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第四章 シフティス大陸横断
第六百七十九話 雪山の麓で
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空高く飛んでいた俺は、ゆっくりと高度を下げつつ、ルーニーに位置調整をしてもらう。
山頂付近に鳥が多く見受けられるので、警戒はしていたがひとまず襲われる気配はない。
もし襲われたなら無防備。セーレかサーシュに頼らないと、空の旅は不安だ。
「ルーニー。いきなり地上に降りるのは不安があるし、あの山の上……下がよくみえそうな
場所に降りようと思う。迎えるか?」
「ホロロロー!」
俺の意思を理解してくれたのか、真っ白い山の上部に降ろしてもらうよう指示をした。
やはり降雪地帯なだけあって、気温はかなり低い。
少しなだらかな斜面へと降り立つ。すぐさま辺りを警戒するが、今のところモンスターは見受けられない。
比較的安全な場所だからこの山の麓に滞在したのか?
上空からだとジェネストたちの所在地はわからなかったが……この場所で間違いないはずだ。
いるとしたら麓のどこかにいるはず。
しかしビーたちはこの場所で一体どうしているんだろうか。
ヨーゼフという人物を迎えにいったはずなのだが……。
「寒いなここは。早めに下山しよう。ルーニー、ありがとうな」
「ホロロロー」
ここまで導いてくれたルーニーをひと撫でし、剣へと戻す。
雪山を一緒に下山したいのか、ビュイとナナーが外に出て歩き始めた。
「綺麗な場所だ。ちょっと食べ物探しにいってくるだ!」
「うむ。土産が必要だろう? 少し山のものを取ってこよう」
「気をつけろよ。このあたりにもモンスターはいるかもしれないし。危なかったら
すぐ戻ってくるんだぞ」
『はーい』
二人は駆け足で周囲を探り始める。
この二人は本当に仲がいいな。子供を育てる親ってのはこんな気分なんだろうか。
雪山ではしゃく二人の子供……なるほど。
俺は空高く飛んでいる時からずっと子供の名前を考えていた。
親は子に願いを込めて名前をつける。散々頭を悩ませる……か。
頑固おやじなら一郎次郎三郎でいくのかもしれない。
だがそんな時代の頑固おやじでも、健康に育って欲しいという願いから郎をつけるのだろう。
それほど前世の昔の時代は生きるのが大変だった。
医療の発展以降急速に一郎さんや太郎さんが減ったのは、そういった理由があってのことだろう。
また子がつく女性が著しく多かった時代は、皇族の女性の名前には子が贈られて
いたため、あやかりたかったのかもしれない。
俺の願いはなんだろうか。陰ながら支え、助けてくれた仲間。
信頼し、行動し、共に過ごすかけがえのない者たち……。
しかし俺が仮に全員に助とつけたら猛烈に怒られる気がしてならない。
「やっぱ、難しいよな……最初に一郎やら勘九郎やらつけてた人って適当なのにいい名前とか
凄いな……」
雪を滑るようにナナーとビュイの後を追うと、二人とも、なんと狩りをしていた。
食用と思われる果物や、ビュイにいたっては川魚のようなものを担いでいる。
いつのまにとってきたんだ? 確かに小さな小川が山の麓方面に流れているけど。
「お土産とってきただ! 甘くて酸っぱいだ!」
「木苺か? いや、色が黄色だな……二人とも、寒くないのか?」
「平気だ。幻魔界にももっと寒い時期があっただ」
「こんな場所、幻魔界に比べれば優しい環境だぞ。ずっとずっと生きるのが大変な場所だった」
「そうか……俺にはここですら過酷に感じるのに。お前たちは本当に苦労して生きていたんだな」
だが二人ともそういっても目を見合わせて笑っていた。
「全然だ。楽しくは無かったけど苦労はしてないだ」
「うむ。ちっとも楽しくはないが苦労はせぬな」
「……? どういうことかわからないが、今はそれより早く下山を……」
そう考えていると、山間を凄い勢いで駆けあがってくる者が目に映る。
あれは……沖虎か。どうやら無事だったようだ。
「主殿! ルジリトの命でお迎えに上がりました。しかしお早いご到着でしたな」
「色々あって、空を飛んで来たんだ。見えたのか?」
「ルジリトより伺いましたぞ。空をおかしな形で飛ぶ主殿が見えると。
彰虎は来ておりませんか?」
「来たのは俺とナナーとビュイだけだ。彰虎と白丕にはメイズオルガ卿の許へ報告に
向かってもらっている。こっちは全員、無事か?」
「それが……少々困った事になっておりまして。まもなく日が暮れます。
ひとまず下山いたしましょう。お乗りください」
「ナナー、ビュイ。一度封印に戻れ。食べ物は俺が預かるから」
二人から食料を預かると、沖虎に乗せられ下山を開始する。
登ってくるより降りる方が大変だろうと、気を遣おうとしたら
問題ないと断られた。
「なぁ沖虎。白丕とは姉弟の関係じゃないのか?」
「そうです。白丕は長女、私が長男、彰虎が次男です」
「それでも四幻の一人が白丕なのは何か理由があるのか」
「三つの虎……その物語から生まれたのだという話を、聞いた事があります」
「三つの虎……物語から生まれた……か。やっぱり俺の想像通りなのか……」
ブレディー……バラム・バロムより造られた世界。
それならばやはり――――「賢者の石によるものか……」
闇の衣、闇のオーブ、闇の知識を探しなさい。
賢者の石は闇を飲み込み身にまとう――――だったか。
闇を飲み込む賢者の石……闇から生まれた世界……もしかしたら妖魔界もそのようにして、造られたのかも
しれない。
まだまだ俺にはわからないことが多いな。この大陸ならより多くの事が学べるかもしれない。
まずはヨーゼフと接触しなければ。
山頂付近に鳥が多く見受けられるので、警戒はしていたがひとまず襲われる気配はない。
もし襲われたなら無防備。セーレかサーシュに頼らないと、空の旅は不安だ。
「ルーニー。いきなり地上に降りるのは不安があるし、あの山の上……下がよくみえそうな
場所に降りようと思う。迎えるか?」
「ホロロロー!」
俺の意思を理解してくれたのか、真っ白い山の上部に降ろしてもらうよう指示をした。
やはり降雪地帯なだけあって、気温はかなり低い。
少しなだらかな斜面へと降り立つ。すぐさま辺りを警戒するが、今のところモンスターは見受けられない。
比較的安全な場所だからこの山の麓に滞在したのか?
