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第四章 メルザの里帰り
第四百八十四話 力に振り回される事もまた、強さ
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どのくらい時が経ったのだろう。目を覚ませば、ファナの膝の上だった。
上空は暗い何かで覆われており、よく見えない。
だがファナだというのはわかる。
「ファナ……俺はどのくらい眠ってたんだ」
「半刻位かな。もう少しそのまま寝てていいのよ」
「腕が上がらない。ハクレイに言われたのを無視したらこのざまだ。
俺の腕、どうなってる?」
「……ボロボロよ。アネさんがいたからよかったけど、いなかったらしばらく
先生につきっきりで見てもらわないといけなかったわ」
「そうか……それで、メルザは?」
「無事、封印されたわ。だから安心して、今は休んでいて……」
「お前、泣いているだろう。俺だけゆっくり、休んではいられない」
「何言ってるの! 一番泣きたいのはルインじゃない。私なんかよりずっと責任を
感じて苦しんでるのは、あなたじゃない! いいのよ苦しまなくても。
メルザは半年で帰ってくる。その間、寂しく何てさせたりはしないわ」
「ダメだ。お前たちは身ごもったんだろう? どこにも連れていくわけにはいかない」
そう話していると、もう一人、近づく気配がした。
それは、メルザを封印したブネであると直ぐにわかった。
「安心しろ。メルザ以外の娘の子らは保護されている。どれほど動きまわっておっても
半年経つまでは問題ない。メルザが戻るとともに子供らも産まれる。
だがメルザだけは地上で産ませるわけにはいかぬ。あの娘は体が弱い。
あのままであれば出産の反動で命を落とす。封印の中で産ませる」
「……まったく、ブネは勝手だな……」
「仕方あるまい。アルカイオス幻魔の血。絶やすわけにはいかないのでな。
メルザには百人程出産してもらいたいが……」
「無茶言うな。ロボットじゃあるまいし……」
ブネの突拍子もない話で少し気持ちが楽になった。
見上げると世界は相変わらず丸い二つの何かしか見えなかった。
「ちょっとあんた! いつまでそうしてるつもりなわけ? 毎回いいとこ持ってって!」
「そうっしょ。ファナの足じゃルインを担いでいけないっしょ。私らがシュイオン先生の
ところまで運ぶから」
「すまない。両腕が動かなくて術も行使できそうにない。ラージャと対峙した
辺りまでは覚えてるんだが、どうなったんだ」
「ルインの剣が展開して、防御壁のようなものを発していたわ。もうだめだと思ったけど」
「あいつら、勝手に俺の事守ってくれたのか……結局助けられてばっかりだな」
「それでいいっしょ。いつも一人で頑張りすぎ」
俺は、頼る事を覚えなければいけないのだろう。ハクレイにも言われた。
このままシフティス大陸に向かえば命を落とす……か。
我が主に再び会う前に命を落とすなどあってはならない。
「済まない、三人共。やっぱり力を貸してくれ。頼りにしてるから」
「もーう! アイドルを忘れてないー? ひっどー。お腹に子供がいるのにぃー!」
「でたわね、ポット出おこぼれ娘!」
「なんであんたが苦労もせず、ルインの子供を宿してるっしょ!」
「そーよそーよ! ポットの癖に!」
「がーん……ニニーちゃん評判悪すぎーっ! でもアイドルはくじけませんー、残念でしたー」
そーいやニニーまで身ごもったとかブネが言ってたな……なんでこうなったんだ?
それに子供って言われてもまるで実感がない。俺やメルザは子供を育てられるのだろうか?
