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第二章 仲間
第五百六十七話 フィーユ・ド・ロワの鐘が示す意味
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ラーンの捕縛網を発動すると、海水のような透き通る青色の水がコーネリウスへまとわりついていく。
使用者によって大きく変化するというアーティファクト。以前俺が使用した時とは比べ物にならない形状へ
昇華している。
相性もからむようだが、今の俺のモードは海水が主。相性はよかったのだろう。
水の捕縛網で拘束されたコーネリウスは、未だに敵を探しているようだった。
だが、拘束され徐々に落ち着きを取り戻しているように見える。
しかし、正気ではない。顔色もとても悪く見える。
ラーンの捕縛網はそう容易く解けるものではないし、魔術を唱えようとすれば
阻害するのは簡単だ。幻術と違い術詠唱を必要としているからだ。
重力を操るコーネリウスだが、両手両足を動かせない以上、発せられる場所が
非常に少ない。
暫く拘束を続けよう。
「シー! 平気か。一体どうなってるんだ、コーネリウスは」
「コーネル様! なんといたわしい……」
「ゴードン。直ぐお召し物を。水に付けても動きやすいものでお願いします。あなたたちも
コーネル様を落ち着かせていただいたのは感謝します。ですが嫁入り前の女性の肌をこれ以上
見ないであげてくださいませんか」
慌てて後ろを振り向く俺とビー。そうだった。コーネリウスは女だった。
特にビーは動揺しすぎて目もあてられない。
「この水は……アーティファクトですね。詳しくはおききしません。これには何か沈静効果でも
施されているのですか?」
「わからないが……使用者によって効力が大きく変わるとは聞いている。
海水に含まれるマグネシウムあたりが影響している可能性もあるが……」
「そうですか……ゴードンがきたようです」
急いで持ってきたそれはどう見ても水着にラッシュガードのようなもの。この状況であれば仕方がない。
「もう大丈夫です。それにしても一体コーネル様に何が……」
「俺たちの事もわかってなかった。忘却の薬や忘却の魔術などに心当たりは?」
「いえ、私たちには……食事はいつも侍女が運んでおりますし。
……そういえば先日、不思議な出来事が。バンドール伯爵自らがお越しになりました。
お会いにならないとお伝えはしたものの、構わぬといい、部屋の前まで案内しました。
ですがバンドール伯爵が何かを盛るなどとは考えづらいでしょう。それに……」
「それに?」
「申し上げにくいのですが、コーネル様のお力は、この領区随一のもの。先ほど振るわれたお力の一端を
体験されたあなた方ならわかると思いますが、気性も激しいお方です。
しかし記憶がないというのはおかしいですね」
伯爵が何かしらを行った可能性は考えられないわけではないが、そもそも
会ったかどうかも怪しいとうことか? あるいはほかの何かか……。
「そういえば、伯爵が伯爵であることは確認したのか?」
「いいえ。統治者を確認するなど出来ぬ身分故」
「それもそうだよな。だからこそつけいる隙がある……か。それならば近くにいてもおかしくはない」
「どういうことでしょう?」
「コーネルは何者かに薬をもられたか、操られているか何かで、おかしくなっていたのは事実だろう。
……監視して対話を試みる隙を探していたのかどうかまではわからないが」
「何かおっしゃいました?」
「いや。このあたりに、この屋敷がよく見える高台は……あそこか?」
「あれをご存知なのですか?」
「うん? いや、俺は知らないけど」
「シー。さっき話していたフィーユ・ド・ロワの鐘はあれだよ」
「そういえば、ビーが問答していたな。あれはどういう意味だったんだ?」
「王女が親友のために作った鐘だ。聞いた事のある話だったが、事実だったようだ」
「……そういうことです。王女が嫁ぐとともに、取り壊しが決定しました」
「……あの場所へ行っても構わないか?」
