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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め
第五百二十四話 続バイブランシーの酒場 コーネリウスの到着
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「なるほど。そんな事が……ツインさんらしいですね」
「らしいかな。あいつがいなくなってから俺は……らしさを失いかけてる気がするんだ」
「そんなこと、ありませんよ。あなたの中にあの人の面影はあります。だから今は……」
「二人とも。そろそろではないか? 少々遅れるのがコーネリウスらしいが」
「……ふう。少し気が重い。だが、彼が今後の鍵であることに間違いないだろうな」
先生、それからメナスと会話していた俺は、酒場の入り口辺りを見る。
随分と出来上がった客が多いが、酒場内はまだまだ盛況。ブネの第二演奏が
始まるのを、今か今かとまっている客も多い。
この酒場には俺の妻たちと、メルザが封印されているブネがいる。
俺が意地でもブネの傍を片時も離れず守るはずだった。
当然全員に却下され、弟子である私たちが守るのだと、つまはじきにされたのは先日の話だ。
まぁ心配ではあるが、彼女たちを信用している。
最高に気の利いた妻たちだよ、本当に。
そう考えている時、ぎぎいと酒場の扉が開く。
一人の女性らしき姿をした者が入ってきて、あたりを見回していた。
「今日は予約でいっぱいだよ。他をあたって」
「……予約してある。先にエー、ビー、シーという者が……」
「……あるものを見せてくださる?」
「……これを」
「奥へご案内ー!」
サニーが連れてきたのは見まごう事なき女性……のはずだったのだが。
どう考えてもこれがコーネリウスなのだろう。
開いている椅子にちょこんと腰を掛ける姿など、まさに女性のそれだった。
「……コインの色は」
「青」
「本当にコーネリウス……か?」
「ああ。そうだ。これも教養の一つだよ。貴族は狙われやすいからね。それより
メンバーが随分と違うようだが?」
「すまない。エーもビーも厄介な病で退席している」
「そうか……そちらは?」
「私は医者です。こちらは助手のスピア」
「よろしくな!」
「こら。失礼ですよ。すみません、まだ見習いなもので」
「いいや、気にしなくていい。医者か。下町に医者はいなかったと思うが」
「信頼できる筋の知合いを連れてきたんですよ」
「そうか……まぁいい。それで、もう一人は」
「久しぶりだな、コーネリウス」
わずかに変装を外して姿を見せるメナス。それを見て青ざめるコーネリウス。
「……君がなぜこんなところに。第九領区に落とされたと聞いた」
「その通りぞ。そして、こやつらを捕えた」
「何だと! つまり君は……」
「落ち着けコーネリウス。声を静めろ」
賑わう酒場とはいえ、立ち上がり怒気を立てれば注目されかねない。
それはできる限り避けたい。
「……すまなかった。それに、様子からして、彼らを捕縛し交渉をしようという風には見えない」
「違う。貴様にとっても重要な話ぞ。そして証拠である私が必要だった。
医者がいるのもそのためだ」
「? どういうことだ? 意味がわからない」
「先生」
「ええ。後は私が説明を。現在この国で、エビルイントシケートという伝染病が流行し始めています。
ご存じでしたか?」
「エビル……イントシケート? 聞いたことはある。だがこの国での発病は聞いた事が無いぞ」
「やはり……最近もたらされたもので間違いないようです。第九領区内で発症していたものがおり、症状
から伝染病と判断し、対処の仕方がわからず、かつ医者が貴族街にしかいないことから
メナスさんは第九領区で病を食い止めようとしていたようです」
「そこを通ったシーたちを止める必要はないだろう?」
「貴族街からもたらされた病ぞ。標的は私ではないだろうが、こやつらが運悪く夜盗に襲われた場所が
第九領区。夜盗共々まとめて捕えた。その方が安全だからだ」
「……つまりシーは懇願してメナスに同意を取り、ここまで遅れず会いに来たというのか」
「違う。脱走し、私を打ち負かしてここまで来た」
「……あきれたやつだ。銀髪の女狐を打ち負かしたのか。魂抜きを恐れぬとは」
「シーは少し特殊のようぞ。それはいいとしてコーネリウス。こちらの話を続けるためにも、貴様の要件を述べよ」
「困惑しているんだ。少しくらい落ち着かせろ。どうしてこうも問題が積みあがるんだ……
はっきり言ってシーは信用できると判断した。だがメナス。私はお前を助けられなかった。
第九領区へ落ちるのも止められなかった。恨まれていてもおかしくない相手を、信用できない」
「なれば私はシーの道具となろうぞ。貴族が敗北し認めた相手にどうするかはわかっていよう」
「はい? 知らないよ? そんなの」
「ああ、そういうことか……ならばこれをはめろメナス。そうすれば貴様を信用しよう」
ぴぃーんと何かを投げて渡すコーネリウス。青色に輝くピアスのようだ。
それを迷わず耳に装着するメナス。
