771 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断
第六百九十一話 団子屋モギにて
しおりを挟む
「……落ち着いたか」
「いや全然」
「追加でに十本頼む。んで何でおめえらが団子屋手伝ってんだ?」
「雇ってもらっただ! 世界一美味い団子をベリアルに食べさせるだ!」
「そもそもお主がいったんだろう。団子くらい作れるようになれと」
「あー、そうだったかもな。働くのはいいことじゃねえか。おめえら大食女共を遊ばせておくわけには
いかねえしな」
「いいんですかルインさん? こんな可愛い子たちをうちで働かせても?」
「こき使って構わねえがその分すげえ食うぞ」
「それが、この団子屋凄い人気で。お店を大きくしようと今新しいのをムーラさんに頼んで建設中
なんです! 人手の補充がモラコ族たちだけじゃ足りなくて……とっても助かります!」
「ついでに沖虎、彰虎を仕入れにでも雇ってやってくれ。彰虎は外出中だが、時期に戻るはずだ」
「何か、新しいお仲間沢山増えたんですね。本当、素敵です」
「ちなみにおめえの言うルインは俺とはちょっと違ぇからな。まぁ説明がだるいからルインで構わねえが」
「……?」
団子屋モギとは古い知り合いだったな。
ベルディスか……あれとも戦ってみてえがあいつはスキアラの許で修行中だったな。
うっかり名前を出すような質問がこねえことを祈りてぇもんだ。
「おいアメーダ。シカリーはまだ来てねぇのか?」
「いいえ、既に領域は繋げてありますからとっくに来ていてもおかしくはないのでございますが……
シカリー様は体を入れ替えて遊ぶ趣味がございまして。どのような形相をとっておられるか」
盛大に茶を噴き出すプリマ。
どうしたんだ?
「おいイネービュ。いい加減にしろ!」
「んー? 何をそんなに怒ってるんだい?」
「何で茶を飲んで睨んでたらそんな変な顔するんだ! 噴き出しただろう!」
「……こいつら、案外仲悪くねえんじゃねえか……」
「ところでベリアルの方だよね。どう? ブレディー復活のための鍵は、手に入れかい?」
「……ああ、一応な。だがよ。王女を戻さねえと闇の知識は手に入らねえだろ」
「おや? アメーダに憑いてる彼女は……ふふふ、そういうことか。次の目的地はシフティス大陸東だね」
「めんどくせぇがそうなるな。シカリーの要件もそこと同じ場所だろ。部分的肉体の再構成……新しく
作っちまった方が手っ取り早いと思うが」
「そうもいかないんだよ。神の遣いですら新しい情報を作らず元の形に肉体を戻すのは厳しい事だ。
情報がずれるからね。しかし――――」
「おい。プリマを無視して話をするな。殺すぞ」
「だから殴り合い殺し合いはだめだっていってるだろうが……」
「あれ、そうだった。これは癖だ」
「……はぁ。別におめえを無視してるわけじゃねえ。ただシカリー側の依頼、それとこちら側の目的が
一致してんだよ。それでシフティス大陸を横断する必要があるってわけだ」
「そうか。ならプリマも行ってやる」
「いや、ついてくんな」
「そうか。ならプリマも行ってやろう」
「ほぼ言い方変わってねえし……つれていかねえって」
「なら、勝手について行こう」
「……無駄でございます。どうやら相当気に入られたようでございますね……」
「うふふ。彼の魅力はこんなものじゃないよ。きっとシカリーだって手なずけるだろうね」
「よからぬことを言うんじゃねえ……はぁ。出来る限り少人数で行きてえんだよ」
「あの橋が目立つからでございますね」
「そういうことだ。おめえが歪術で一瞬にして目的地まで連れてってくれてもいいんだぜ?」
