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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め
第五百三十一話 ルートビー 一領区
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気絶してしまったエーを休ませ、先に旅立つルートビー一行。
下町からアクセスできる、一領区へと向かう。
下町から十の門があり、それぞれのトループが管轄するエリアへ通ずる上、一領区から
十領区へは、どのような市民でも道は開かれている。
そこから先の貴族街である十二領区から十九領区へは、特定の馬車か、通行許可証が必要となる。
「一領区へ来るのは久しぶりだな」
「来た事があるのか?」
「一から五領区は比較的行きやすい。六から十領区は治安が悪いんだ」
「つまり管理者が有能……か。コーネリウスには悪いと思うが、父の伯爵は
そこまで有能な人物ではないということなのかな」
「そのあたりはメナスの方が詳しいんじゃないか?」
「……その通りぞ。本来であれば私があちらのルートへ向かうべきであろう?」
「いや、目立ちすぎるだろう。あっちはレニーが適任だよ。あいつの能力はおっかないくらいだ」
「そんなに優れた女性だったのか? 気付かなかった」
恐るべきは声を、特徴をまねる力だ。何度いたずらをされただろうか。
本人としては励ましているつもりだと思う。
しかし今の俺には厳しい励ましだった。
「それにあちらにはアネさんもいる。彼女の能力とエーの地形把握能力。
この組み合わせは絶妙だろうな」
「絶妙に危うい組み合わせにも思えるけど、頑張って欲しいな」
「そうだな……まもなく一領区だな。トループらしき人物が見える」
「ん? 警戒中か? 珍しいな。何かあったんだろうか」
一領区にさしかかったところで、数人のトループが何かを探しているようだった。
物取りにでもあったのだろうか?
ここはなるべく普通に通り過ぎたいところだが……二領区から入るべきか?
「おっと。腕っぷしの強そうなのいるじゃん。ちょっと来てくれよ。金が稼げるぜ」
「いや、先を急いでる最中なんだ」
「一領区から先にか? 貴族には見えないけど」
「呼ばれていて、用事が」
「あれ、そんな話聞いてないけどな」
「極秘なんだよ」
「それなら尚更腕っぷしで証明しないと。御者以外は必要条件じゃん?」
「……参ったな」
「いいぜ。それですんなり通れるはずだ」
「トループの鉄則ってやつか……仕方ない。わかった。短時間ですませてくれ」
「ああもちろんだ。今腕相撲大会をやっててな。ここを通る腕っぷしの強そうなやつ全員に
声かけてんの。賞金は……金貨八枚だな。どうする? そっちの兄ちゃんと……随分と背が高い兄ちゃん?
後、おかしな帽子の姉ちゃんもやるか?」
「私はいいっしょ。汗臭いのは嫌い」
「遠慮しようぞ」
「じゃあ俺とビーかな」
「俺もでるのか? あんまり腕相撲は得意じゃ……ああ、そういうことか。わかった」
さすがにくみ取ったようだ。早めに負けて興味をなくさせる。その間
俺以外の空気を薄くする。目立つのは一人でいい。
最悪俺がばれても三人は通過出来るだろう。
「よー-し、相手は八人抜きしてる、ゴボレオ、ゴンザレスだ! 見ろ、この二頭筋!
そして腕相撲に大事な大胸筋を! 一気にぶっとぶぜぇ!」
「早くしてくれ。手ーでけぇな。何食ったらこんなでかくなる?」
「へっへっへ。女みてぇな小さい手だな。折れても文句言うなよ」
「用意……はじめ!」
わぁーっと一斉に歓声が上がる。
あれ、けろっとしてるな、ビー。どうしたんだ?
ふぅとため息をついて必死に押し倒そうとするゴンザレスが徐々に優勢になる。
そしてパタリとあっさり負けた。
「ゴンザレウ九人抜き! いよいよ十人抜きか!」
「ぜぇ、ぜぇ……やるじゃねえか。驚いたぜ。だが俺の方が強い!」
「そ、そうだな。もっと鍛えておくよ。それじゃな」
どう考えてもわざと負けたな……見せかけの筋肉だったようだ。
しかも単純な力比べだけしてもビーにはあまり意味がないだろう。
下町からアクセスできる、一領区へと向かう。
下町から十の門があり、それぞれのトループが管轄するエリアへ通ずる上、一領区から
十領区へは、どのような市民でも道は開かれている。
そこから先の貴族街である十二領区から十九領区へは、特定の馬車か、通行許可証が必要となる。
「一領区へ来るのは久しぶりだな」
「来た事があるのか?」
「一から五領区は比較的行きやすい。六から十領区は治安が悪いんだ」
「つまり管理者が有能……か。コーネリウスには悪いと思うが、父の伯爵は
そこまで有能な人物ではないということなのかな」
「そのあたりはメナスの方が詳しいんじゃないか?」
「……その通りぞ。本来であれば私があちらのルートへ向かうべきであろう?」
「いや、目立ちすぎるだろう。あっちはレニーが適任だよ。あいつの能力はおっかないくらいだ」
「そんなに優れた女性だったのか? 気付かなかった」
恐るべきは声を、特徴をまねる力だ。何度いたずらをされただろうか。
本人としては励ましているつもりだと思う。
しかし今の俺には厳しい励ましだった。
「それにあちらにはアネさんもいる。彼女の能力とエーの地形把握能力。
この組み合わせは絶妙だろうな」
「絶妙に危うい組み合わせにも思えるけど、頑張って欲しいな」
「そうだな……まもなく一領区だな。トループらしき人物が見える」
「ん? 警戒中か? 珍しいな。何かあったんだろうか」
一領区にさしかかったところで、数人のトループが何かを探しているようだった。
物取りにでもあったのだろうか?
ここはなるべく普通に通り過ぎたいところだが……二領区から入るべきか?
「おっと。腕っぷしの強そうなのいるじゃん。ちょっと来てくれよ。金が稼げるぜ」
「いや、先を急いでる最中なんだ」
「一領区から先にか? 貴族には見えないけど」
「呼ばれていて、用事が」
「あれ、そんな話聞いてないけどな」
「極秘なんだよ」
「それなら尚更腕っぷしで証明しないと。御者以外は必要条件じゃん?」
「……参ったな」
「いいぜ。それですんなり通れるはずだ」
「トループの鉄則ってやつか……仕方ない。わかった。短時間ですませてくれ」
「ああもちろんだ。今腕相撲大会をやっててな。ここを通る腕っぷしの強そうなやつ全員に
声かけてんの。賞金は……金貨八枚だな。どうする? そっちの兄ちゃんと……随分と背が高い兄ちゃん?
後、おかしな帽子の姉ちゃんもやるか?」
「私はいいっしょ。汗臭いのは嫌い」
「遠慮しようぞ」
「じゃあ俺とビーかな」
「俺もでるのか? あんまり腕相撲は得意じゃ……ああ、そういうことか。わかった」
さすがにくみ取ったようだ。早めに負けて興味をなくさせる。その間
俺以外の空気を薄くする。目立つのは一人でいい。
最悪俺がばれても三人は通過出来るだろう。
「よー-し、相手は八人抜きしてる、ゴボレオ、ゴンザレスだ! 見ろ、この二頭筋!
そして腕相撲に大事な大胸筋を! 一気にぶっとぶぜぇ!」
「早くしてくれ。手ーでけぇな。何食ったらこんなでかくなる?」
「へっへっへ。女みてぇな小さい手だな。折れても文句言うなよ」
「用意……はじめ!」
わぁーっと一斉に歓声が上がる。
あれ、けろっとしてるな、ビー。どうしたんだ?
ふぅとため息をついて必死に押し倒そうとするゴンザレスが徐々に優勢になる。
そしてパタリとあっさり負けた。
「ゴンザレウ九人抜き! いよいよ十人抜きか!」
「ぜぇ、ぜぇ……やるじゃねえか。驚いたぜ。だが俺の方が強い!」
「そ、そうだな。もっと鍛えておくよ。それじゃな」
どう考えてもわざと負けたな……見せかけの筋肉だったようだ。
しかも単純な力比べだけしてもビーにはあまり意味がないだろう。
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