上 下
645 / 1,085
第二章 仲間

第五百七十三話 助けられたトループ

しおりを挟む
 時は少し戻り、オズワル伯爵領地へと向かったベニー。
 一人のトループを看病し、介抱した。

「ぐっ……ここ……は」
「気づいたっしょ。動くと傷口開くよ」
「あなたが私を?」
「そうっしょ。見つけられたのは偶然。ここは近くにあった洞穴を、見えなくさせただけっしょ。
今のところモンスターは来てない」
「では……助かったのは、私だけ……うぐっ」
「ほら起きないっしょ。言っておくけど私、旦那いるからね。変な事しようとしても無駄っしょ」
「そのようなこと、するはずもない! ……くっ。私は誇り高き父、 ヘンブレン・ジョウイ・オズワル
の第二子。ヘンブレン・ジョウイ・オーウェン。救い人よ。あなたの名前を教えてくれないか?」
「ベニーっしょ。息子さんだったなんて。一体ここで何が起こったっしょ?」
「それは……」


 オーウェンの話によると、突如恐ろしい七人の何者かに襲われ、さらに大量のモンスターが襲撃。
 オズワルは勇敢に戦ったが、一対一で何者かと戦っている最中、別の者に横から串刺しにされたという。
 オズワルは近くにいたオーウェンに隠蔽魔術を施し、その後敵をひきつけ、離れたところで大爆発を起こした。
 恐らく自滅魔法とのこと。

「父は……勇猛果敢で誰にも引けを取らない戦士だ。そして、一対一なら負けてはいなかった。
私が……私たちがもっと強ければ、こんなことには」
「その気持ち、わかるっしょ。うちの旦那も強いけど、肝心な時はいっつも一人でつっこんでいくの。
それは、私たちを危ない目に合わせたくないから。オズワルって人もきっと、そうだったっしょ」
「それで死んでしまっては、何にもならないじゃないですか。残された、俺はたった一人。
もう、終わりです……」

 バシッと背中をたたくベニー。
 彼女は泣き言を言う男にぐっと目を吊り上げる。

「あんたは生きてるっしょ! だから全然、終わってなんかいない。
そいつらへ一矢報いるために、どうしたらいいか考えるっしょ!」
「あなたは、とても励ましになる声をしている。力の底から湧き上がるような声色だ。
ご主人を羨ましく思いますよ。そうですね、その通りです。
私はあの集団に王女の影をみた。このままでは恐らく、王族が危険だと思われます」
「ここを襲ったという証拠があんたなら、王女の正体をさらせるかもしれないっしょ。
それと、三十領区に王女が幽閉されてるって話を聞いたの。場所は……」

 オーウェンは驚きながらも頷き、傷ついた体を動かし始める。
 外を見るベニーの額を汗が流れた。

「まずいっしょ。モンスターでいっぱい。このままじゃ出られない」
「せめて剣があれば……父程ではありませんが、私も剣の腕に覚えがあるのです」
「無理っしょ。うちの旦那くらい化け物じゃないとあんな数……あ!」

 そう考えていた時、モンスターの群れに巨大な業火が次々と降り注ぐ。
 その上さらに焼け焦げたモンスターを水が洗い流していく。

「ふう。上空からでも水竜の息を的確に発動させられるようになったわ。
修業の賜物ね。バカ弟子が起きる前にバカ弟子より遥か先まで到達しておかないと、情けなくてバカ弟子って
呼べなくなるものね」
「ライラロさん! 来てくれたっしょ! よかった。鬼に金棒!」
「あらベニー。私を見るなり鬼やら金棒やら失礼じゃない? もっと美しく呼んで欲しいわね。それにしても
……ボロボロね、あんたとそっちの人。はい傷薬」
「ここまで、一体どうやって来たんですか、彼女は」
「多分あれっしょ。風斗車改」

 新しく部品を交換した風斗車に乗ったライラロは、ゆっくりと地上へ降り、洞穴の前にぴったりと止める。
 
「さて、話は後から聞くわ。ここはどうにもモンスターの様子がおかしいの。早く乗って。
出発するわ」
「ライラロさん。それじゃ三十領区へ行って欲しいっしょ! 王女が幽閉されてるって場所へ!」
「……あっちか。嫌な予感しかしないわね。でも、いいわ。ルシアからぶんどったこれで!」

 ライラロが何かを掲げると、風斗車改と、乗っている三人の姿は忽然と消え、三十領区へと向かっていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...