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第二章 仲間
第五百七十八話 王女の支配域
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リトラベイという男の案内を受け、馬車を走らせる俺たち一行。
王城までそれなりに距離があったが、道中襲われるような事は無かった。
それどころか……トループ一人すら見かけることなく王城まで辿り着く。
このメンバーで王城まで行った事のある人物はいない。
だからこそこれが普通であるのかもわからなかった。
だが場内の雰囲気は異様なまでに静かだった。
「こちらで少々お待ちください。メイズオルガ様へご連絡してまいります」
「サーカスはいつ頃開始すればよいでしょうか? 準備がありましてね」
「そうですね。メイズオルガ様との面会後、直ぐにご準備ください。
先ほども申しましたように、王女様は首を長くして待っております。それでは……」
くるりと背中を見せ、カツカツと場内へ歩いていくリトラベイ。
背中に目があるような雰囲気だ。
一向に隙が感じられない。
「おっと。一つだけ申しておきましょう。鋭い目をお持ちのようだが、今は主を楽しませるため
急いでおります。努々邪魔などされぬよう気を付けて頂きたいものですな」
「……そのようなこと、こちらからするつもりはない。そちらがどうかはわかりませんが」
「これは失礼を。品定めをされたような気配がしましたもので。それでは」
やはり背中に目があるのだろうか。こちらを一度も見てはいない。
達人程に鍛え上げた気配察知能力。或いは何かの特異能力か。
どちらにしてもたった一人でこれだけの気配を纏えるのは恐ろしくすらある。
リトラベイという男の主というのは王女なのだろうか。それともこの国の王なのか。
それすらもまだわからないが、まずはメイズオルガが敵であるかどうかも見極めねばならない。
――――しばらくすると、顔色が優れないメイズオルガがやってくる。
今にも倒れそうな状態だが、こちらを見て微笑んで見せる。
「ようこそサーカス団の者よ。我が義妹、ミレーユのため、ここまで来てくれたことに感謝しよう。
サーカス団団長、イーニーとは君のことかな。本日はよろしく頼む。諸々の手続きをお願いしてあった
者が病に倒れてしまい、代わりに義妹の側近を遣わせた失礼をお詫びしたい……ごほっ、ごほっ」
「失礼ながら体調が優れぬご様子です。メイズオルガ様、少しこちらへ。お耳を向けるだけで結構。
怪しい行動をするわけではありません」
「うん? 何かな?」
「……あなたの状態を改善出来る者が馬車におります。大きな声で、馬車を調べる旨の発言と行動をとってください」
「……すまないが馬車の中身を調べさせてもらおう。義妹の命を狙う者がいるかもしれないのでな」
「ええ。ご自由にどうぞ」
メイズオルガは馬車の中へ入る。奥では先ほどのリトラベイが、こちらを監視しているように見えた。
いや、こいつは恐らく気づいている。気づいていて勝手にやらせているのだろう。
全て見透かしているような感覚。
つまりこれは……余暇か。
あれが王女の側近であるなら、偽物だということは間違いない。
一体目的は何だ?
馬車へ近づき先生へ小声で話しかける。
「先生……どうだ?」
「いけません。このまま放置していれば、この方は、数日で死ぬところでした。
ご本人はそれを理解して行動しています。この方は、敵だとは思えません」
「……わかった。中で治療を頼む。老師、馬車を守ってほしい。
ビー、みんな。茶番は、終わりかもな」
「義妹の……ために、サーカスを……頼む」
「……困ったお兄さんだ。踊るのは俺たちピエロか、或いはあいつらか……な」
この人のために出来る事。それはその願いを、叶えてやることかもしれない。
だったらやってやろうか。
俺たちのサーカスを!
王城までそれなりに距離があったが、道中襲われるような事は無かった。
それどころか……トループ一人すら見かけることなく王城まで辿り着く。
このメンバーで王城まで行った事のある人物はいない。
だからこそこれが普通であるのかもわからなかった。
だが場内の雰囲気は異様なまでに静かだった。
「こちらで少々お待ちください。メイズオルガ様へご連絡してまいります」
「サーカスはいつ頃開始すればよいでしょうか? 準備がありましてね」
「そうですね。メイズオルガ様との面会後、直ぐにご準備ください。
先ほども申しましたように、王女様は首を長くして待っております。それでは……」
くるりと背中を見せ、カツカツと場内へ歩いていくリトラベイ。
背中に目があるような雰囲気だ。
一向に隙が感じられない。
「おっと。一つだけ申しておきましょう。鋭い目をお持ちのようだが、今は主を楽しませるため
急いでおります。努々邪魔などされぬよう気を付けて頂きたいものですな」
「……そのようなこと、こちらからするつもりはない。そちらがどうかはわかりませんが」
「これは失礼を。品定めをされたような気配がしましたもので。それでは」
やはり背中に目があるのだろうか。こちらを一度も見てはいない。
達人程に鍛え上げた気配察知能力。或いは何かの特異能力か。
どちらにしてもたった一人でこれだけの気配を纏えるのは恐ろしくすらある。
リトラベイという男の主というのは王女なのだろうか。それともこの国の王なのか。
それすらもまだわからないが、まずはメイズオルガが敵であるかどうかも見極めねばならない。
――――しばらくすると、顔色が優れないメイズオルガがやってくる。
今にも倒れそうな状態だが、こちらを見て微笑んで見せる。
「ようこそサーカス団の者よ。我が義妹、ミレーユのため、ここまで来てくれたことに感謝しよう。
サーカス団団長、イーニーとは君のことかな。本日はよろしく頼む。諸々の手続きをお願いしてあった
者が病に倒れてしまい、代わりに義妹の側近を遣わせた失礼をお詫びしたい……ごほっ、ごほっ」
「失礼ながら体調が優れぬご様子です。メイズオルガ様、少しこちらへ。お耳を向けるだけで結構。
怪しい行動をするわけではありません」
「うん? 何かな?」
「……あなたの状態を改善出来る者が馬車におります。大きな声で、馬車を調べる旨の発言と行動をとってください」
「……すまないが馬車の中身を調べさせてもらおう。義妹の命を狙う者がいるかもしれないのでな」
「ええ。ご自由にどうぞ」
メイズオルガは馬車の中へ入る。奥では先ほどのリトラベイが、こちらを監視しているように見えた。
いや、こいつは恐らく気づいている。気づいていて勝手にやらせているのだろう。
全て見透かしているような感覚。
つまりこれは……余暇か。
あれが王女の側近であるなら、偽物だということは間違いない。
一体目的は何だ?
馬車へ近づき先生へ小声で話しかける。
「先生……どうだ?」
「いけません。このまま放置していれば、この方は、数日で死ぬところでした。
ご本人はそれを理解して行動しています。この方は、敵だとは思えません」
「……わかった。中で治療を頼む。老師、馬車を守ってほしい。
ビー、みんな。茶番は、終わりかもな」
「義妹の……ために、サーカスを……頼む」
「……困ったお兄さんだ。踊るのは俺たちピエロか、或いはあいつらか……な」
この人のために出来る事。それはその願いを、叶えてやることかもしれない。
だったらやってやろうか。
俺たちのサーカスを!
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