上 下
730 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断

第六百五十一話 道すがらの休憩

しおりを挟む
 火を起こし、ルジリトが華麗に調理しているのを見て、猫眼鬼族というのは
かくも器用なものなのかと驚くばかりだった。
 そのころナナーとビュイの少女二人は、腹を何度か抱えて笑いながらも、丁寧に喋り方を教えている。
 幻奥の青に名前を告げようと伝えた所、それはそれは嬉しそうに何を言っているのか
わからない言葉で返された。
 このままだとさすがに言葉の理解が厳しいので、ビュイとナナーにしっかり
教えてあげるよう頼み込んだのだが……。

 ひとまず三人、仲がよさそうでいいのかな。
 ルジリトと共に調理をしているアメーダもまた、動きが華麗だ。
 これはもしや……自分の事をでくの坊だという王女の調理スキルがあがるのでは!? と思ったが
嫌われているようなので声は掛けづらい。
 そう考えつつも、俺も何もしていないわけではなく、モンスターが襲ってこないか見張りに専念していた。
 
 暫くして料理が完成したようで、ルジリトから声が掛かる。
 
「主殿。間もなく完成します。余分にできたものをパモ殿に収容して頂けると助かります。
なにせビュイ殿もナナー殿もよく食べますからな」
「わかった。しかしパモ、随分と色々収納しているままだけど、大丈夫なのか?」
「ぱーみゅ!」
「そうか。お前は相変わらず俺の癒しだな……」
「ルイン様。こちらの味見をお願いしてもよろしいでございますか?」
「ああ。そのルイン様というのは出来ればよして欲しい……」
「ではどのようにお呼びすればよいのでございますか?」
「そうだな……それじゃシーで」
「シー様ですね」
「う……やっぱりシーサマーみたいに聞こえてしまって違和感が……ツインにしてもらえるか」
「ツイン様ですね。それでは以降、ツイン様とお呼びすることに致しましょう」

 どうにも奇天烈すぎる丁寧語だが、そういう性分なのだろう。
 完成した食事を、切り倒した木で加工した台の上に乗せていくと、次々と消えるようになくなっていく
食事。
 改めて見ると本当にとんでもない大食女たちだ……これを養っていくのは大変だな。

 ……養ってくの、俺か。
 
「ルーンの町に帰ったら、食糧生産の工程を考えないと……」
「ぱみゅ?」
「そのルーンの町というのは実在するのか?」
「妖魔の領域と地上の領域を結び付けた変わった場所という話を聞いただ」
「妖魔国か……いってみたいな。美味しい物が沢山あるんだろうな」
「あたすも行っでみたいけんど、まんず地上のごともわがんね」
「どうしても行きたいようであれば、行けない事もございません。その前にシカリー様の一件を
片づけていただく必要がございます」
「本当か!? 俺の大切な友が戻って来れてないんだ。本当に行けるのか?」

 思わずアメーダを掴んで聞いてしまった。
 はっとして直ぐ手を離す。

「すまない。あまりにも驚いて」
「いいえ、ツイン様は案外大胆なところもございますね。
勿論本当でございます。そのお友だちは、リルカーン様とカノン様、でございますね」
「なぜそれを……」
「死霊族というのはそれだけの力を有する……とだけお伝えしておくのでございます。それ以上の詮索は
どうかご容赦を」
「行けるなら何でもいい。ひとまず町に戻って……」
「封印する場所は足りるのでございますか」
「あ……参ったな。足りないかもしれない」

 町に戻る前に随分と仲間が増えた。
 パモに預けてあるフル装備でも、封印しておける場所が溢れてしまうかもしれない。

「アルカーン様。その名は死霊族の間でも有名でございます。
連絡をつけてみてはいかがでございますか?」
「アルカーンの事まで知っているのか。あの人がなんの条件もなく動いてくれるとは……
はぁ。そんなほいほいと封印穴を増やせたら、妖魔界はおかしくなってしまう」
「ツイン様はただの妖魔ではございません。あなた様を基準にした専用の物を検討すればよいだけでございます」
「それを無条件で作ってくれるような妖魔じゃないって事だ。最近の出来事を踏まえれば多少は
新しい時計作りの案も講じれるが……」

 アメーダの意見を考慮しつつ、食事の後片付けを済ませた俺たちは、アースガルズへ向けて
移動を開始した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

処理中です...