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第四章 シフティス大陸横断
第六百七十七話 開通
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ルーンの町。長い旅から久しぶりに戻って来た。
変わらない風景、そしてなんだろう、この安堵した感じは。
やっぱり、そうだよな。
「帰る場所があるって、それだけで幸せ……だな」
ここはルーンの町に作成した泉区画の一つだ。
モラコ族たちはいないようだが……ひとまず一度、外へ戻るとするか。
そう思いながら町を遠くから見ていると、ナナーとビュイが待ちきれずに封印から出てきた。
「凄いだ! これがルーンの町! 綺麗なところだ!」
「幻魔界とはまるで違うな。羨ましい場所だ」
「今日からお前たちの家でもある。ここから先は俺がどうにかするから、お前たちは……ん?」
「だめだ。みんなまだ来れてないだ。ナナーたちだけで楽しむわけにはいかないだ」
「その通り。ここまで来れたのは皆の協力があったからだろう?」
「お前たち……子供がそんな無理をしなくても」
「お腹の大きい姉ちゃんたちは置いてくだ。後はナナーたちが頑張るだ」
「ルインよ。わらもナナーたちと同じ意見だ。事情はわらが皆に説明しよう。
ファナたちをこれ以上無理をさせるのはよくないだろう?」
「……ああ。ファナ、サラ、ベルディア、レミ。大丈夫か?」
「うん。大丈夫。子供の名前考えてくれた?」
「当然、私たちの意見もあるから戻ってきたら織り交ぜて決めるのよ」
「実はもう、ゆっくりしか歩けないっしょ。えへへ……」
「レミちゃん、下が見えない……アイドルの体系じゃないっ!」
「あーははは……も、もちろん考えているとも。それじゃ、ナナー、ビュイ。
俺たちは急いで戻るぞ! ドーグル、四人を先生のところまでよろしくな! 後、パモを頼む。
土産が多いから、確認しておいてくれ」
「任された。ではな」
ナナーとビュイを再び封印すると、水泳飛び込みジャンプで泉に飛び込んだ。
廃鉱山で名前を考えたなんて言ったら怒られると思ってまだ子供の名前、考えていない!
戻る前までに考えておかないと。ちゃんと四人が喜びそうな名前にしないとな……いや、産まれてくる
子供が喜ぶ名前の方が、いいに決まっているか。
名前にはほぼ由来がある。父親らしく、しっかりせねばならない。
――――泉から浮かびあがると、泉の前に座る小さな赤髪の女性が手を貸してくれる。
「どうでございましたか? 少し捻じ曲げて作られた領域のようでございますね」
泉から上がると、骨蔵族だちの領域侵入を許可していく。
ツァーリさんもだ。
この辺りはドーグルやファナたちが説明してくれているはずだ。
でなければアンデッドが攻めてきたと大騒ぎになってしまうだろう。
「そうなのか? 新たに領域を構築するなんて、俺からしてみたら訳が分からないよ」
「そうでございますか? 領域の構築を出来る者が限られているというだけでございます。
この領域の状態をわかりやすく説明いたしますと……」
アメーダの話は難解を極めた……が理解できないわけではなかった。
例えるなら、三つの大きな領域。それらを線で結び付け、毛のような無数の線を
所持している者……つまり許可になるが、これを持った者が領域に入れる。通行手形のようなものだ。
この三つの大きな領域を大きなもう一つの領域で覆いつくすと……
指定の者の許可を消せるらしい。
「だが、どうすればいいんだ? 俺は直接アルケーを見たわけじゃないし、タルタロス
側の使いとかを排除するにもどいつがどいつだかわからないんだが」
「一度地底との通路を完全に絶てばよいのでございます。その上で妖魔の侵入を絶ち、再度
必要に応じて受け入れるだけでございます」
「それは……そうすると妖魔の国に行けなくなるってことだよな」
「いいえ。妖魔の国へは以前お話しました通り、シカリー様の依頼達成後
お連れするのでございます。まずは手を水面にかざして欲しいのでございます。
今はどちらにしても地底への道が封鎖されているので、安心して実行できるので
ございます」
泉に波紋が広がると、アメーダが広がる波紋の上に立つ。
大きく回転しながら泉へと沈み、すぐ浮かびあがった。
「これで滞りなく。それでは引き返し、皆さまをお連れして参るのでございます」
「ああ、急ごう」
「おや。あなた様は他に向かうべき所があるのでございましょう?
鉱山前はアメーダにお任せを。この上部に穴が開いていて、その穴から先にはとても強い風が
吹いているのでございます。
一方通行ではございますが、素早く外へ出られるのでございます」
「だが、空を飛べないといけないんじゃないか?」
「こちらを」
そういって手渡されたのは……なんの変哲も無さそうな石だ。
何だろう? これで空を自由に飛べるというのか? 竹で出来た、頭に装着する首からねじ切れそうなやつじゃなくてか?
