721 / 1,085
第四章 シフティス大陸横断
第六百四十二話 自分らしさを取り戻して
しおりを挟む
赤海星の殺戮群は猛吹雪の中でも確実にスノーバウルスを捉え、捕食を始める。
無慈悲なるその姿は口元を歪め、肉をちぎり食らいつくすまで行動を止めない。
「俺の能力向上故か。こいつらも随分強くなったな。
白丕。臆するな。味方だ」
「う……何という恐ろしい術だ……これが、妖魔の持てる術か」
「これは妖魔の術というよりフォーサイトに封印されていた力だ。
普通の妖魔はこんな術、使えない」
「上位に位置する妖魔なら使用できると?」
「いや。恐らく行使できる可能性があるのは俺と……ベルローゼ先生だけだろう。
後はこいつらに任せておけばいい。笛を吹くぞ。傍らにいろ」
「あ、ああ。わかった。いや……臣下の礼をとるならば……わかりました」
「別に畏まる必要はない。お前は仲間だ」
「これはケジメなのです。私があなた様に平伏しなければ、ルジリトも、沖も彰も
あなたに真の意味で服従はせぬでしょう。忠義を受け入れて頂きたい」
「……いいだろう」
赤海星の殺戮群。
その恐ろしさを目の当たりにした白丕は、この吹雪の中、冷や汗をかいた。
本人は微動だにせず、うごめく捕食者を見守っているだけ。
にもかかわらず、巨体を持つスノーバウルスは次々と捕食されていく。
自分がスノーバウルスの立場だったらこの術に対処する方法があるのか。
そう考えただけで鳥肌がたった。
「安心しろ。俺が敵と見定めた者しか襲わない。
これは俺オリジナルの技じゃない。ブネという神の遣いが使用していた術を、見様見真似で
行使した贋作だ。ブネが使用していた時はもっと残忍だったな」
「十分残忍に見えます。寒気が止まらない」
「ふっ……その美しい肌を露出させるな。傷物になるぞ。パモ、服をだしてやれ。
それと笹笛をくれるか?」
「ぱーみゅ!」
「お前は相変わらず可愛いな、パモ……笹だけじゃなく竹もとってきてくれたのか。
ありがとうな」
「ぱみゅ!」
パモを撫でつつ笹笛を吹き鳴らす。
昔懐かしい音が、辺り一面に鳴り響く。
「少し吹雪を凌げるものを造るか……もうターゲットに反応もない。
妖氷造形術、アイシクルピラー、アイシクルシーリング」
氷造形術で氷の柱と天井を構築する。
四メートル四方の屋根と柱があっという間に構築された。
「しかし酷い吹雪だな。皆ここまで来れるかどうか。この現況は……なるほど」
「来たようです。あれは、コーネリウス殿でしたか」
「ほう。あれが王女というのは本当らしい。凄まじい魔の力を感じる」
真っ先にかけつけたのはコーネリウスと、そのコーネリウスを支える王女ミレーユ。
ついでナナー、ビュイ、彰もやってくる。
「さすが全員優秀だな。やれるかわからないが、ルーニーにこの暴雪の原因を
探ってもらうか。変幻ルーニー! 上空で暴れている正体を探ってくれ」
「ホロロロー!」
「自然現象では無い……と?」
「恐らくな。遠くを少しみてみろ。異常さがわかる」
「あっ! 確かにここへのみ、集中的に降り続けているように見えます!」
「主ー! 戻りましたぜ!」
「あの魔獣、美味しくなかっただ」
「そのまま食べる奴があるか! ああいうのは料理せぬと美味しくないのだぞ。
ルジリトが戻ってきたら料理してもらえばいい」
「お前たち、一度封印に戻れ。これで終わりじゃないはずだ」
「ツイン! 君は無茶しすぎだ。これ以上動けば……」
「案ずるなコーネリウス。真化している間は平気だ。
切れるころにはジェネストが戻って来るだろう。それまで手伝わせろ」
「あ、ああ。君はそんなぶっきらぼうな喋り方だったか?」
「これも真化の影響。久しぶりに単独使用したのでな。少々高ぶりがすぎる」
そういうと少し口角を吊り上げ、上空を見ると、美しいルーニーが円を描き
こちらへ判断を求めていた。
「いいぞ。お前に任せる。打ち払え!」
無慈悲なるその姿は口元を歪め、肉をちぎり食らいつくすまで行動を止めない。
「俺の能力向上故か。こいつらも随分強くなったな。
白丕。臆するな。味方だ」
「う……何という恐ろしい術だ……これが、妖魔の持てる術か」
「これは妖魔の術というよりフォーサイトに封印されていた力だ。
普通の妖魔はこんな術、使えない」
「上位に位置する妖魔なら使用できると?」
「いや。恐らく行使できる可能性があるのは俺と……ベルローゼ先生だけだろう。
後はこいつらに任せておけばいい。笛を吹くぞ。傍らにいろ」
「あ、ああ。わかった。いや……臣下の礼をとるならば……わかりました」
「別に畏まる必要はない。お前は仲間だ」
「これはケジメなのです。私があなた様に平伏しなければ、ルジリトも、沖も彰も
あなたに真の意味で服従はせぬでしょう。忠義を受け入れて頂きたい」
「……いいだろう」
赤海星の殺戮群。
その恐ろしさを目の当たりにした白丕は、この吹雪の中、冷や汗をかいた。
本人は微動だにせず、うごめく捕食者を見守っているだけ。
にもかかわらず、巨体を持つスノーバウルスは次々と捕食されていく。