「それは無理だ。プリマの管轄できる場所でなら使える。でもそれ以外でやると……そうだな。
世界が半分程ちぎれるかもしれないが、いいか?」
何言ってんだこいつは。いいわけねえだろ。ふざけてるのか? ルインの奴はよくこんなのと
まともな状態で喋ってられたな。
「君は随分と気が短い方だねぇ」
「それをプリマが言うのかい?」
「ああん? イネービュ、殺すぞ」
「おい!」
「あ、ダメなんだった。後でロブロードで負かせてやるよ」
「それは返り討ち確定だね。うんうん」
「おめえらな……それでまだ領域は繋がらないのかよ、プリマ」
「どうだろう。繋がったら勝手にこちら側に来るだろうから。ちなみに沢山食糧を投げ入れてたみたい
だけど、どんな形で彼らに届いてたかわからないからね」
「さらに嫌な台詞を残すんじゃねえ……おいナナー。団子十皿追加だ」
「まだ食べるのでございますね……」
「食わねえとやってられねえ! あん? 誰か来たな……あいつは……」
青い鎧を身に着け、赤いマントをなびかせる初老の男性。片目は切り傷で塞がりいかにも歴戦の
戦士といったいで立ちの男が、数人の男を連れて入って来た。
そのうちの一人に見覚えがある。
「よう。死霊族用の武器、ちったぁ役に立ったか」
「シー……いや、ベリアル……か。ああ、お陰で多少は認められたようだ」
「お、プリマに一発攻撃を当てたやつだ。あいつの事だったのか、お前の言うミズガルドってやつは」
「すまない。心配かけちまっただけじゃなく、助けられたみたいだな……」
「ふん。礼なら後でこいつらに言うんだな。俺は何もしてねえよ。さて、そっちがヨーゼフって
奴で間違いねえんだな。役者は……揃ったってとこか。場所変えるぜ」
「待て……」
「あん? おめえ、ヨーゼフだろ」
「確かにわしはヨーゼフだ。だがな……団子、くれんか?」
「……ちゃんと持ってくよ。ナナー、ビュイ。後でルーンの安息所まで団子持ってこい。
金は置いてくからよ」
ついに対面することになったヨーゼフ。果たしてどのような人物なのか……。
「いや全然」
「追加でに十本頼む。んで何でおめえらが団子屋手伝ってんだ?」
「雇ってもらっただ! 世界一美味い団子をベリアルに食べさせるだ!」
「そもそもお主がいったんだろう。団子くらい作れるようになれと」
「あー、そうだったかもな。働くのはいいことじゃねえか。おめえら大食女共を遊ばせておくわけには
いかねえしな」
「いいんですかルインさん? こんな可愛い子たちをうちで働かせても?」
「こき使って構わねえがその分すげえ食うぞ」
「それが、この団子屋凄い人気で。お店を大きくしようと今新しいのをムーラさんに頼んで建設中
なんです! 人手の補充がモラコ族たちだけじゃ足りなくて……とっても助かります!」
「ついでに沖虎、彰虎を仕入れにでも雇ってやってくれ。彰虎は外出中だが、時期に戻るはずだ」
「何か、新しいお仲間沢山増えたんですね。本当、素敵です」
「ちなみにおめえの言うルインは俺とはちょっと違ぇからな。まぁ説明がだるいからルインで構わねえが」
「……?」
団子屋モギとは古い知り合いだったな。
ベルディスか……あれとも戦ってみてえがあいつはスキアラの許で修行中だったな。
うっかり名前を出すような質問がこねえことを祈りてぇもんだ。
「おいアメーダ。シカリーはまだ来てねぇのか?」
「いいえ、既に領域は繋げてありますからとっくに来ていてもおかしくはないのでございますが……
シカリー様は体を入れ替えて遊ぶ趣味がございまして。どのような形相をとっておられるか」
盛大に茶を噴き出すプリマ。
どうしたんだ?