「そちらには重術の魔力が付与されているのでございます。両手に持ち、発動させることにより
数刻程、身軽さを得られるのでございます」
持ち方を伝えられ、発動の仕方などのレクチャーを受ける。
そんなに難しくないから出来そうには出来そうだが……。
「方向転換とかは?」
「ご自身の力量次第でございますから、お気を付けて。それでは」
「え? あの、ちょっと……」
それだけ告げると、ニコリと微笑んでアメーダは去っていく。
渡された石は四つ。エプタと二人で行けという事なのだろう。
「俺はいかねえぞ。ブネのところへ戻るからな」
「……そうだよなぁ」
「さっきも言ったがよ。この鉱山は調べる必要があんだよ。んじゃな」
結局俺と、封印内のナナー、ビュイと行くことに。
……全員、無事集まったら一度宴会と自己紹介でもしたいところだ。
変わらない風景、そしてなんだろう、この安堵した感じは。
やっぱり、そうだよな。
「帰る場所があるって、それだけで幸せ……だな」
ここはルーンの町に作成した泉区画の一つだ。
モラコ族たちはいないようだが……ひとまず一度、外へ戻るとするか。
そう思いながら町を遠くから見ていると、ナナーとビュイが待ちきれずに封印から出てきた。
「凄いだ! これがルーンの町! 綺麗なところだ!」
「幻魔界とはまるで違うな。羨ましい場所だ」
「今日からお前たちの家でもある。ここから先は俺がどうにかするから、お前たちは……ん?」
「だめだ。みんなまだ来れてないだ。ナナーたちだけで楽しむわけにはいかないだ」
「その通り。ここまで来れたのは皆の協力があったからだろう?」
「お前たち……子供がそんな無理をしなくても」
「お腹の大きい姉ちゃんたちは置いてくだ。後はナナーたちが頑張るだ」
「ルインよ。わらもナナーたちと同じ意見だ。事情はわらが皆に説明しよう。
ファナたちをこれ以上無理をさせるのはよくないだろう?」
「……ああ。ファナ、サラ、ベルディア、レミ。大丈夫か?」
「うん。大丈夫。子供の名前考えてくれた?」
「当然、私たちの意見もあるから戻ってきたら織り交ぜて決めるのよ」
「実はもう、ゆっくりしか歩けないっしょ。えへへ……」
「レミちゃん、下が見えない……アイドルの体系じゃないっ!」
「あーははは……も、もちろん考えているとも。それじゃ、ナナー、ビュイ。
俺たちは急いで戻るぞ! ドーグル、四人を先生のところまでよろしくな! 後、パモを頼む。
土産が多いから、確認しておいてくれ」
「任された。ではな」
ナナーとビュイを再び封印すると、水泳飛び込みジャンプで泉に飛び込んだ。
廃鉱山で名前を考えたなんて言ったら怒られると思ってまだ子供の名前、考えていない!
戻る前までに考えておかないと。ちゃんと四人が喜びそうな名前にしないとな……いや、産まれてくる
子供が喜ぶ名前の方が、いいに決まっているか。
名前にはほぼ由来がある。父親らしく、しっかりせねばならない。
――――泉から浮かびあがると、泉の前に座る小さな赤髪の女性が手を貸してくれる。
「どうでございましたか? 少し捻じ曲げて作られた領域のようでございますね」
泉から上がると、骨蔵族だちの領域侵入を許可していく。
ツァーリさんもだ。
この辺りはドーグルやファナたちが説明してくれているはずだ。
でなければアンデッドが攻めてきたと大騒ぎになってしまうだろう。
「そうなのか? 新たに領域を構築するなんて、俺からしてみたら訳が分からないよ」
「そうでございますか? 領域の構築を出来る者が限られているというだけでございます。
この領域の状態をわかりやすく説明いたしますと……」
アメーダの話は難解を極めた……が理解できないわけではなかった。
例えるなら、三つの大きな領域。それらを線で結び付け、毛のような無数の線を
所持している者……つまり許可になるが、これを持った者が領域に入れる。通行手形のようなものだ。
この三つの大きな領域を大きなもう一つの領域で覆いつくすと……
指定の者の許可を消せるらしい。
「だが、どうすればいいんだ? 俺は直接アルケーを見たわけじゃないし、タルタロス
側の使いとかを排除するにもどいつがどいつだかわからないんだが」
「一度地底との通路を完全に絶てばよいのでございます。その上で妖魔の侵入を絶ち、再度
必要に応じて受け入れるだけでございます」
「それは……そうすると妖魔の国に行けなくなるってことだよな」
「いいえ。妖魔の国へは以前お話しました通り、シカリー様の依頼達成後
お連れするのでございます。まずは手を水面にかざして欲しいのでございます。
今はどちらにしても地底への道が封鎖されているので、安心して実行できるので
ございます」
泉に波紋が広がると、アメーダが広がる波紋の上に立つ。
大きく回転しながら泉へと沈み、すぐ浮かびあがった。
「これで滞りなく。それでは引き返し、皆さまをお連れして参るのでございます」
「ああ、急ごう」
「おや。あなた様は他に向かうべき所があるのでございましょう?
鉱山前はアメーダにお任せを。この上部に穴が開いていて、その穴から先にはとても強い風が
吹いているのでございます。
一方通行ではございますが、素早く外へ出られるのでございます」
「だが、空を飛べないといけないんじゃないか?」
「こちらを」
そういって手渡されたのは……なんの変哲も無さそうな石だ。
何だろう? これで空を自由に飛べるというのか? 竹で出来た、頭に装着する首からねじ切れそうなやつじゃなくてか?
「そちらには重術の魔力が付与されているのでございます。両手に持ち、発動させることにより
数刻程、身軽さを得られるのでございます」
持ち方を伝えられ、発動の仕方などのレクチャーを受ける。
そんなに難しくないから出来そうには出来そうだが……。
「方向転換とかは?」
「ご自身の力量次第でございますから、お気を付けて。それでは」
「え? あの、ちょっと……」
それだけ告げると、ニコリと微笑んでアメーダは去っていく。
渡された石は四つ。エプタと二人で行けという事なのだろう。
「俺はいかねえぞ。ブネのところへ戻るからな」
「……そうだよなぁ」
「さっきも言ったがよ。この鉱山は調べる必要があんだよ。んじゃな」
結局俺と、封印内のナナー、ビュイと行くことに。
……全員、無事集まったら一度宴会と自己紹介でもしたいところだ。
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