どんどん勝手に話が進行して置いて行かれる。
「ならばよし。話を進めよう」
「全然よくないよね? 俺、ほったらかして凄い大事な話してたよね?」
「気にしなくてよい。その先の話が重要ぞ」
……一体何だったんだ? 今の。
「らしいかな。あいつがいなくなってから俺は……らしさを失いかけてる気がするんだ」
「そんなこと、ありませんよ。あなたの中にあの人の面影はあります。だから今は……」
「二人とも。そろそろではないか? 少々遅れるのがコーネリウスらしいが」
「……ふう。少し気が重い。だが、彼が今後の鍵であることに間違いないだろうな」
先生、それからメナスと会話していた俺は、酒場の入り口辺りを見る。
随分と出来上がった客が多いが、酒場内はまだまだ盛況。ブネの第二演奏が
始まるのを、今か今かとまっている客も多い。
この酒場には俺の妻たちと、メルザが封印されているブネがいる。
俺が意地でもブネの傍を片時も離れず守るはずだった。
当然全員に却下され、弟子である私たちが守るのだと、つまはじきにされたのは先日の話だ。
まぁ心配ではあるが、彼女たちを信用している。
最高に気の利いた妻たちだよ、本当に。
そう考えている時、ぎぎいと酒場の扉が開く。
一人の女性らしき姿をした者が入ってきて、あたりを見回していた。
「今日は予約でいっぱいだよ。他をあたって」
「……予約してある。先にエー、ビー、シーという者が……」
「……あるものを見せてくださる?」
「……これを」
「奥へご案内ー!」
サニーが連れてきたのは見まごう事なき女性……のはずだったのだが。
どう考えてもこれがコーネリウスなのだろう。
開いている椅子にちょこんと腰を掛ける姿など、まさに女性のそれだった。
「……コインの色は」
「青」
「本当にコーネリウス……か?」
「ああ。そうだ。これも教養の一つだよ。貴族は狙われやすいからね。それより
メンバーが随分と違うようだが?」
「すまない。エーもビーも厄介な病で退席している」
「そうか……そちらは?」
「私は医者です。こちらは助手のスピア」
「よろしくな!」
「こら。失礼ですよ。すみません、まだ見習いなもので」
「いいや、気にしなくていい。医者か。下町に医者はいなかったと思うが」
「信頼できる筋の知合いを連れてきたんですよ」
「そうか……まぁいい。それで、もう一人は」
「久しぶりだな、コーネリウス」
わずかに変装を外して姿を見せるメナス。それを見て青ざめるコーネリウス。
「……君がなぜこんなところに。第九領区に落とされたと聞いた」
「その通りぞ。そして、こやつらを捕えた」
「何だと! つまり君は……」
「落ち着けコーネリウス。声を静めろ」
賑わう酒場とはいえ、立ち上がり怒気を立てれば注目されかねない。
それはできる限り避けたい。
「……すまなかった。それに、様子からして、彼らを捕縛し交渉をしようという風には見えない」
「違う。貴様にとっても重要な話ぞ。そして証拠である私が必要だった。
医者がいるのもそのためだ」
「? どういうことだ? 意味がわからない」
「先生」
「ええ。後は私が説明を。現在この国で、エビルイントシケートという伝染病が流行し始めています。
ご存じでしたか?」
「エビル……イントシケート? 聞いたことはある。だがこの国での発病は聞いた事が無いぞ」
「やはり……最近もたらされたもので間違いないようです。第九領区内で発症していたものがおり、症状
から伝染病と判断し、対処の仕方がわからず、かつ医者が貴族街にしかいないことから
メナスさんは第九領区で病を食い止めようとしていたようです」
「そこを通ったシーたちを止める必要はないだろう?」
「貴族街からもたらされた病ぞ。標的は私ではないだろうが、こやつらが運悪く夜盗に襲われた場所が
第九領区。夜盗共々まとめて捕えた。その方が安全だからだ」
「……つまりシーは懇願してメナスに同意を取り、ここまで遅れず会いに来たというのか」
「違う。脱走し、私を打ち負かしてここまで来た」
「……あきれたやつだ。銀髪の女狐を打ち負かしたのか。魂抜きを恐れぬとは」
「シーは少し特殊のようぞ。それはいいとしてコーネリウス。こちらの話を続けるためにも、貴様の要件を述べよ」
「困惑しているんだ。少しくらい落ち着かせろ。どうしてこうも問題が積みあがるんだ……
はっきり言ってシーは信用できると判断した。だがメナス。私はお前を助けられなかった。
第九領区へ落ちるのも止められなかった。恨まれていてもおかしくない相手を、信用できない」
「なれば私はシーの道具となろうぞ。貴族が敗北し認めた相手にどうするかはわかっていよう」
「はい? 知らないよ? そんなの」
「ああ、そういうことか……ならばこれをはめろメナス。そうすれば貴様を信用しよう」
ぴぃーんと何かを投げて渡すコーネリウス。青色に輝くピアスのようだ。
それを迷わず耳に装着するメナス。
どんどん勝手に話が進行して置いて行かれる。
「ならばよし。話を進めよう」
「全然よくないよね? 俺、ほったらかして凄い大事な話してたよね?」
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