一瞬にして目的地まで連れてってくれてもいいんだぜ?」
「それは無理だ。プリマの管轄できる場所でなら使える。でもそれ以外でやると……そうだな。
世界が半分程ちぎれるかもしれないが、いいか?」

 何言ってんだこいつは。いいわけねえだろ。ふざけてるのか? ルインの奴はよくこんなのと
まともな状態で喋ってられたな。

「君は随分と気が短い方だねぇ」
「それをプリマが言うのかい?」
「ああん? イネービュ、殺すぞ」
「おい!」
「あ、ダメなんだった。後でロブロードで負かせてやるよ」
「それは返り討ち確定だね。うんうん」
「おめえらな……それでまだ領域は繋がらないのかよ、プリマ」
「どうだろう。繋がったら勝手にこちら側に来るだろうから。ちなみに沢山食糧を投げ入れてたみたい
だけど、どんな形で彼らに届いてたかわからないからね」
「さらに嫌な台詞を残すんじゃねえ……おいナナー。団子十皿追加だ」
「まだ食べるのでございますね……」
「食わねえとやってられねえ! あん? 誰か来たな……あいつは……」

 青い鎧を身に着け、赤いマントをなびかせる初老の男性。片目は切り傷で塞がりいかにも歴戦の
戦士といったいで立ちの男が、数人の男を連れて入って来た。
 そのうちの一人に見覚えがある。

「よう。死霊族用の武器、ちったぁ役に立ったか」
「シー……いや、ベリアル……か。ああ、お陰で多少は認められたようだ」
「お、プリマに一発攻撃を当てたやつだ。あいつの事だったのか、お前の言うミズガルドってやつは」
「すまない。心配かけちまっただけじゃなく、助けられたみたいだな……」
「ふん。礼なら後でこいつらに言うんだな。俺は何もしてねえよ。さて、そっちがヨーゼフって
奴で間違いねえんだな。役者は……揃ったってとこか。場所変えるぜ」
「待て……」
「あん? おめえ、ヨーゼフだろ」
「確かにわしはヨーゼフだ。だがな……団子、くれんか?」
「……ちゃんと持ってくよ。ナナー、ビュイ。後でルーンの安息所まで団子持ってこい。
金は置いてくからよ」

 ついに対面することになったヨーゼフ。果たしてどのような人物なのか……。
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