上 下
609 / 1,085
第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百四十二話 急襲! シフティス大陸初のモンスター襲来

しおりを挟む
 男爵たちと共に行動するシーたち。レッツェルは薬が効いてきたようで、体調こそ優れないものの、少し
症状は和らいだようだ。レッジは同行しようとしたが、男爵は首を縦には振らなかった。
 
 現在の目的地は二十領区。
 この道のりは、以前シーたちが通った二十三領区へ向かう道とは異なり、険しい道だ。
 これはオズワル伯爵が自らかってでた土地だからだそうだ。
 英雄オズワル。その名はこの地域一帯に轟く程。
 相当な人物であることに間違いはない。

「そろそろ十二領区を出る。ここからは山道となるので気を付けてほしい」
「馬車は全部で三台ですよね」
「こちらの馬車はソアンとフェンが見張り台から確認するので、君たちの方も担当を決めておいてくれるか?」
「こちらは私が。本来ビーも適任ですが、より遠くを確認する術があるので」
「ツイン君。君はかなり特殊な術を使用すると聞いている。道中よろしく頼む」
「ええ。少し驚かせるかもしれませんが、頑張ります」

 馬車は上部に座る場所があり、見晴らしもいい。
 貴族御用達の馬車なだけあり、しっかりとした造りだ。

「それじゃ、出発するじゃん。へへっ。面白い旅じゃん!」
「この先そうも言ってられないだろう。ブシアノフ男爵の話では、モンスターの出現も多い
領区らしい。街中でモンスターは出ないなんてのは、そもそもあり得ない話だしな」
「当然じゃん。そんな都合のいい町あるわけないじゃん」
「だからこそ町には兵士が常駐している。そしてこの一帯は特に、強力で凶悪なモンスターが多い」
「ただのトループは、いつも死に物狂いぞ」
「そんなに大変っしょ? うちらの町はモンスター出ないからわからないっしょ」

 全員一時シーンとなる。おい! ベニー! その発言はまずい! 

「……今のなしっしょやっぱりモンスターわんさか出る」
「そりゃそうだろ。そんな町あるわけない。あったら人で溢れかえってるだろ、そこは」
「その通りぞ。どのような地域でもモンスターはおろう」
「それより全員用心しろ! 早速どころか……なんだ、あのモンスターの群れは」

 シーが目にしたもの。それは、こちらを狙うわけではない、飛空しているモンスターの群れ。
 パッと見ただけでも百程の飛空モンスターが視界に入った。

「道理で護衛が必要なわけだ。数匹まとまって現れるだけでも厄介そうなモンスターがこんなに」

 色からして毒持ちの飛空モンスターもいる。
 さらにはそれぞれのモンスターが統一されておらず、群れのボスもいない。
 考えにふけっていると、シーの座っている部分から声が聞こえてきた。

「こちらソアンだ。聞こえるかな? シー君。トキシックエイヴィアンが複数いる。
事前に毒防の魔術を展開する!」
「聞こえます! でも待ってください! あなたたちもエビルイントシケートに感染しているかも
しれません。ですから魔術を行使するのは控えてください! 薬がどう考えても足りないんです!」
「しかし、我々の任務は男爵を守る事だ。そのためなら危険など考えている暇はない! 
あの数のトキシックエイヴィアンを無傷で突破など不可能だ!」
「不可能? いえ、可能でしょう。不可能を不可能だと決めつけてしまえば、確かに不可能となる。
しかし、出来ると信じれば道はみえてくるものです。
ここは、我々に任せて極力離れていてください。
もし打ち損じがそちらに向かった時だけ、防毒の魔術を!」
「だが! それでは君たちが……」
「ビー、聞こえてたよな? トループの鉄則、声を大きく頼む!」
「ああ! 戦場には身分も差別も、ルールすらもない」
『あるのは強さのみ!』
「先行してくれ。俺とベニーで半分はやる」
「今度こそ私も戦おうぞ」
「俺っちも壁くらいは作れるじゃんよ。でも魔術は行使しない方がいいじゃん?」
「ああ。ジェイクはいつでも馬車を動かせるようにしといてくれれば十分。
危険だと判断したら放れていても構わない」
「冗談じゃないじゃん。俺っちもトループだぜ。びびって逃げたら務まらないじゃん」
「シー。馬車の上、代わってくれ。ここから狙い撃つ。ジェイク、合図通り動いてくれ」
「わかったじゃん」
「ふう。前言撤回だ。俺たち全員で、全部倒す」
『ああ!』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

妹と歩く、異世界探訪記

東郷 珠
ファンタジー
ひょんなことから異世界を訪れた兄妹。 そんな兄妹を、数々の難題が襲う。 旅の中で増えていく仲間達。 戦い続ける兄妹は、世界を、仲間を守る事が出来るのか。 天才だけど何処か抜けてる、兄が大好きな妹ペスカ。 「お兄ちゃんを傷つけるやつは、私が絶対許さない!」 妹が大好きで、超過保護な兄冬也。 「兄ちゃんに任せろ。お前は絶対に俺が守るからな!」 どんなトラブルも、兄妹の力で乗り越えていく! 兄妹の愛溢れる冒険記がはじまる。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...