自分がスノーバウルスの立場だったらこの術に対処する方法があるのか。
そう考えただけで鳥肌がたった。
「安心しろ。俺が敵と見定めた者しか襲わない。
これは俺オリジナルの技じゃない。ブネという神の遣いが使用していた術を、見様見真似で
行使した贋作だ。ブネが使用していた時はもっと残忍だったな」
「十分残忍に見えます。寒気が止まらない」
「ふっ……その美しい肌を露出させるな。傷物になるぞ。パモ、服をだしてやれ。
それと笹笛をくれるか?」
「ぱーみゅ!」
「お前は相変わらず可愛いな、パモ……笹だけじゃなく竹もとってきてくれたのか。
ありがとうな」
「ぱみゅ!」
パモを撫でつつ笹笛を吹き鳴らす。
昔懐かしい音が、辺り一面に鳴り響く。
「少し吹雪を凌げるものを造るか……もうターゲットに反応もない。
妖氷造形術、アイシクルピラー、アイシクルシーリング」
氷造形術で氷の柱と天井を構築する。
四メートル四方の屋根と柱があっという間に構築された。
「しかし酷い吹雪だな。皆ここまで来れるかどうか。この現況は……なるほど」
「来たようです。あれは、コーネリウス殿でしたか」
「ほう。あれが王女というのは本当らしい。凄まじい魔の力を感じる」
真っ先にかけつけたのはコーネリウスと、そのコーネリウスを支える王女ミレーユ。
ついでナナー、ビュイ、彰もやってくる。
「さすが全員優秀だな。やれるかわからないが、ルーニーにこの暴雪の原因を
探ってもらうか。変幻ルーニー! 上空で暴れている正体を探ってくれ」
「ホロロロー!」
「自然現象では無い……と?」
「恐らくな。遠くを少しみてみろ。異常さがわかる」
「あっ! 確かにここへのみ、集中的に降り続けているように見えます!」
「主ー! 戻りましたぜ!」
「あの魔獣、美味しくなかっただ」
「そのまま食べる奴があるか! ああいうのは料理せぬと美味しくないのだぞ。
ルジリトが戻ってきたら料理してもらえばいい」
「お前たち、一度封印に戻れ。これで終わりじゃないはずだ」
「ツイン! 君は無茶しすぎだ。これ以上動けば……」
「案ずるなコーネリウス。真化している間は平気だ。
切れるころにはジェネストが戻って来るだろう。それまで手伝わせろ」
「あ、ああ。君はそんなぶっきらぼうな喋り方だったか?」
「これも真化の影響。久しぶりに単独使用したのでな。少々高ぶりがすぎる」
そういうと少し口角を吊り上げ、上空を見ると、美しいルーニーが円を描き
こちらへ判断を求めていた。
「いいぞ。お前に任せる。打ち払え!」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
レベルアップしない呪い持ち元神童、実は【全スキル契約済み】 ~実家を追放されるも呪いが無効な世界に召喚され、爆速レベルアップで無双する~
なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆
代々宮廷魔術師を務める名家に庶子として生まれたリーノ、世界に存在する全ての”スキル”を契約し、一躍神童と持ち上げられたがレベルアップ出来ない呪いが
発覚し、速攻で実家を追放されてしまう。
「”スキル辞典”のリーノさん、自慢の魔術を使ってみろよ!」
転がり込んだ冒険者ギルドでも馬鹿にされる日々……めげないリーノは気のいい親友と真面目な冒険者生活を続けていたのだが。
ある日、召喚獣として別世界に召喚されてしまう。
召喚獣らしく目の前のモンスターを倒したところ、突然リーノはレベルアップし、今まで使えなかったスキルが使えるようになる。
可愛いモフモフ召喚士が言うには、”こちらの世界”ではリーノの呪いは無効になるという……あれ、コレってレベルアップし放題じゃ?
「凄いですっ! リーノさんはわたしたちの救世主ですっ!」
「頼りにしてるぜ、リーノ……ふたりで最強になろうぜ!」
こっちの世界でも向こうの世界でも、レベルアップしたリーノの最強スキルが大活躍!
最強の冒険者として成り上がっていく。
……嫉妬に狂った元実家は、リーノを始末しようととんでもない陰謀を巡らせるが……。
訪れた世界の危機をリーノの秘儀が救う?
「これは……神の御業、NEWAZAですねっ!」
「キミを押さえ込みたいんだけど、いいかな?」
「せ、せくはらですっ!」
これは、神童と呼ばれた青年が、呪いの枷から解き放たれ……無数のスキルを駆使して世界を救う物語。
※他サイトでも掲載しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~
すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。
無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』!
クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが……
1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる