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第二章 仲間
第五百五十四話 宿屋の小休止
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下町に着いた俺たちは、手筈通りにブシアノフ男爵たちの護衛と切り離される。
いや、むしろわざとだと誰からみてもわかるように切り離した。
彼らとしても心痛む出来事だったろう。
「男爵、無事でいてくれるといいが……」
「ゲンシン殿がついている。きっと大丈夫さ……それより一度宿屋に戻るんだろう?」
「ああ、そうさせて欲しいが、構わないか?」
「勿論だ。俺とレッツェルでサーカス団の居場所を探っておく。最近下町の
酒場が評判で一度食べに行ってみたかったんだ。そこで落ち合う予定でいいか?」
「それってもしかして……」
話を聞いてみると、やはりファニーたちが働いている店だった。
俺たちは二つ返事で承諾すると、急ぎ宿屋へと戻る。
だが、コーネリウスやシュイオン先生の姿は見当たらない。
それどころか老師の姿もみあたらなかった。
「老師……一体どこへ……」
「奥さんたちもいないな。皆出払っているのか?」
「どうかな。宿屋の人の話では、泊っているのは確かだけど」
「少し腰を掛けて休まないか。色々あって疲れたし」
「そうだな。飲み物、入れるよ」
「ありがとう。シーは本当によく気を利かせるな」
「性分なんだ。たまに余計な世話かなと思う事もあるけれど、それでも動いてしまうんだ」
「性格だな。決して悪い性格じゃない。だが、自分が休む事だって大事だと思うぞ」
「すまない。気を付けるよ。ああ……落ち合うまで大分時間がある。食べ物もいるか?」
「ふふっ。ビー。今言ったばかりだぜ」
「ああ……すまない。実は俺の主、腕を失っていてさ。どうしても世話してやりたくなっちゃうんだ。
真っすぐで不器用でさ」
「前に話していた奥さんの事か?」
「そうだ。頼られるのが嬉しくて。それでなのかな。体が勝手に動いてしまうんだ」
「ますますシーらしいな。男が女のために動くってのはよくわかる。だが男女隔てなくそうできる
お前はやっぱり、優しすぎるのかもしれないな」
「誰にでもというわけじゃないさ。仲間には……かな」
「仲間……か。なぁシー。サーカス団へ向かった後の行動はどうするんだ?」
「王女は恐らく偽物だろう。それをどうにか暴きさえすれば、本物の王女は見つかるんじゃないか」
「だが、それをどうやってやるんだ? 外見はどう考えても王女のはずだろう?」
「いくつか方法はあるが……耳を貸してくれ」
極力音をたてないように話す二人。
ビーは思案すると、軽く頷いた。
「なるほどな。確実性があるわけじゃないが、悪くない案だ」
「最悪を想定するともう少し手が欲しい。しかし今の状態だと厳しいな。
老師やファニーたちの手も……最悪切り札にも手を出さないといけないかもしれない」
「まだ切り札があるのか!? お前ってやつは……」
「使いたくはないんだ。事と場合によっては……使わなければいけないかもしれない」
「そうぽんぽんと出ないからこその切り札だろう。それともう一つ。メナスは十八領区にいる。
助け出す約束をしたんだ。ここもどうにか寄れないか?」
「どうにかじゃなく、絶対に寄っていこう。サーカス団の進路決定に加わるのもやる事のうちに入るな」
「大分煮詰まってきた。そろそろ一旦休憩にしよう」
「わかった」
ビーと休憩していると、扉が開き、老師が入ってきた。何やら深刻な表情を浮かべている。
「老師、どうしたんですか?」
「戻っておったのか。大変なんじゃ……」
「まさか、ファニーたちに何かあったのですか?」
「いや、違うんじゃ。ライラロさんが突然来てのう。呼ばれたから行ってくる。後はお願いね! と告げて
のう。わし、借金五千レギオン金貨なんじゃけど」
「五千レギオン金貨だと?」
「どうにかしましょう。ライラロさんが呼ばれたってことはベニーかも……だとするなら俺のせいですし」
「ところでお主たちの方は……その様子だとうまくいかなかったようじゃな」
「はい……すみません、老師。俺が……」
「皆まで言わずともよい。やはりわしが近くにおるべきじゃった。次はわしも行くとするかのう。
体も大分よくなったんじゃ」
「お願いします。そういえばアイリスがいないようなんですが」
「おお! そうじゃった聞いてくれい。いい呼び名をつけてやったんじゃ。その名も
マハリクマハリタじゃ! どうじゃ? 魔法みたいでいいじゃろ?」
「ダメに決まってるでしょ! 毎回呪文のような名前を唱えるつもりですか!」
「同感だが、アイリスってのは種族名だし何か名前を……既につけてるかもな」
「ファニーにもぶたれたんじゃ。こんな可愛い子になんて名前つけるのよ! ってのう。
確かイオナって呼んでたぞい。つまらんのう」
「イオナの方が何倍もいいでしょうに! はぁ……老師のあだ名付けには困ったものだ……それで
イオナはどこに?」
「ファニーが胸の間にしまって連れて行ったぞい。皆酒場に行っておる。わしもこれから向かうところじゃ」
