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第三章 幻魔界

第六百十六話 沖虎、彰虎の奇襲

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「手厚く歓迎してやれ。ちゅうしょう
「グォ」
「ルォ」

 腕を組む者の脇から突如、巨大な二匹の虎が飛び出てくる。
 片方は美しいいで立ち、煌びやかな装飾を纏う青白い虎。
 もう片方は黒くなびくとさかのようなものを縦になびかせるいかつい虎。

 両者は左右に別れると、勢いよくベリアルへ突進してきた。

「おいおい話し合いもなしかよ。ククク……歓迎されてるねえ。いいぜ、こっちも挨拶してやるよ。
蒼っちょろいのはお前がやれ、ナナー。黒いやつはビュイだ」

 両者を二人に任せて、ベリアルも同じく腕を組み様子を見る。
 その間一度も中央の者から視線を外すことは無い。

 ナナーはベリアルにもらった武器を構え、青白い虎に狙いを定める。
 左右にジグザグと動きを重ねながら移動しているため、そう簡単には狙いが定まらない。

 一方ゲンビュイは黒い虎に走って向かい、格闘戦を挑もうとしている。
 黒虎は迎えうつ気満々で、こちらは一直線に突き進む。
 先にぶつかり合うのがどちらかは明白だった。

「亀死千万、生を消費し生を消す。魔陽花里報来」

 緑色の衝撃波をよけきれないタイミングで放出するゲンビュイ。
 しかし上空へ大きく飛び上がり、上部からゲンビュイに襲いかかろうとする黒虎。

「誰が一発しか出せぬといった。間抜けな虎め。「鶴死億兆、魔を消費し魔を消す。魔陰花里報来!」

 正面に放つ衝撃波から斜めに分岐するようにして、黒虎へ目掛け緑色の衝撃波が炸裂する。
 後方に大きく吹き飛ぶ黒虎は、少しよろけながら直ぐ立ち上がった。

 ナナーの方は苦戦しているようで、まともに当てる事ができずにいる。
 しかし殺傷力の高い攻撃方法のため、青白い虎も攻めきれずにいた。
 こちらはかなり頭脳派らしく、行動はかなり慎重。

 腕を組む者は少し上を見て、見下すような形をとりベリアルを指さす。

「なかなかやるなぁ。その下僕共。そんな主につかえて無いで、こっちへ来いよ。
いい虎にしあげてやる」
「下僕だぁ? こんな大食いを下僕にする気はねえな。
こいつらは部下だ。食った分は働いてもらう。おめえの言う下僕じゃ食いすぎて罪悪感を覚える
事もねえだろ」
「何を言っている? ただ無理やり言うことを聞かせればいいだろう?」
「んなつまんねえことするかよ。いつ裏切るかもわからねえダンタリオンにすら礼くらいは
渡してるんだぜ」
「話が通じぬ輩か。ルジリト。貴様も早くこっちへこい」
「それが……旦那様。こちらの小さな女性はどうやら、幻浅の玄殿のようでして……」
「誰が小さいだ!」
「ほう? 四種の筆頭、そのうちの一つ、幻浅の玄と?」
「はい……ですのでそのまま説明してお連れしました」
「ふむ。ではなぜ、そこの男と一緒に行動している。他のやつも何者だ? いつものように
みぐるみをはぎ取るために連れて参ったのではないと?」
「ええ。客人としてお連れしたのですが……」
「……だがここまで襲った以上実力を測らずにこの場を通すわけに……」

 話し終わる前に、ベリアルの拳が黒い竜の形に変わり、強烈なブレスを正面に叩き込んだ。
 とっさに大きな虎の爪で、ブレスを上方に跳ねのける。

「せっかちなやつだな」
「おめえがそれを言うか? こっちの挨拶はした。俺はベリアルだ。名前くらい名乗れ」
「ふむ。幻中の白丕びゃくひ。渦中にありて、虎のいをかるきつねと思ったが……少しは
やるようだ。いいだろう、ひとまず客人として迎え入れてやる」
「ふん。てめえで虎を語ってりゃ世話ねえな……いくぞ、おまえら」
「ナナー、役に立てなかっただ」
「そんなことはない。あの青白い虎。随分と切れ者のようだぞ。お主がこちらであったら、あの
黒い虎はバラバラだったかもしれぬな」
「ビュイ……優しいだ」
「な、何を言ってる。私は思った事をいっただけだ」

 仲良く話す二人の後ろ姿を見つつ、ジェネストとクリムゾンは後ろを
警戒しながら辺りを探っていた。

「気配が多いですね」
「うむ。幻中の白の者かどうか……少し探りを入れてこよう」
「気をつけなさい。あなたは行動が中々に荒い」
「ふっ。それをジェネストに言われると思わなかったな」
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