……そんな先の事考えても仕方ないか。半年で普通子供はできないが、滅茶苦茶なブネの事だ。
できてしまうのだろう。
「フェルドナージュ様や、フェドラートさん、アネスタさんは安息所に戻ったか?」
「ううん。城に一度戻るって。後ジェネストが話があるって」
「ああ。そちらはわかっている。俺もだ。こちらから向かおうと思っていたんだけど、悪いが
シュイオン先生のところまで連れてきてもらえるかな」
「もう伝えてあるっしょ。さ、いくよ」
メルザという明るい光がいなくなり、寂しさだけが漂う中、三人娘に担がれて
俺はシュイオン先生の治療所へと向かった。
上空は暗い何かで覆われており、よく見えない。
だがファナだというのはわかる。
「ファナ……俺はどのくらい眠ってたんだ」
「半刻位かな。もう少しそのまま寝てていいのよ」
「腕が上がらない。ハクレイに言われたのを無視したらこのざまだ。
俺の腕、どうなってる?」
「……ボロボロよ。アネさんがいたからよかったけど、いなかったらしばらく
先生につきっきりで見てもらわないといけなかったわ」
「そうか……それで、メルザは?」
「無事、封印されたわ。だから安心して、今は休んでいて……」
「お前、泣いているだろう。俺だけゆっくり、休んではいられない」
「何言ってるの! 一番泣きたいのはルインじゃない。私なんかよりずっと責任を
感じて苦しんでるのは、あなたじゃない! いいのよ苦しまなくても。
メルザは半年で帰ってくる。その間、寂しく何てさせたりはしないわ」
「ダメだ。お前たちは身ごもったんだろう? どこにも連れていくわけにはいかない」
そう話していると、もう一人、近づく気配がした。
それは、メルザを封印したブネであると直ぐにわかった。
「安心しろ。メルザ以外の娘の子らは保護されている。どれほど動きまわっておっても
半年経つまでは問題ない。メルザが戻るとともに子供らも産まれる。
だがメルザだけは地上で産ませるわけにはいかぬ。あの娘は体が弱い。
あのままであれば出産の反動で命を落とす。封印の中で産ませる」
「……まったく、ブネは勝手だな……」
「仕方あるまい。アルカイオス幻魔の血。絶やすわけにはいかないのでな。
メルザには百人程出産してもらいたいが……」
「無茶言うな。ロボットじゃあるまいし……」
ブネの突拍子もない話で少し気持ちが楽になった。
見上げると世界は相変わらず丸い二つの何かしか見えなかった。
「ちょっとあんた! いつまでそうしてるつもりなわけ? 毎回いいとこ持ってって!」
「そうっしょ。ファナの足じゃルインを担いでいけないっしょ。私らがシュイオン先生の
ところまで運ぶから」
「すまない。両腕が動かなくて術も行使できそうにない。ラージャと対峙した
辺りまでは覚えてるんだが、どうなったんだ」
「ルインの剣が展開して、防御壁のようなものを発していたわ。もうだめだと思ったけど」
「あいつら、勝手に俺の事守ってくれたのか……結局助けられてばっかりだな」
「それでいいっしょ。いつも一人で頑張りすぎ」
俺は、頼る事を覚えなければいけないのだろう。ハクレイにも言われた。
このままシフティス大陸に向かえば命を落とす……か。
我が主に再び会う前に命を落とすなどあってはならない。
「済まない、三人共。やっぱり力を貸してくれ。頼りにしてるから」
「もーう! アイドルを忘れてないー? ひっどー。お腹に子供がいるのにぃー!」
「でたわね、ポット出おこぼれ娘!」
「なんであんたが苦労もせず、ルインの子供を宿してるっしょ!」
「そーよそーよ! ポットの癖に!」
「がーん……ニニーちゃん評判悪すぎーっ! でもアイドルはくじけませんー、残念でしたー」
そーいやニニーまで身ごもったとかブネが言ってたな……なんでこうなったんだ?
それに子供って言われてもまるで実感がない。俺やメルザは子供を育てられるのだろうか?
……そんな先の事考えても仕方ないか。半年で普通子供はできないが、滅茶苦茶なブネの事だ。
できてしまうのだろう。
「フェルドナージュ様や、フェドラートさん、アネスタさんは安息所に戻ったか?」
「ううん。城に一度戻るって。後ジェネストが話があるって」
「ああ。そちらはわかっている。俺もだ。こちらから向かおうと思っていたんだけど、悪いが
シュイオン先生のところまで連れてきてもらえるかな」
「もう伝えてあるっしょ。さ、いくよ」
メルザという明るい光がいなくなり、寂しさだけが漂う中、三人娘に担がれて
俺はシュイオン先生の治療所へと向かった。
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