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第二章 仲間

第五百六十九話 ばったり!?

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 着の身着のままで急ぎ伯爵邸へ向かった俺たち一行。
 一度サーカスの装いは解除し、ゴードンに馬車を引いてもらう。
 この方が都合よく向かえるからだ。
 目的地は隠し通路となるが、道中伯爵のトループなどがいる可能性は高い。
 
「コーネル様……だめです、ずっと動かないまま……ああ。なぜこのような事に。
私たちが閉じ込めていたばかりにこんな……」
「コーネリウスをなぜコーネルと呼ぶんだ?」
「……あなたはご存知でしょう? コーネル様は本来女性。ですが男性として育てられました。
本来のお名前はエルエレン・シュトラ・コーネリミル。兄は幼少の頃他界し、弟も死別。
直系で残られたのは、コーネル様ただおひとりなのです……」
「そうだったのか。世継ぎ無しの貴族ではという事なのだろうが、一体どうしようとしていたんだ」
「そろそろ到着します。最大限注意をひきます故、イライザは案内を頼みます」
「わかりました。ゴードン。私たちがここにいる事自体不自然だと思われるでしょう。
十分気を付けてくださいね」
「ふふふ。先ほどの問答後です。こちらも十分に楽しませて頂きますよ」

 ふっと笑うゴードンは、すぐさま馬車を降りて入り口のトループへと話を始める。
 さすがの伯爵邸宅。もはや城並みのサイズで、この大陸に来てからもっとも大きい外観だ。

 入り口の門は堅牢そうであり、中もよく見えない。
 
 捕縛されたコーネルを抱えると、自分とコーネルを捕縛網でガチガチに固める。
 攻撃されてはかなわないので、手や口もとあたりは入念に覆ってある。

「裏口はこちらです。ジェイクさんでしたか。道の端に停車させてください」
「俺っち、ここで待機していていいじゃん?」
「ええ。お願いします。何か言われたら、ゴードンを待っていると伝えれば問題ありません」
「わかったじゃんよ。やってみるじゃん」
「わしらはどうすればいいんじゃ?」
「老師もここで。いざとなったらジェイクを頼みます」
「ふむ。暴れてもよかったんじゃがのう」
「私たちも大人しくしていますね」
「ここにもエビルイントシケートが流行ってるのか……」
「お前らだけで行け。俺とブネは遠慮しておくぜ」
「素直に言ってはいないが、エプタにはグールパウダーについて調べてくるよう命令を出した。
あれは理を変える神の遺物だ。一体だれが持ち寄ったのか……」
「あ、ああ。わかった」
 
 頷きはしたものの、随分とよくない状況のようだ。ブネは無表情だが、エプタの顔色は悪い。
 馬車を道端につけると、レッジ、レッツェル、老師エプタ、ブネを馬車へ残し、一斉に外へ出る俺、ビー、イライザ。
 三人といっても封印内には既に、ファニー、サニー、レニー、負傷したメナスがいる。
 
「今から防音魔術を施します。そのままお待ちを……雄大なる魔の世界より這い出て力となれ。
汝を包むは寂しき闇。無の鼓動を持ちその闇を分けよ。
スペクターハッシュ」

 イライザの詠唱が終わると同時に、魔術で包まれる俺たち。
 一瞬影のようなかたどりをされたかと思うと、直ぐにその影は消える。

「これでいいわ。といっても聞こえないからここからはジェスチャーね」

 ハンドサインで俺たちを誘導し始めるイライザ。
 これはかなり便利な魔術だ。後で教えてもらうべきか……。

 伯爵邸の壁に沿うように進んだ場所で、一度止まるイライザ。
 あたりを少し見渡した後、誰もいないことを確認して、下から二番目の壁部分を蹴りこむ。
 しかし無音であり、何も起こってはいない。
 次に右上部を叩き、再び同じ位置の壁を蹴りこむ。そのうえで俺たち二人の手をつかむと、壁に思い切り
激突させた! 

「うわぁ!」

 声を思わずだしたが、周りには聞こえていないように思える。そして、俺たちは壁の中にいた。
 まるでウォーラスに取り込まれた時のような感覚。
 これは壁の一部分がおかしなことになっているようだ。
 すぐさまイライザもやってきて、ハンドサインを送り始める。

 壁の抜けた先には部屋があり、すぐさままずはその部屋へと侵入した。
 どうやら倉庫のようで、人がいるような部屋ではないようだ。

 しかし……慌てて入ったその倉庫には、とんでもない者がいた。

「ええっ!? エーじゃないか? なんで縛られて倉庫にいるんだ?」
「ムグー! ムングググ!」
「落ち着け、エー。ムググ族になるにはまだ早い! と言っても聞こえないんだった」
 涙目のエーにわかるよう口元に指をあてるビーが、縄をほどいてやる。エーは声が大きい。
 一度防音を解除してもらい説明をする必要があるが……ここは安全なのかどうかもわからない。

 イライザは察したのか、俺の防音を解除してくれたので、エーの説明を聞く事にした。

「エー。静かに話してくれ。一体どうしたんだ」
「まずいのであります。あのフィルミナとかいう女にはめられたであります!」
「フィルミナ? あの時の取り巻きの一人か」
「ああ! そちらはコーネリウス殿でありますか? 無事救出できたでありますね。
なのにこちらは……面目ないであります……」
「それよりスピアーはどうした? アネさんもこっちへ来なかったか」
「自分が不甲斐ないばかりに……どちらも、きっと今頃……自分、自害するであります……」
「ちょ、落ち着けって。どっちもどうにかなるような相手じゃない。スピアーなんて変身戻したら
この建物破壊しまくってるはずだから大丈夫だ」
「そうなのでありますか? ビー、シー。自分、まだ役に立てるでありますか?」
「当たり前だ。一緒に来い!」

 シュイオン先生の居場所をエーに聞き、再びイライザに防音魔術を展開してもらう。
 探す手間が省けたのはエーだけだが、俺の仲間たちならきっとうまくやっているはずだ。
 
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