「ええ。制限はしておりません。鐘は鳴らないよう固定されていますし、二十三領区は安全で、入り方も
特殊ですから」
俺は急ぎ、鐘のある場所へ向かった。
きっとあそこに……。
使用者によって大きく変化するというアーティファクト。以前俺が使用した時とは比べ物にならない形状へ
昇華している。
相性もからむようだが、今の俺のモードは海水が主。相性はよかったのだろう。
水の捕縛網で拘束されたコーネリウスは、未だに敵を探しているようだった。
だが、拘束され徐々に落ち着きを取り戻しているように見える。
しかし、正気ではない。顔色もとても悪く見える。
ラーンの捕縛網はそう容易く解けるものではないし、魔術を唱えようとすれば
阻害するのは簡単だ。幻術と違い術詠唱を必要としているからだ。
重力を操るコーネリウスだが、両手両足を動かせない以上、発せられる場所が
非常に少ない。
暫く拘束を続けよう。
「シー! 平気か。一体どうなってるんだ、コーネリウスは」
「コーネル様! なんといたわしい……」
「ゴードン。直ぐお召し物を。水に付けても動きやすいものでお願いします。あなたたちも
コーネル様を落ち着かせていただいたのは感謝します。ですが嫁入り前の女性の肌をこれ以上
見ないであげてくださいませんか」
慌てて後ろを振り向く俺とビー。そうだった。コーネリウスは女だった。
特にビーは動揺しすぎて目もあてられない。
「この水は……アーティファクトですね。詳しくはおききしません。これには何か沈静効果でも
施されているのですか?」
「わからないが……使用者によって効力が大きく変わるとは聞いている。
海水に含まれるマグネシウムあたりが影響している可能性もあるが……」
「そうですか……ゴードンがきたようです」
急いで持ってきたそれはどう見ても水着にラッシュガードのようなもの。この状況であれば仕方がない。
「もう大丈夫です。それにしても一体コーネル様に何が……」
「俺たちの事もわかってなかった。忘却の薬や忘却の魔術などに心当たりは?」
「いえ、私たちには……食事はいつも侍女が運んでおりますし。
……そういえば先日、不思議な出来事が。バンドール伯爵自らがお越しになりました。
お会いにならないとお伝えはしたものの、構わぬといい、部屋の前まで案内しました。
ですがバンドール伯爵が何かを盛るなどとは考えづらいでしょう。それに……」
「それに?」
「申し上げにくいのですが、コーネル様のお力は、この領区随一のもの。先ほど振るわれたお力の一端を
体験されたあなた方ならわかると思いますが、気性も激しいお方です。
しかし記憶がないというのはおかしいですね」
伯爵が何かしらを行った可能性は考えられないわけではないが、そもそも
会ったかどうかも怪しいとうことか? あるいはほかの何かか……。
「そういえば、伯爵が伯爵であることは確認したのか?」
「いいえ。統治者を確認するなど出来ぬ身分故」
「それもそうだよな。だからこそつけいる隙がある……か。それならば近くにいてもおかしくはない」
「どういうことでしょう?」
「コーネルは何者かに薬をもられたか、操られているか何かで、おかしくなっていたのは事実だろう。
……監視して対話を試みる隙を探していたのかどうかまではわからないが」
「何かおっしゃいました?」
「いや。このあたりに、この屋敷がよく見える高台は……あそこか?」
「あれをご存知なのですか?」
「うん? いや、俺は知らないけど」
「シー。さっき話していたフィーユ・ド・ロワの鐘はあれだよ」
「そういえば、ビーが問答していたな。あれはどういう意味だったんだ?」
「王女が親友のために作った鐘だ。聞いた事のある話だったが、事実だったようだ」
「……そういうことです。王女が嫁ぐとともに、取り壊しが決定しました」
「……あの場所へ行っても構わないか?」
「ええ。制限はしておりません。鐘は鳴らないよう固定されていますし、二十三領区は安全で、入り方も
特殊ですから」
俺は急ぎ、鐘のある場所へ向かった。
きっとあそこに……。
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