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第四章 シフティス大陸横断

第六百四十二話 自分らしさを取り戻して

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 赤海星の殺戮群は猛吹雪の中でも確実にスノーバウルスを捉え、捕食を始める。
 無慈悲なるその姿は口元を歪め、肉をちぎり食らいつくすまで行動を止めない。
 
「俺の能力向上故か。こいつらも随分強くなったな。
白丕。臆するな。味方だ」
「う……何という恐ろしい術だ……これが、妖魔の持てる術か」
「これは妖魔の術というよりフォーサイトに封印されていた力だ。
普通の妖魔はこんな術、使えない」
「上位に位置する妖魔なら使用できると?」
「いや。恐らく行使できる可能性があるのは俺と……ベルローゼ先生だけだろう。
後はこいつらに任せておけばいい。笛を吹くぞ。傍らにいろ」
「あ、ああ。わかった。いや……臣下の礼をとるならば……わかりました」
「別に畏まる必要はない。お前は仲間だ」
「これはケジメなのです。私があなた様に平伏しなければ、ルジリトも、沖も彰も
あなたに真の意味で服従はせぬでしょう。忠義を受け入れて頂きたい」
「……いいだろう」

 赤海星の殺戮群。
 その恐ろしさを目の当たりにした白丕は、この吹雪の中、冷や汗をかいた。
 本人は微動だにせず、うごめく捕食者を見守っているだけ。
 にもかかわらず、巨体を持つスノーバウルスは次々と捕食されていく。
 自分がスノーバウルスの立場だったらこの術に対処する方法があるのか。
 そう考えただけで鳥肌がたった。

「安心しろ。俺が敵と見定めた者しか襲わない。
これは俺オリジナルの技じゃない。ブネという神の遣いが使用していた術を、見様見真似で
行使した贋作だ。ブネが使用していた時はもっと残忍だったな」
「十分残忍に見えます。寒気が止まらない」
「ふっ……その美しい肌を露出させるな。傷物になるぞ。パモ、服をだしてやれ。
それと笹笛をくれるか?」
「ぱーみゅ!」
「お前は相変わらず可愛いな、パモ……笹だけじゃなく竹もとってきてくれたのか。
ありがとうな」
「ぱみゅ!」

 パモを撫でつつ笹笛を吹き鳴らす。
 昔懐かしい音が、辺り一面に鳴り響く。

「少し吹雪を凌げるものを造るか……もうターゲットに反応もない。
妖氷造形術、アイシクルピラー、アイシクルシーリング」

 氷造形術で氷の柱と天井を構築する。
 四メートル四方の屋根と柱があっという間に構築された。
 
「しかし酷い吹雪だな。皆ここまで来れるかどうか。この現況は……なるほど」
「来たようです。あれは、コーネリウス殿でしたか」
「ほう。あれが王女というのは本当らしい。凄まじい魔の力を感じる」

 真っ先にかけつけたのはコーネリウスと、そのコーネリウスを支える王女ミレーユ。
 ついでナナー、ビュイ、彰もやってくる。
 
「さすが全員優秀だな。やれるかわからないが、ルーニーにこの暴雪の原因を
探ってもらうか。変幻ルーニー! 上空で暴れている正体を探ってくれ」
「ホロロロー!」
「自然現象では無い……と?」
「恐らくな。遠くを少しみてみろ。異常さがわかる」
「あっ! 確かにここへのみ、集中的に降り続けているように見えます!」
「主ー! 戻りましたぜ!」
「あの魔獣、美味しくなかっただ」
「そのまま食べる奴があるか! ああいうのは料理せぬと美味しくないのだぞ。
ルジリトが戻ってきたら料理してもらえばいい」
「お前たち、一度封印に戻れ。これで終わりじゃないはずだ」
「ツイン! 君は無茶しすぎだ。これ以上動けば……」
「案ずるなコーネリウス。真化している間は平気だ。
切れるころにはジェネストが戻って来るだろう。それまで手伝わせろ」
「あ、ああ。君はそんなぶっきらぼうな喋り方だったか?」
「これも真化の影響。久しぶりに単独使用したのでな。少々高ぶりがすぎる」

 そういうと少し口角を吊り上げ、上空を見ると、美しいルーニーが円を描き
こちらへ判断を求めていた。

「いいぞ。お前に任せる。打ち払え!」
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