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第四章 メルザの里帰り

第四百四十六話 ギル・ドーガに滅ぼされた地域

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 アンデッドを倒して周囲に敵がいないのを確認しつつ南下を続ける。
 ロジアール村という滅ぼされた場所から南へかなり進んだ方向。
 ここらも山脈地帯だったらしいが、山を切り裂き町や村を破壊しつくした。
 俺たちが以前遭遇した、あのギルドーガと同一の個体かどうかはわからないし、常闇のカイナがどこまで
関与しているかも不明。
 ただ一つ言える事は……。

「酷い有様だ。メルザ、大丈夫か」
「だいじょぶだ。俺様だって覚悟してる。もう町も村も、父ちゃんも母さんもいないってことくらい」
「……お前も一人ぼっちなのか」
「ちげーよ! 俺様にはいーーーっぱい家族がいるんだ。な? ルイン!」
「俺もメルザも一人だった。でも今は多くの仲間がいる。一緒に助け合って生きている。
スピア、お前も――――」
「うるさいうるさい! 気安く話しかけるな! 黙れ、黙れ人間ーーー!」
「……すまなかった。まだ、今はいい。先を急ごう。インステッド村に」
「俺様の村って、そんな名前だったっけかなぁ」
「そうミリルに聞いた。地域名で名前が異なる可能性はあるけど。何せ村や町が
密集しているエリアだったそうだ」
「うん、俺様はあんま外に出してもらえなかったからなー」
「無理もない。近くに奴隷を扱う町などもあった。人さらいが多いエリアだと
聞いている。このゲンドールに治安がいいエリアは少ないようだ。
だからこそドラディニアについてから、ずっとジェネストに守ってもらっていた」
「そーだったのか。ジェネスト、ありがとな! お前の事大好きだぞ!」
「っ! 別に私が好きでやっていたことです。感謝される覚えはありません」
「それって照れ隠しなのか、お前……ほぼ肯定しているけど」
「あなたは黙っていなさい。深淵に沈めますよ」

 こいつも少しベルローゼ先生に似ているところがあるな。
 これ以上突っ込むと本気で沈められかねないからやめておこう。

「さて……メルザ。ここからは俺が担いでいく。途中でコウテイ、アデリーが
消えたら大変だ。紐でしっかりくくりつけていくぞ」
「ああ。落ちねーように気を付ける」
「ジェネストは先生とスピアを頼む。と言っても先生は十分動けるけど」
「……別に動くくらいならちゃんとできる」
「竜族は傷が癒えるのも早いようだが、先生が側にいてあげたほうがいいだろう」
「ええ。患者ですからね、しっかり見ておかないと」

 メルザを抱え再び進みだす。もうインステッド村は近い。正確には跡地だろう。
 ただ、跡地というにはあまりにも残酷。
 自分が住んでいた地域が崩壊する……そんな事、前世だってなかなか受け入れられるような
事じゃない。
 幸いにもアンデッドの気配が今のところ無いのが救いだ。
 
「ここ、俺様の……故郷……? あ……」
「何か、思い出せそうか? この風景、この場所」
「う、ううん。ダメだ。俺様、ジャンカの森に落ちた時に色々忘れちまったのかな」
「どうかな……人間の記憶ってのは精神を保つために都合の悪い事はなるべく時間を
かけて忘れられるようにできている。あれからかなり時が経った。
俺もメルザも随分と成長した。前に進もう。メルザを育ててくれた人たちに、別れを
告げるために」
「うん。俺様、絶対泣かねーぞ。笑って、笑ってとむらいてぇんだ……絶対に、絶対に」
「だったら今は思い切り、泣いておけ。だからこそ、俺の背中にお前がいるんだ」
「うう、うわあーーーーーーー! あっ、ああっ、お父ちゃん、母さん。俺様、俺様
やっと、帰ってきたよ、帰って、帰ってこれたよ……」

 村の跡地入口で、メルザは俺の背中でめい一杯泣いた。
 俺はティソーナとコラーダを出し、十分に警戒しながら、メルザが落ち着くのを待った。
 ここから先のアンデッドは、村人かもしれない。いや、先ほど襲ってきたのもそうかもしれない。

 不死者を、弔いを、冥福を……それこそが、我が主の願いなのだから。
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