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第二章 仲間

第五百九十五話 下町へ飛ぶグリドラ

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 グリドラに乗って移動していたファニーたちは、三十領区へ到達していた。
 下は既に城で押しつぶされてぐちゃぐちゃとなっている。
 皆の安否を確かめようにも厳しい状態だった。

「城の動き、止まったわね」
「そうね。旦那がどうにかしてくれたのよ、きっと」
「……ううっ。シー……のやつ……」
「あ、気づいたわ、レナの旦那が」
「結構強めに入れてたから少し心配だったけど、もう気が付くなんて見た目よりタフね」
「少々どころかめいいっぱい入れやがって。あいつ……そんなにまでして一人で行きたかったのか?」
「多分だけどうちの旦那はあんたと自分を重ねてたんじゃないかしらね。
彼の一番大切な人……って思うとちょっと妬いちゃうんだけど。一度死に別れみたいになったことがあるの」
「その時は私、知らずに旦那と出会ったのよね。いけない事しちゃったなぁ……とは思うけど。
知らなかったんだからしょうがないわよね。うんうん」
「それで……どうしたんだ?」
「その子は壊れてしまったわ。立ち直るのに凄く時間がかかった。彼は無理をしてその子に会うため
危険な場所へ向かったの。仲間の力を借りて。その仲間がいなければ、戻る事は難しかったわ」
「えっへん。私のお兄ちゃんと私なのよ! それって」
「そ、そうなのか。意外だな……君が……」
「ちょっと! 失礼しちゃうわね! こう見えても凄い能力もってんだからね!」
「あ、ああ。すまない」

 ぷんぷんしているサニーをなだめる。それを見てファニーがくすりと笑った。

「だからね。ツインはあなたの力になれるよう、ツインの仲間を全て出してでも、あなたにレナさんを迎えられるようにしたんだと思う。ここでレナさんを助けられなければ、私たちだって彼にがっかりされてしまうわ」
「絶対いやよそんなの。旦那の茫然とする顔はそれはそれである意味いいのだけれど……そうじゃなくて
ええとね。レナちゃんは可愛いから私たちの領域に絶対欲しいの!」

 ばしっとサニーを叩くファニー。頭を押さえて舌をぺろっとだす。

「ぷっ……はっはっは! あんたたちはいい性格してるな。シーが羨ましいぜ。
こんなに美人で面白い奥さん二人もいてさ」
「うーん。何なら男も含めて数十人の結婚相手がいることになるのよねえ」
「うちの旦那の器量には困ったものよ、ほんとに」
「へ?」
「私たちは全員が家族って事。誰一人のけものになんて出来ない。強い繋がりが私たちにはあるの。
だから下がこんな状態でも信じられる。みんなの無事を」
「下町方面へ急ぐわよ。上空のモンスターはみんな吊ってあげるわ!」
「俺も出来る限り撃ち落とす。それに一つ試して置きたい武器があるんだが……もう一人のシーに
もらったんだ」
「……さっき聞いてたわ、話を。何か渡したのね?」
「ああ。ゴーストイーターとかいう銃だ。どう使うかわからないんだよ」
「これ、魔術で動かすんじゃないの?」
「どうかな……やっぱりダメだ」
「説明してかないなんて、案外ベリアルも間が抜けてるのね。あれ? でもこれだとツインが間が抜けてるってことになっちゃうわね。彼はしっかりしてるはずだけれど」
「もしかして……妖術とか?」
「だとしたら渡すのはおかしいわね。あなた、妖術は使えないでしょう?」
「妖術? どうやって使うんだ? それ」

 ファニーとサニーは顔を見合わせる。術にはそれぞれ適性があるが、シーが使えるとは思えない。

「……可能性があるとしたら秘術の可能性もあるわね。この銃はただ撃っても何も起こらないわ」
「こういうのに詳しいのは……フォモルさんかしらね。それ以外にもいるかもしれないけれど」
「そうね。どのみち今は難しいと思うわよ」
「そうか……俺の愛武器もそろそろ草臥れてきたし、限界なんだ」
「いいわ。この戦いが終わったら弟に頼んであげる。新しい武器をね」
「弟!? 弟は鍛冶職人なのか?」
「ええ。自慢の弟よ……さぁ、そろそろおでましよ。モンスターの大群がね」

 下町へ向かう三人の正面には無数の鳥型飛行モンスターが近づいていた。
 グリドラがブレスで薙ぎ払いつつ、彼らの戦いが始まろうとしていた。
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