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第四部 主と共鳴せし道 第一章 闇のオーブを求め

第五百七話 真っ暗な牢屋

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「その中に入ってな。処遇は後で決まるだろうよ」
「おい! 俺たちは襲われていた方だぞ!」
「知らねーよ命令なんだから。女狐様に目をつけられた時点で不幸だったな」
「俺たちトループだぞ。なんで捕らえられなきゃいけないんだ」
「別に関係ねえんじゃねえの。トループだってんなら今の現状知ってるだろ。
どこの隊にやばい奴がいるかもわからねーし。ノーブルじゃなきゃ別にいなくなっても
不自然じゃねーし? まぁ精々助かる事を祈るんだな」
「あ、おい! おい!」

 俺たちを牢屋に入れた奴は、ガチャリと鍵をかけた後どこかへ行ってしまった。
 先ほどまでは扉から光が差し込んでいたが、この部屋には明かりがない。
 真っ暗だ。

「暗いであります! 明かりが欲しいであります! シー、火をつかって明かりをつけて
欲しいであります!」
「少し待ってくれ。光がまったく差し込まないってことは酸素の通り道もそんなにないかもしれない。
窒息するほど空気の流入がないとは思えないが、気分が悪くなったりする可能性はある」
「……シー、お前よく頭が回るな、この暗闇の状況で」
「さっき光がさしていた時に部屋の間取りなどは頭に入れた。何も見えなくても俺には感覚でわかる」

 ……前世、現世ともに目が不自由だった俺には空間把握能力が異常に高い。
 特に空気の流れを感じる力は相当あるだろう。この部屋の空気の流れは……あそこか。


 牢屋の中、奥の下の辺りに風の通り道がわずかにあった。
 そこを少し叩いてみる。コンコンという軽い音がした。
 二人に気づかれないように、パモへと合図を送った。
 すると、突風が吹いて、先ほどの場所へ風が強くあたると、空気が十分通ったのが確認できた。

「この一か所を破壊すれば明かりがつけられそうだ。二人とも、少し大きめの音を立てていてくれないか?」
「任せろ。トループの鉄則、第一!」
「トループはいかなる時でも冷静沈着であります!」
「トループの鉄則第二!」
「トループはいかなる時でも国への熱い思いを忘れてはならないであります!」
「トループの鉄則その三!」
「……おーい、もういいぞ。無事開けられた。さっきの奴らも来ないようだな」

 声を出させた目的は別に大きな音を立てさせるためではなく、注意をそらすため。
 特にビーは感覚が鋭すぎる。パモに気づかれるわけにはいかない。

 二人が大声を出している間、暗闇の中パモに布を出してもらい、火をともすことができた。
 本当にパモがいてくれると助かる。

「布、落ちてたのか?」
「ああ。あまり長くはもたないが、地形の把握くらいはできるだろう?」

 火の明かりに照らされて、あたりの地形が映し出される。
 古いベッドが一つ、ツボが一つ、骨が落ちている程度で他には何も見当たらなかった。

「破壊して脱出してもいいが、騒ぎはあまり起こしたくはないな」
「コーネリウスからもらった青いコインを見せてもだめなのか?」
「あれは御者に渡してある。降りるときに再度受け取る予定だったんだが……そうか、コーネリウスか」
「いや、第九領区の女狐と言えば貴族嫌いで有名だ。伏せた方がいい」
「そうか……そうなるとやっぱ脱出かな。しかし同じトループでも関係ない……か」
「第十未満は無法地帯。賃金も安いしいわゆる捨て駒ってやつだな」
「第十未満? つまりこの領区もそうなのか?」
「そういう事。無法者同士何やってもばれなきゃいいって事さ。しかし厄介な奴に目をつけられた。
魂抜きの銀髪女狐。一筋縄じゃいかないぜ」
「けど俺たち明日、酒場に行かなきゃそれはそれでまずいよな」
「ああまずいな。伯爵の息子直々のお願いをすっぽかしたとあれば、どうなることやら」
「自分もどうにかしたいであります!」
「……仕方ない、か。二人とも。地形把握やここのトループの動きを探りたい。
協力してくれ」

 とんだ災難に巻き込まれた俺たちは、釈放を待つのではなく、脱出を試みる事にし、その準備を始めた。

 
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