「おいイネービュ。いい加減にしろ!」
「んー? 何をそんなに怒ってるんだい?」
「何で茶を飲んで睨んでたらそんな変な顔するんだ! 噴き出しただろう!」
「……こいつら、案外仲悪くねえんじゃねえか……」
「ところでベリアルの方だよね。どう? ブレディー復活のための鍵は、手に入れかい?」
「……ああ、一応な。だがよ。王女を戻さねえと闇の知識は手に入らねえだろ」
「おや? アメーダに憑いてる彼女は……ふふふ、そういうことか。次の目的地はシフティス大陸東だね」
「めんどくせぇがそうなるな。シカリーの要件もそこと同じ場所だろ。部分的肉体の再構成……新しく
作っちまった方が手っ取り早いと思うが」
「そうもいかないんだよ。神の遣いですら新しい情報を作らず元の形に肉体を戻すのは厳しい事だ。
情報がずれるからね。しかし――――」
「おい。プリマを無視して話をするな。殺すぞ」
「だから殴り合い殺し合いはだめだっていってるだろうが……」
「あれ、そうだった。これは癖だ」
「……はぁ。別におめえを無視してるわけじゃねえ。ただシカリー側の依頼、それとこちら側の目的が
一致してんだよ。それでシフティス大陸を横断する必要があるってわけだ」
「そうか。ならプリマも行ってやる」
「いや、ついてくんな」
「そうか。ならプリマも行ってやろう」
「ほぼ言い方変わってねえし……つれていかねえって」
「なら、勝手について行こう」
「……無駄でございます。どうやら相当気に入られたようでございますね……」
「うふふ。彼の魅力はこんなものじゃないよ。きっとシカリーだって手なずけるだろうね」
「よからぬことを言うんじゃねえ……はぁ。出来る限り少人数で行きてえんだよ」
「あの橋が目立つからでございますね」
「そういうことだ。おめえが歪術で一瞬にして目的地まで連れてってくれてもいいんだぜ?」
「それは無理だ。プリマの管轄できる場所でなら使える。でもそれ以外でやると……そうだな。
世界が半分程ちぎれるかもしれないが、いいか?」
何言ってんだこいつは。いいわけねえだろ。ふざけてるのか? ルインの奴はよくこんなのと
まともな状態で喋ってられたな。
「君は随分と気が短い方だねぇ」
「それをプリマが言うのかい?」
「ああん? イネービュ、殺すぞ」
「おい!」
「あ、ダメなんだった。後でロブロードで負かせてやるよ」
「それは返り討ち確定だね。うんうん」
「おめえらな……それでまだ領域は繋がらないのかよ、プリマ」
「どうだろう。繋がったら勝手にこちら側に来るだろうから。ちなみに沢山食糧を投げ入れてたみたい
だけど、どんな形で彼らに届いてたかわからないからね」
「さらに嫌な台詞を残すんじゃねえ……おいナナー。団子十皿追加だ」
「まだ食べるのでございますね……」
「食わねえとやってられねえ! あん? 誰か来たな……あいつは……」
青い鎧を身に着け、赤いマントをなびかせる初老の男性。片目は切り傷で塞がりいかにも歴戦の
戦士といったいで立ちの男が、数人の男を連れて入って来た。
そのうちの一人に見覚えがある。
「よう。死霊族用の武器、ちったぁ役に立ったか」
「シー……いや、ベリアル……か。ああ、お陰で多少は認められたようだ」
「お、プリマに一発攻撃を当てたやつだ。あいつの事だったのか、お前の言うミズガルドってやつは」
「すまない。心配かけちまっただけじゃなく、助けられたみたいだな……」
「ふん。礼なら後でこいつらに言うんだな。俺は何もしてねえよ。さて、そっちがヨーゼフって
奴で間違いねえんだな。役者は……揃ったってとこか。場所変えるぜ」
「待て……」
「あん? おめえ、ヨーゼフだろ」
「確かにわしはヨーゼフだ。だがな……団子、くれんか?」
「……ちゃんと持ってくよ。ナナー、ビュイ。後でルーンの安息所まで団子持ってこい。
金は置いてくからよ」
ついに対面することになったヨーゼフ。果たしてどのような人物なのか……。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
女王直属女体拷問吏
那羽都レン
ファンタジー
女王直属女体拷問吏……それは女王直々の命を受けて、敵国のスパイや国内の不穏分子の女性に対して性的な拷問を行う役職だ。
異世界に転生し「相手の弱点が分かる」力を手に入れた青年セオドールは、その能力を活かして今日も囚われの身となった美少女達の女体の弱点をピンポイントに責め立てる。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる