上 下
513 / 1,085
第四章 メルザの里帰り

第四百五十四話 漆黒衣のキャットマイルド

しおりを挟む
「燃刃斗!」

 突如としてメルザの燃刃斗が漆黒の衣めがけて振り下ろされる。しかし……幻術が効かない!? 

「何!? 上位幻術……一体どこからだ? そっちにいる貴様か!」
「これはもしかして、色や輪郭以外の視覚がほぼ失われているのかもしれませんね」

 メルザはキャットマイルドの視点からではジェネストの影に隠れていてよく見えない。そして……スピアの髪色はメルザと少し違うが赤色だ。
 
「こいつはもう……相当おかしくなっている」
「そうですね。このまま放置すれば何れ強大なアンデッドになるでしょう。
そして……レミとこの者が繋がっていた可能性は高いでしょう。ですが……なぜ彼女は
一緒では無いのか」
「おい、このキャットマイルドを攻撃していいと思ってるのか! こっちには人質が
いるのを忘れてるのか? ……しかし非力な少女と聞いていたがなかなかどうして。力がある」
「ぐっ……この下衆! 放せ! いい加減に、しろぉーーーーー!」

 一気に変身して巨大なクアドロプルドラゴンへと変わるスピア。
 つかまれていた状態を振りほどき、一気に強烈なブレスを吐き出した。

「う、ぐおおおお! なんだと!? 変身するなど聞いていないぞ! おのれ、メルザ!」
「なぁなぁ、あいつ何言ってんだ? 俺様ここにいるぞ?」
「しっ。どうやら勘違いしているようです。このままやり過ごしましょう」
「いまいましいが……クックック。どうやらこれは好機のようだな。なぜかは知らんが
ルインは動けないらしい。そのまま貴様の最愛の者が死にゆくのを眺めているがいい」


 ブレスをまともにうけつつも、その傷はみるみる回復していく。
 そして……ブレスを受けたときに少し顔色が見えた。
 顔面は真っ黒に染まり、どう見てもキャットマイルドの原型はとどめていない。

「何かの術か? これも常闇のカイナにいるものの能力か? まさに常闇……嫌な予感しかしない。
先生! 俺の体、どうだ!?」
「強力な電撃でも受けたのでしょうか……血管にかなりの傷を負っています。急いで治療を施していますが、もう少し治癒を助ける何かが……」
「やべ、忘れてた! 神魔解放! これでどうだ?」
「むぅ。これは凄いです。さすが……といってもまだ少しこのまま安静に!」
「ジェネスト、メルザ。すまない、俺が動けるようになるまでどうにか……」
「ルインさん、違うでしょう。あっちあっち」
「え? スピア?」

 完全に戦闘態勢に入っているのはスピア。そして、メルザと勘違いしているキャットマイルドのターゲットもスピアだった。

「グルオオオオオアアアアアアアアアア」
「くっ……うおおおお! なんという強烈なブレス! メルザ、許さん、許さんぞおおお!」

 まともにブレスを浴びながら後方に大きく吹き飛びつつ燃えるキャットマイルド。
 スピアは相当ご立腹のようだが、あいつもあまり無茶はさせられない。

「ジェネスト!」
「言われずとも! 最も深き闇、クリムゾン。血の底に在りて歪より生じる力の一旦。
万物在りて己が力を欲するものの意思となれ。闇の幻魔人クリムゾンダーシュ招来」

 十指の剣を携える男が、両手を胸の前で交差し現れる。美しい外見に鋭い眼光が光る。

「敵は」
「漆黒の衣を身に纏う者」
「数は?」
「今のところあいつのみです」
「承知。殿方殿、共闘を。おそらくかなりの強敵です」
「クリムゾンがそう感じるほどか。少しだけ時間を稼いでくれ」
「なるべくお早めに。行くぞジェネスト」
「命令するのは私の方です!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

櫻木零
ファンタジー
20XX年。特にこれといった長所もない主人公『朝比奈陽翔』は二人の幼なじみと充実した毎日をおくっていた。しかしある日、朝起きてみるとそこは異世界だった!?異世界アリストタパスでは陽翔はグランと名付けられ、生活をおくっていた。陽翔として住んでいた日本より生活水準が低く、人々は充実した生活をおくっていたが元の日本の暮らしを知っている陽翔は耐えられなかった。「生活水準が低いなら前世の知識で発展させよう!」グランは異世界にはなかったものをチートともいえる能力をつかい世に送り出していく。そんなこの物語はまあまあ地頭のいい少年グランの異世界建国?冒険譚である。小説家になろう様、カクヨム様、ノベマ様、ツギクル様でも掲載させていただいております。そちらもよろしくお願いします。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

処理中です...