「時間にはまだ早いが、酒場へ行こう」
全員宿屋を退出して、酒場へと向かうのだった。
いや、むしろわざとだと誰からみてもわかるように切り離した。
彼らとしても心痛む出来事だったろう。
「男爵、無事でいてくれるといいが……」
「ゲンシン殿がついている。きっと大丈夫さ……それより一度宿屋に戻るんだろう?」
「ああ、そうさせて欲しいが、構わないか?」
「勿論だ。俺とレッツェルでサーカス団の居場所を探っておく。最近下町の
酒場が評判で一度食べに行ってみたかったんだ。そこで落ち合う予定でいいか?」
「それってもしかして……」
話を聞いてみると、やはりファニーたちが働いている店だった。
俺たちは二つ返事で承諾すると、急ぎ宿屋へと戻る。
だが、コーネリウスやシュイオン先生の姿は見当たらない。
それどころか老師の姿もみあたらなかった。
「老師……一体どこへ……」
「奥さんたちもいないな。皆出払っているのか?」
「どうかな。宿屋の人の話では、泊っているのは確かだけど」
「少し腰を掛けて休まないか。色々あって疲れたし」
「そうだな。飲み物、入れるよ」
「ありがとう。シーは本当によく気を利かせるな」
「性分なんだ。たまに余計な世話かなと思う事もあるけれど、それでも動いてしまうんだ」
「性格だな。決して悪い性格じゃない。だが、自分が休む事だって大事だと思うぞ」
「すまない。気を付けるよ。ああ……落ち合うまで大分時間がある。食べ物もいるか?」
「ふふっ。ビー。今言ったばかりだぜ」
「ああ……すまない。実は俺の主、腕を失っていてさ。どうしても世話してやりたくなっちゃうんだ。
真っすぐで不器用でさ」
「前に話していた奥さんの事か?」
「そうだ。頼られるのが嬉しくて。それでなのかな。体が勝手に動いてしまうんだ」
「ますますシーらしいな。男が女のために動くってのはよくわかる。だが男女隔てなくそうできる
お前はやっぱり、優しすぎるのかもしれないな」
「誰にでもというわけじゃないさ。仲間には……かな」
「仲間……か。なぁシー。サーカス団へ向かった後の行動はどうするんだ?」
「王女は恐らく偽物だろう。それをどうにか暴きさえすれば、本物の王女は見つかるんじゃないか」
「だが、それをどうやってやるんだ? 外見はどう考えても王女のはずだろう?」
「いくつか方法はあるが……耳を貸してくれ」
極力音をたてないように話す二人。
ビーは思案すると、軽く頷いた。
「なるほどな。確実性があるわけじゃないが、悪くない案だ」
「最悪を想定するともう少し手が欲しい。しかし今の状態だと厳しいな。
老師やファニーたちの手も……最悪切り札にも手を出さないといけないかもしれない」
「まだ切り札があるのか!? お前ってやつは……」
「使いたくはないんだ。事と場合によっては……使わなければいけないかもしれない」
「そうぽんぽんと出ないからこその切り札だろう。それともう一つ。メナスは十八領区にいる。
助け出す約束をしたんだ。ここもどうにか寄れないか?」
「どうにかじゃなく、絶対に寄っていこう。サーカス団の進路決定に加わるのもやる事のうちに入るな」
「大分煮詰まってきた。そろそろ一旦休憩にしよう」
「わかった」
ビーと休憩していると、扉が開き、老師が入ってきた。何やら深刻な表情を浮かべている。
「老師、どうしたんですか?」
「戻っておったのか。大変なんじゃ……」
「まさか、ファニーたちに何かあったのですか?」
「いや、違うんじゃ。ライラロさんが突然来てのう。呼ばれたから行ってくる。後はお願いね! と告げて
のう。わし、借金五千レギオン金貨なんじゃけど」
「五千レギオン金貨だと?」
「どうにかしましょう。ライラロさんが呼ばれたってことはベニーかも……だとするなら俺のせいですし」
「ところでお主たちの方は……その様子だとうまくいかなかったようじゃな」
「はい……すみません、老師。俺が……」
「皆まで言わずともよい。やはりわしが近くにおるべきじゃった。次はわしも行くとするかのう。
体も大分よくなったんじゃ」
「お願いします。そういえばアイリスがいないようなんですが」
「おお! そうじゃった聞いてくれい。いい呼び名をつけてやったんじゃ。その名も
マハリクマハリタじゃ! どうじゃ? 魔法みたいでいいじゃろ?」
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「同感だが、アイリスってのは種族名だし何か名前を……既につけてるかもな」
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確かイオナって呼んでたぞい。つまらんのう」
「イオナの方が何倍もいいでしょうに! はぁ……老師のあだ名付けには困ったものだ……それで
イオナはどこに?」
「ファニーが胸の間にしまって連れて行ったぞい。皆酒場に行っておる。わしもこれから向かうところじゃ」
「時間にはまだ早いが、酒場へ行こう」
全員宿屋を退出して、酒場へと向かうのだった。
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