上 下
637 / 1,085
第二章 仲間

第五百六十五話 ゴードン、イライザとの問答

しおりを挟む
「では早速問答を始めます。形式は一問一答交代制。簡易的質問は認めましょう。
私の名前はイライザ。彼はゴードン。あなた方のお名前を聞かせてください」
「……本名をか?」
「そうですね。本名です」

 参ったな。いきなり答え辛い。
 しかも俺だけではなく、ビーもなのか、困惑している。
 一つ思案してこう答える事にした。

「トループでの本名はツイン、シーだ」
「そうか……俺もトループでの本名はミズガルド、ビーだ」

 そういえばビーの名称に関しては深く聞いたことが無かったな。
 それは……俺も同じで聞かれてはいない。
 今ので俺たちがトループであることは伝えてしまった。
 しかし俺の予想が確かなら、これ以外答えようがない。

「よろしいでしょう。どうぞ。あなた方の番です」
「まずは俺からだ。あなたたちとコーネリウス殿の信頼関係について詳しく」

 すっとゴードンが手を差し伸べて答え始めた。

「私たちはコーネリウス様を十二分にお慕いしております。しかし信頼関係は築いておりません。
あくまで主従の関係です。それ以下でも、以上でもない」

 お手本のような回答だ。つまり、王女関連の話は通していない可能性が高い。
 また、コーネリウスをここへ閉じ込めているのも彼らの制御によるものと考えられる。

「では続いてこちらより問答いたします。あなた方は本当にサーカス団ですか?」
「あなた方というのはどこまでを指すか明確ではないと思われます」
「おっと。大変失礼しました。ビーさん、シーさんお二人です」

 いい質問だ。直ぐに突っ込みをいれたビーも適格な反応だ。
 問答に対してすぐさまビーが回答する。

「俺たち二人はサーカス団に入れてもらったばかり。新団員ですよ」
「……ふむ。よろしいでしょう。そちらの番です」

 今度はビーが尋ねる番だ。少し思案すると口を開いた。

「フィーユ・ド・ロワの鐘について、どう考えている?」

 その言葉と同時に、空気が変わった。
 俺にはいまいちよくわからなかったが、ビーのことだ。意図して発現したのだろう。
 この国において何かしらの意味を持つワードか。

「主にとっては大切なもの。我々にとっては関わりたくないものです。よろしいでしょうか」
「ああ」
「では私からの質問です。ビーさん。シーさん。あなたたちがここへ来た目的は何ですか」

 互いに目を合わせて頷き合う。

『コーネリウスへ仕事の依頼の報告だ』

 ぴしゃりりと言い切った俺たち。
 ゴードン、イライザともに姿勢を正して一礼する。

「よろしい。それでは最後にビーさん。問答をどうぞ」

 最後か……この二人は伯爵命に従い、仕方なく動いている感じは伝わってくる。
 十二分に慕っているということは幼少から目をかけてみてきたのだろう。
 ならば……。

「コーネリウス殿の力になり、救うためにはどのような手助けをすればいい?」

 その問いに、ゴードン、イライザの表情が緩む。

「虚言など一切ない。コーネリウス殿はようやく信をおけるものたちとお会いできたのですね」
「失礼した。我々では主に御心を許してもらうこと叶わず。試すような真似を許して欲しい」
「これは……嘘を見抜く魔術具か何かなのか」
「左様。今から嘘をついてみせよう。私は、コーネリウス様を嫌っている」

 ゴードンがそうつぶやくと、展開されていた領域が真っ赤へ染まる。
 それと同時にパリンと音を立てて砕け散った。

「この通り。嘘をつけばその時点で直ぐにわかる」
「便利な道具だが、恐ろしい道具だな……」
「この世は虚と実に満ち溢れています。問答がなせるのは常に、実あればこそです。
あなた方との問答、楽しませて頂きました。今しばらく問答して
いたいところではありますが、今日のところはここまで。特にシーさん。あなたはどこかで高い教養を積んで
こられたご様子。何れはもっと深い問答をしていただけませんか?」
「博学多才とはいかないが、衣食礼節を知り得て対話を重んじる事は学んできたつもりだ。
いつでもお相手しよう」

 深々と礼をする二人に、こちらも同じく深々と礼を返した。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...