上空からだとジェネストたちの所在地はわからなかったが……この場所で間違いないはずだ。
いるとしたら麓のどこかにいるはず。
しかしビーたちはこの場所で一体どうしているんだろうか。
ヨーゼフという人物を迎えにいったはずなのだが……。
「寒いなここは。早めに下山しよう。ルーニー、ありがとうな」
「ホロロロー」
ここまで導いてくれたルーニーをひと撫でし、剣へと戻す。
雪山を一緒に下山したいのか、ビュイとナナーが外に出て歩き始めた。
「綺麗な場所だ。ちょっと食べ物探しにいってくるだ!」
「うむ。土産が必要だろう? 少し山のものを取ってこよう」
「気をつけろよ。このあたりにもモンスターはいるかもしれないし。危なかったら
すぐ戻ってくるんだぞ」
『はーい』
二人は駆け足で周囲を探り始める。
この二人は本当に仲がいいな。子供を育てる親ってのはこんな気分なんだろうか。
雪山ではしゃく二人の子供……なるほど。
俺は空高く飛んでいる時からずっと子供の名前を考えていた。
親は子に願いを込めて名前をつける。散々頭を悩ませる……か。
頑固おやじなら一郎次郎三郎でいくのかもしれない。
だがそんな時代の頑固おやじでも、健康に育って欲しいという願いから郎をつけるのだろう。
それほど前世の昔の時代は生きるのが大変だった。
医療の発展以降急速に一郎さんや太郎さんが減ったのは、そういった理由があってのことだろう。
また子がつく女性が著しく多かった時代は、皇族の女性の名前には子が贈られて
いたため、あやかりたかったのかもしれない。
俺の願いはなんだろうか。陰ながら支え、助けてくれた仲間。
信頼し、行動し、共に過ごすかけがえのない者たち……。
しかし俺が仮に全員に助とつけたら猛烈に怒られる気がしてならない。
「やっぱ、難しいよな……最初に一郎やら勘九郎やらつけてた人って適当なのにいい名前とか
凄いな……」
雪を滑るようにナナーとビュイの後を追うと、二人とも、なんと狩りをしていた。
食用と思われる果物や、ビュイにいたっては川魚のようなものを担いでいる。
いつのまにとってきたんだ? 確かに小さな小川が山の麓方面に流れているけど。
「お土産とってきただ! 甘くて酸っぱいだ!」
「木苺か? いや、色が黄色だな……二人とも、寒くないのか?」
「平気だ。幻魔界にももっと寒い時期があっただ」
「こんな場所、幻魔界に比べれば優しい環境だぞ。ずっとずっと生きるのが大変な場所だった」
「そうか……俺にはここですら過酷に感じるのに。お前たちは本当に苦労して生きていたんだな」
だが二人ともそういっても目を見合わせて笑っていた。
「全然だ。楽しくは無かったけど苦労はしてないだ」
「うむ。ちっとも楽しくはないが苦労はせぬな」
「……? どういうことかわからないが、今はそれより早く下山を……」
そう考えていると、山間を凄い勢いで駆けあがってくる者が目に映る。
あれは……沖虎か。どうやら無事だったようだ。
「主殿! ルジリトの命でお迎えに上がりました。しかしお早いご到着でしたな」
「色々あって、空を飛んで来たんだ。見えたのか?」
「ルジリトより伺いましたぞ。空をおかしな形で飛ぶ主殿が見えると。
彰虎は来ておりませんか?」
「来たのは俺とナナーとビュイだけだ。彰虎と白丕にはメイズオルガ卿の許へ報告に
向かってもらっている。こっちは全員、無事か?」
「それが……少々困った事になっておりまして。まもなく日が暮れます。
ひとまず下山いたしましょう。お乗りください」
「ナナー、ビュイ。一度封印に戻れ。食べ物は俺が預かるから」
二人から食料を預かると、沖虎に乗せられ下山を開始する。
登ってくるより降りる方が大変だろうと、気を遣おうとしたら
問題ないと断られた。
「なぁ沖虎。白丕とは姉弟の関係じゃないのか?」
「そうです。白丕は長女、私が長男、彰虎が次男です」
「それでも四幻の一人が白丕なのは何か理由があるのか」
「三つの虎……その物語から生まれたのだという話を、聞いた事があります」
「三つの虎……物語から生まれた……か。やっぱり俺の想像通りなのか……」
ブレディー……バラム・バロムより造られた世界。
それならばやはり――――「賢者の石によるものか……」
闇の衣、闇のオーブ、闇の知識を探しなさい。
賢者の石は闇を飲み込み身にまとう――――だったか。
闇を飲み込む賢者の石……闇から生まれた世界……もしかしたら妖魔界もそのようにして、造られたのかも
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