上 下
739 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第六百六十話 従属のピアスはもう必要ない

しおりを挟む
 二十領区付近までは比較的スムーズに来れた。
 ブラックボアやシザーマンティスなど、いわゆるオーソドックスな
モンスターは見受けられたのだが、封印するまでもなくナナーやビュイが倒してしまった。
 シフティス大陸のモンスターはあまり封印していないので、封印したくはあるのだが……いかんせん
封印穴の件に関しては、サラから聞いた話だと時間がかかるようだ。
 なにせアルカーンさんときたら、午前、午後切り分けの時計作りに没頭しすぎていて
殆ど取り合ってもらえなかったらしい。
 ルーニーを返しながら「妹を何だと思ってるのかしら。リルお兄ちゃんは
ちゃんと話を聞いてくれるのに!」といって荒れていたのでそっとしておいた。

 中央のサラたちを見ると、疲れているのかレミ以外は休んでいるように見える。
 レミは俺の方を見ながらにっこり微笑んでいる。
 今のところレミから常闇のカイナの情報をもらっていないが……
そもそもレミはいまいち何を考えているのか、その行動が読めない事が多い。
 例のヨーゼフに会うまで、あちらの事はわからないことだらけだな。
 
 そうこうしている間にメナスとリュシアンが戻ってくる。
 仮面を外していてとてもすっきりしているように見えた。
 心なしか微笑んでいるようにも見え、日の光に映し出される銀色の
風景は、流星のようでとても美しく見える。

「おかえり。知り合いの人はよかったのか?」
「シー……いや、ルイン。私を……どうかこれで家族にして欲しいぞ」

 そう言って指輪を差し出してくるメナス。
 唐突に一体何を言ってるんだ? 

「これで、どうか」
「メナズちゃんを、家族にすて欲しい気持ちは、あたすも同じだ」
「指輪を受け取ると家族に? その指輪にそういった効果があるのか?」
「これは私の家にあった唯一の物。私がメナスとして生まれた唯一の証ぞ。
それを主に献上すれば、従属のピアスよりきっと強い永遠の誓いを……」
「……そのピアス、外せるか?」
「主であれば外せようぞ……私は、もういらないのか? 必要としないのか?」

 物凄く悲しそうな顔になる。
 何か盛大に勘違いしているようだ。

「それ、コーネリウスに信用させるために俺へ服従する力を
付与したものだろ? そんなの、必要ない。それに指輪はメナスの生まれ故郷を示す唯一のものだ。
そんな大事なもの、受け取れるはずがないだろう。指輪は、えっとこれがはまるかな?」

 そういうとメナスの指に、サラたちと同じ指輪をはめてやる。
 あまりの突然の事に驚いてしまって目をぱちくりさせているが、無理もないか。
 シチュエーションも何もあったものじゃないな。

「これは俺の主、そして封印された者へ渡している本当の家族の証みたいなものだ。
でも、俺たちは物で繋がってるんじゃないんだ。お前が俺を守ってくれたように、互いを守り合う
誓いに交わした物……って思ってくれ。メナスは俺を庇い、守ろうとした。そして俺はメナスを庇った。
俺たちは守りあう家族だよ。随分と前からな」
「あたすもそれ、欲すぃけども……まだ守られただけだわぁ」
「ははは、リュシアンにも近いうち渡すんじゃないかな。
でも今はそうすると不公平だろ? 前にいる少女たちが騒ぎ立てるに決まってる。
今は目を瞑っていてくれ」

 嬉しそうにはめられた指輪を空に翳すメナス。
 こんな表情もするんだな。
 全員分の指輪が、実は既に用意してある。でも今は懐で温めておこう。

「……と、話している場合じゃなくなった。さすがにこの集団だ。
モンスターに目を付けられてもおかしくないと思ったが……
左後方よりモンスターの反応、数は四。前にもいるかもしれない。
リュシアン、メナス、戦えるか?」
「勿論ぞ」
「あたすも頑張るよぅ!」

 後ろのモンスターは上空から来る。リュシアンとメナスに任せ、前方に
知らせに行こう。

「バネジャンプ」

 未だに使い勝手のいいこの技で前方へ大きく飛び、ビュイとナナーに
合図を送る。
 いや、その前にイーファ、ドーグル、エプタは動いてるな。

「ごはんだ?」
「お腹すいたぞ」
「違う! 敵襲だ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...