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第二章 仲間

間話 王の姿無く

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 右塔に向かったエプタは、少し苦戦しながらも原因を取り除き、右塔から中央塔の様子を伺う。
 中にいたのはフィルミナ、そして……ブシアノフ男爵だった。
 既にどちらもこときれていて動かない。

「人間になんざ興味は無い。だがこいつらは既に人間じゃなかった。これも干渉外ってことなのかよ。
中央はあいつがいやがるから、ブネの方へ行くか……いや、あれは」

 何かを見つけたエプタは、右塔から飛び降り、移動した城のあった部分へ足を踏み入れる。
 一見すると何もないように見える場所だが、エプタは感じ取っていた。

「お前、ロキの神兵か。まだこのあたりにいたとは思わなかったぜ」
「……姿は消していたはずですが……あなたも神兵でしたか。お初にお目にかかります。
ミストラと申します」
「神兵? 俺は神の遣いだ。言うなれば天使と言い換えてもらおうか」
「フ……フフフフ……実に面白い事を言いますね、あなたは」
「何がおかしいんだ、てめぇ」
「いえ。ご存知無いようでしたので、少々笑ってしまいました」
「……気に入らねえやつだな。ここで何してやがる」
「それをあなたに話すと私にどのような得があるのですか?」
「ここで俺に殺されずにすむ得があるだろ」
「あなたは出会った神兵をいきなり殺すおつもりですか?」
「関係ねえな。おまえら神兵は人の魂魄を利用されて創られた神の遺物だろ? 俺が
どうしようが関係ねえだろ」
「フフフフフ……ここまで無知な相手ですと、笑いを通り越して少々呆れてしまいますね。
あなたの魂魄も、人そのものじゃありませんか」
「何が言いてぇんだ、てめえ」
「おや失礼。少々勘違いしているようでしたので。自分が人間より上の存在だ……とでも
思っているようでしたのでね。訂正させて頂きました。
あなたの存在は、我が神の神兵に劣る。それだけは覚えておいてください。では」
「なんだと!? 待て! ……気配がねえ。俺が……見失った? そんなはずがねえ……
くそ。一体何してやがったんだ、あいつは。
ここにあるのは……王冠と法衣? これはこの国の王の物か」

 ミストラがいた場所に落ちていた王冠と法衣を手に取ると、再度辺りを警戒するが
姿は見当たらなかった。
 さっきのあいつが言っていた事に釈然としなかった。
 自分は他の神の遣いと同じく、絶対神イネービュにより創造された存在。
 人の魂魄を用いて作られたような存在ではない。
 そう信じきっていた。
 なのに……少し胸がざわつく感じがした。
 首を振り考えないようにして、ブネの許を目指す。
 左塔、右塔が止まった影響からか、城の動く速度は少しゆっくりになっていた。
 これなら十分間に合うだろうと判断した彼は、中央塔を嫌いなアイツに任せる
ことにした。

「けっ。別に人間が何人くたばろうが俺には関係ねえ。なのによ、なんでか
無性に腹が立つ。さっきのやつのせいか、それとも……くだらねえ。
考えんのはやめだ。とりあえずブネと……あの二人が生きてりゃそれでいい」

 
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