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第二章 仲間

五百九十一話 本懐を遂げさせたい思い

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「……ビー。また、やっちまったみたいだ。ここ、どこだ」
「気づいたか。今中央塔へ向かっている。もう少し休んでろよ」
「そうもいかないんだが……悪い、少し目がかすむ……」
「大丈夫か?」
「ああ……ファニーやサニーたちも無事のようだ。また……あいつが」
「お前の中にあるあいつは、またすぐに会う事になると言っていた。
あれはいったい何なんだ?」
「俺にもよくはわからない。共有される魂……ベリアルと言っていた。それより、急がないと間に合わなくなる。後は俺が……」

 かすむ目がようやく少し見えるようになる。ここは螺旋階段を降り切った場所のようだ。
 外に出ると、王城はかなり移動していた。
 三十、三十一領区手前あたりまではきているだろうか。急がなければ三十領区へ向かった皆が
心配だ。

 空を見上げると……緑色の竜が一匹飛翔しているのが見えた。あれは……グリドラか!? 

「グリドラ! よかった、無事だったんだな。こっちへ来れるか!?」

 羽ばたく緑竜はこちらへ一直線に向かってきた。急ぎ飛び乗ると、中央塔へ向けて
飛翔を開始する。

「シーに封印されていたモンスターか。いいタイミングで来てくれたな」
「ああ。どこかに身をひそめてくれていたのかな。これで……ああ……上から見ると酷い惨状だ……」

 グリドラに乗って上空から町全体を見下ろすと、あちこちで混乱が見受けられた。
 無理もない。こんなでかい城が押しつぶすように移動している姿を見れば、皆混乱する。

「右塔はあのむかつく奴に任せて本当に平気なのか?」
「ああ。エプタは最初からああいう性格だった。信用はしていい」
「中央塔、あそこが一番やばい雰囲気だ。でも、行くしかないよな」
「左塔にいたのはエルゲンってやつだった。そう考えると右塔にいたのはフィルミナって
やつかもしれない。中央はまさか……」
「俺も同じことを考えていた。ほぼ間違いないだろうな……オズワル伯爵だろう」
「そうなるよな……今の俺に果たして太刀打ちできる相手なのかどうか」

 グリドラに城の高めの部分におろしてもらう。
 目の前の中央塔は左右の塔に比べて大きくそびえている。
 玉座とは別の位置だ。そしてこの城に王はもういないのだろうか? 
 中央塔の門を押し広げ、中を見ようとするが、まったくの闇だった。

「明かりがないな。火を灯せるか?」
「いや……これは空間そのものが闇だ。入ったら出てこれる保証はなさそうだ」
「そんな中でどうやって現況の場所を探すんだ? おい、シー……」

 どさりと崩れ落ちるビー。悪いな、お前をここから先へ行かせるわけにはいかなそうだ。

「グリドラ。ビーを仲間のところまで運べるか? メナス、ファニー、サニー。
お前たちもだ」
「嫌に決まってるじゃない! 何言ってるの?」
「死んでもついていくわ」
「ここで戦わずして、何の意味をもってついてきたと思う!」
「戦わせるためじゃない。逃げ遅れたり、避難している人を助けてもらうためだ。
幸い人はいなかった。後は、俺がやる。闇の中で行動できるのは多分、俺だけだ」
「だけど!」
「女将さんとレナさんに随分と世話になったんだろ? 放っておいていいと思うか?」
「……ずるいわよ。いつもいつも自分だけ。ベニーは一体何してるの?」
「あっちはあっちで大変なんだろう。ビーは俺の許へ戻ろうとするかもしれない。
急いでレナさんの許へ」
「せめて、メナスだけでも残させてあげて。この子を出すのは少々酷だと思うしそれに
……一人でも残っていればきっと、無茶はしないと思うから」
「……そう言われると断り辛い……ファニーもうまく言うようになったな……メナス、絶対外には
出さない。いいな。ファニー、サニー。お前たち二人が俺の心の支えであり、最も信頼がおける女たちだ。
頼む。左塔を出てから辛そうな顔をし続けているこいつを、幸せとなるよう導いてやってくれ」

 グリドラにビーとファニー、サニーを乗せ、飛び立たせる。
 一人闇の中へ向かう俺には、この先がどうなっているのかがわかる気がした。
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