異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー

文字の大きさ
上 下
760 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第六百八十一話  死霊のプリマ

しおりを挟む
 翌朝起きると、目の前には明るい食卓が広がっていた――――あれ? 夢をみているのか? 
 と思ったら、夢ではなく現実。
 アメーダがいつのまにか現れて、朝早くから支度をしていたらしい。
 ナナーとビュイが争いながら食事をかきこんでいる。

「おはようございます。お食事のご用意ができておりますが、先に水浴びでもいかがでございますか?」
「新婚夫婦のやり取りみたいなのはよしてくれ。泉の方は無事に済んだか?」
「ええ、滞りなく。こちらの崩落現象についても調べて参りました。
それよりあなた様。空の旅はいかがでございましたか? ――――ああ、そちらの石は差し上げます。
二つは使用済みでございますから、ただの石でございますよ」
「使い切りだったのか。貴重なものじゃないのか?」
「そうでもございません。あなた様のお知り合いにもこういった術がお使いになれる方がいるのでございましょう?」
「コーネリウスの事か……本当によく知っているな」
「そうでございますね。巧みに隠蔽された情報でもない限り、知る事は難儀ではございません。
それよりも、席に着いて欲しいのでございます」
「わかったよ……あれ? このスープ……」

 俺は見覚えのあるスープに驚いた。そこに出されていたのは紛れもない……ミソスープならぬ味噌汁だ。

「これをどうやって作ったんだ?」
「カル豆というものを煮詰め、発酵していった段階のものを用いているのでございますよ」
「……どう見ても味噌汁だが、味が全然違うな。これはこれでいいと思う」
「やはりあなた様はこれに近しいものをご存知なのですね……うふふふ……あなた様の勝ちはやはり、計り知れないものでございます」
「味噌汁を知っているだけでか?」
「いいえ、そちらではございません。あなた様は味が全然違うと。つまりもっと美食を知るということ
でございましょう」
「確かに料理は好きだ。あらゆるものを作ってみたことがある。視覚がない分味覚が鋭かったのか、自分の
気に入る料理を作りたかったんだ」
「世界を滅ぼせるものが、なぜ世界を滅ぼさないか、考えた事はりますでございましょうか?」
「世界を滅ぼすものが、世界を滅ぼさない理由……?」

 思い当たる節はある。それは家族であり権力であり象徴。
 優しい気持ちがあるから……などという事ではない。
 娯楽があるからだ。

「そしてあなた様はそれらを提供できる……いわば破壊者にとっての玩具……となりうるのでございますよ」
「だがそうすると……待てよ。俺以外にも転生者はいるんだよな。それが、ヨーゼフ? 狙われた?」
「お察しがいいのでございますね。あの崩落は自然現象ではございません。確実に狙われたということで
ございます。つまりは危険な状態にある……こちらで一晩休まれたのは実に正解でございました」
「急いで全員集めないと!」
「安心して欲しいのでございます。危険なのは崩落の先。下のものを助けるとなればそれ相応の
危険も生じるのでございましょうが……」
「俺はビーを見捨てたりはしない。それに、ヨーゼフに会わなければならないんだ」
「それこそが、あなた様でございますね。いいでしょう。最悪の場合、無理やりにでも連れ帰るのでございます」
「お前がそう思うほど、まずい相手なのか」
「死霊族についてはお話を少ししたと思いますが覚えておいででございますか?」
「ああ。メルザと同じ原初の幻魔……アルカイオスの流れをくむものの死霊……だったか?」
「その通りでございます。その中にシカリー様やアメーダも含まれるのでございますが……
それ以外の者。原初の幻魔、死霊のプリマ。あの崩落はその者による行動の可能性が高いのでございます」
「プリマ……? 初めて聞く名前だな」

 その後アメーダに、詳しい話を聞いた。
 プリマとは良好な関係ではないこと。未だゲンドールを今の形にした絶対神に恨みを持つ事。
 現状敵対するのが好ましくない事など。

「ここで考えていてもわからないし、現地へ向かおう」
「そうでございますね。それでは早急に支度を整えるのでございます」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

7人のメイド物語

モモん
ファンタジー
理不尽な人生と不自由さ…… そんな物語を描いてみたいなと思います。 そこに、スーパーメイドが絡んで……ドタバタ喜劇になるかもしれません。

処理中です...