512 / 1,085
第四章 メルザの里帰り
第四百五十三話 漆黒衣、襲撃
しおりを挟むしばらく横たわっていると、シュイオン先生が駆けつけてくる。
手を振って応えようとするが上がらない。参ったな、倒れていられる余裕はない。
「大丈夫ですか!? ルインさん! モンスターにやられたんですか?」
「いや、モンスターなんて可愛いものじゃない。怪物……っていうかあれは
アンデッドでもなかったしなんだったんだ? 精神体? いや、蹴り飛ばされたし殴られたな……」
「……? だ、大丈夫ですか? 今治療します!」
「先生、すまない」
「まったくあだらしないですね。それで主を守れるんですか?」
「うぐっ、ルーイズの力量を見る限りあのままじゃまずいと思ったのは確かだ。
この大陸の奥地でも通じないかもしれないと……」
「あなたの全てを見せたわけじゃないでしょう。私を取り込んだ時のあなたは、今の
あなたのように弱くはなかった。あの時の力はもう出せないのですか?」
「無茶言うな。野獣のような形態だったんだろ。それに……俺が望まない行動をとる形態に
何の意味があるっていうんだ」
「それでも主を守りたい……そこに意味があるのではないですか?」
「っ! 確かにその通りだ。どうにか力を制御できるようになれるよう、頑張ってみるよ」
「精進することです……と言ってもそれはあなただけじゃない。私も同じ事です」
ジェネストに厳しい指摘を受けるものの、その裏で
自分の変化に驚いてはいた。紫電清霜……スイッチがつながったっていうのかな。
この力は使い方が今のところ詳しくはわからないが、一段階上がった感覚はある。
先生に治療をしてもらいつつ、ジェネストに周囲を警戒してもらう。
レウスさんにも上空を見張ってもらおうとしていた。
そのタイミングだった。奴が現れたのは。そして……。
「……ターゲットに反応は無かった! こっちを狙っていたんじゃない。漆黒の衣? 何者だ!?」
「ふっふっふ。久しぶりだね、ルイン。君の最愛の人はこちらの手の中だ。悔しいだろう?」
「くっ……離せ! 離せぇー!」
「まったく困ったものだよ。いくら待っても聖堂には来ない。ロジアール村の方へも来ない。
おかげで随分と待ちぼうけさせられたよ。だがこれで……ようやく、ようやくだ」
「うぐ……はな……せ!」
「やめろ! その手を放せ!」
「おっと、今君は動けないようだな。強がるのは良くないんじゃないか?」
「お前一体何者だ!? なぜ俺を狙う!」
「何者か? ……何者かだと!? 覚えてないとでもいうのか! ふざけるな……ふざけるな
ふざけるなふざけるなぁぁぁ! この声、姿。一目見て分かるはずだ!」
「まったくわからない。そんな漆黒の衣を身にまとっていたら」
「漆黒の衣? 何を言っている。このキャットマイルド、そんなもの被ってなどいないだろう!」
「キャットマイルドだと? あいつは確か三夜の町で……」
死んだのを確認したわけじゃない。だが……とてもじゃないが助かったとは思えない。
それにおかしなことを口走っている。漆黒の衣を確かに身に纏っているし、声も別人。
こいつに一体何があったんだ?
「ふっふっふ。さぁルイン。貴様を最も苦しめられる方法だ。そこで貴様の大切な者が失われるのをよく見ているがいい! そして絶望に打ちひしがられている貴様を嬲り殺してやろう」
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~
すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。
無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』!
クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが……
1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる