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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百三十六話 ツインの新造形術

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 ブシアノフ男爵が収める十二領区。その中央に位置する男爵の城手前にある一角。
 現在ビー、シー、メナス、ベニー、ジェイクの五人はまさに、男爵護衛の任務を
引き受けるべく、実力を確かめられる最中。
 直進すれば大きな建物があり、その付近に一名トループらしき人物がいる。
 その周りを、無数の整列された高い植木や彫像物が置いてある。
 さらに整備された植物の奥は見えづらく、死角も多い。

「全部で七人……かな。足音からそれなりの実力者がいる。
 武器は弓、銃、短剣あたりか。大物を持っている奴はゼロ。それ以外に変なのがニ」
「……足音、聞こえるか?」
「全然聞こえないっしょ。耳どうなってるの? この人」
「さっきから変な音が聞こえ始めたんだ。十分警戒してくれ」
「あ、ああ。一番厄介そうな銃をどうにかする。ベニー。実践は久しぶりだろ? 
抜かるなよ」
「心配でしょうがないって顔してるっしょ。大丈夫、足はもう引っ張らない」
「今から惚気るのはやめてくれ。精神的に応えるぜ」
「すまない、そんなつもりじゃない……っていっても無理があるか。
それじゃ俺は別行動で東回りにいく。ベニーとビーでうまく連携してくれ! 散!」

 馬車の裏手側より東へ一気に展開する。メナスとジェイクには馬車へ入ってもらった。
 何かあっても馬車内なら応対できるだろう。
 
「……妖氷造形術、フィヨルド」

 氷の遮蔽物を作り、相手の視界を阻害する。突然これが現れれば相当な警戒を与えるだろう。
 だが、それでいい。このフィヨルドそのものから攻撃が出てくると思わせる。
 
「妖氷造形術、ブラックイーグル。妖赤星……レッディスターナルバレット」


 俺はこの二か月、氷造形術に偏った特訓をアネさんと行った。それにより新しい銀企鵝で
非常に醜い透明なペンギン二匹と、赤星を駆使した弾丸を込める銃を生成可能となった。
 どちらも非常にありがたい存在だ。

「捕食は生物以外の固形物。いいな。いけ! レッディスターナルバレット!」

 フィヨルドの壁を突き破り、二人の何者かがいるあたりへ弾丸を撃ち込む。
 これ自体の殺傷能力を目的としたものではない。そう、これは……俺が真化の時に用いる
技を小型化、凝縮したもの。捕食を目的とした恐るべき術の一つだ。

 
「うわぁー! 怪物か!? く、撃て!」
「ダメだ、動きが速い! 短剣も所持すべきだった!」

 躍り出た二人はどちらも銃を保持しており、こちらのフィヨルドめがけて突っ込んでくる。
 レッディースターナルパレットは付近の石像にかじりつき、猛烈な勢いで捕食していた。

 対象を人にしていない分、あの二人が持っている獲物に行くとは限らないか。

「この突然現れた巨大物から撃たれたよな」
「用心しろ。何かしらの強力な能力者だろう」

 ご明察。随分と把握能力も高い。優秀なトループを抱えているな。
 足音もかなり殺して銃をそれぞれ構えながらゆっくり近づいてくる。
 無駄にビビって銃を撃ったりしないあたりを見ても相当な手練れだ。
 エルゲンとフィルミナとは格段に違う。
 
「氷だな、これ。しかもかなり分厚い。これを貫通して撃ってきたのか?」
「直接狙っていないあたりを見ると、手加減したか、或いは特定の条件下でしか
発動できないか」

 やるね。けど……近づきすぎかな。

「ゥォーィ!」
「ゥォィ!」

 二匹のペンギンに左右から挟むように突進され、横倒れになる二人。
 急ぎ躍り出て武器を薙ぎ払い、両者の首を手で押さえた。

「……俺たちの負けだ」
「ぐ……見えない攻撃とは。油断はしていなかったのに」
「先手を打てたからな。本気具合は伝わったかい?」
「十分だよ。名を、アレクセイ・ソアンという。私たちは敗北だ」
「同じく弟、アレクセイ・フェン」
「兄弟か。道理で息ぴったりなわけだよ」
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