505 / 1,085
第四章 メルザの里帰り
第四百四十六話 ギル・ドーガに滅ぼされた地域
しおりを挟む
アンデッドを倒して周囲に敵がいないのを確認しつつ南下を続ける。
ロジアール村という滅ぼされた場所から南へかなり進んだ方向。
ここらも山脈地帯だったらしいが、山を切り裂き町や村を破壊しつくした。
俺たちが以前遭遇した、あのギルドーガと同一の個体かどうかはわからないし、常闇のカイナがどこまで
関与しているかも不明。
ただ一つ言える事は……。
「酷い有様だ。メルザ、大丈夫か」
「だいじょぶだ。俺様だって覚悟してる。もう町も村も、父ちゃんも母さんもいないってことくらい」
「……お前も一人ぼっちなのか」
「ちげーよ! 俺様にはいーーーっぱい家族がいるんだ。な? ルイン!」
「俺もメルザも一人だった。でも今は多くの仲間がいる。一緒に助け合って生きている。
スピア、お前も――――」
「うるさいうるさい! 気安く話しかけるな! 黙れ、黙れ人間ーーー!」
「……すまなかった。まだ、今はいい。先を急ごう。インステッド村に」
「俺様の村って、そんな名前だったっけかなぁ」
「そうミリルに聞いた。地域名で名前が異なる可能性はあるけど。何せ村や町が
密集しているエリアだったそうだ」
「うん、俺様はあんま外に出してもらえなかったからなー」
「無理もない。近くに奴隷を扱う町などもあった。人さらいが多いエリアだと
聞いている。このゲンドールに治安がいいエリアは少ないようだ。
だからこそドラディニアについてから、ずっとジェネストに守ってもらっていた」
「そーだったのか。ジェネスト、ありがとな! お前の事大好きだぞ!」
「っ! 別に私が好きでやっていたことです。感謝される覚えはありません」
「それって照れ隠しなのか、お前……ほぼ肯定しているけど」
「あなたは黙っていなさい。深淵に沈めますよ」
こいつも少しベルローゼ先生に似ているところがあるな。
これ以上突っ込むと本気で沈められかねないからやめておこう。
「さて……メルザ。ここからは俺が担いでいく。途中でコウテイ、アデリーが
消えたら大変だ。紐でしっかりくくりつけていくぞ」
「ああ。落ちねーように気を付ける」
「ジェネストは先生とスピアを頼む。と言っても先生は十分動けるけど」
「……別に動くくらいならちゃんとできる」
「竜族は傷が癒えるのも早いようだが、先生が側にいてあげたほうがいいだろう」
「ええ。患者ですからね、しっかり見ておかないと」
メルザを抱え再び進みだす。もうインステッド村は近い。正確には跡地だろう。
ただ、跡地というにはあまりにも残酷。
自分が住んでいた地域が崩壊する……そんな事、前世だってなかなか受け入れられるような
事じゃない。
幸いにもアンデッドの気配が今のところ無いのが救いだ。
「ここ、俺様の……故郷……? あ……」
「何か、思い出せそうか? この風景、この場所」
「う、ううん。ダメだ。俺様、ジャンカの森に落ちた時に色々忘れちまったのかな」
「どうかな……人間の記憶ってのは精神を保つために都合の悪い事はなるべく時間を
かけて忘れられるようにできている。あれからかなり時が経った。
俺もメルザも随分と成長した。前に進もう。メルザを育ててくれた人たちに、別れを
告げるために」
「うん。俺様、絶対泣かねーぞ。笑って、笑ってとむらいてぇんだ……絶対に、絶対に」
「だったら今は思い切り、泣いておけ。だからこそ、俺の背中にお前がいるんだ」
「うう、うわあーーーーーーー! あっ、ああっ、お父ちゃん、母さん。俺様、俺様
やっと、帰ってきたよ、帰って、帰ってこれたよ……」
村の跡地入口で、メルザは俺の背中でめい一杯泣いた。
俺はティソーナとコラーダを出し、十分に警戒しながら、メルザが落ち着くのを待った。
ここから先のアンデッドは、村人かもしれない。いや、先ほど襲ってきたのもそうかもしれない。
不死者を、弔いを、冥福を……それこそが、我が主の願いなのだから。
ロジアール村という滅ぼされた場所から南へかなり進んだ方向。
ここらも山脈地帯だったらしいが、山を切り裂き町や村を破壊しつくした。
俺たちが以前遭遇した、あのギルドーガと同一の個体かどうかはわからないし、常闇のカイナがどこまで
関与しているかも不明。
ただ一つ言える事は……。
「酷い有様だ。メルザ、大丈夫か」
「だいじょぶだ。俺様だって覚悟してる。もう町も村も、父ちゃんも母さんもいないってことくらい」
「……お前も一人ぼっちなのか」
「ちげーよ! 俺様にはいーーーっぱい家族がいるんだ。な? ルイン!」
「俺もメルザも一人だった。でも今は多くの仲間がいる。一緒に助け合って生きている。
スピア、お前も――――」
「うるさいうるさい! 気安く話しかけるな! 黙れ、黙れ人間ーーー!」
「……すまなかった。まだ、今はいい。先を急ごう。インステッド村に」
「俺様の村って、そんな名前だったっけかなぁ」
「そうミリルに聞いた。地域名で名前が異なる可能性はあるけど。何せ村や町が
密集しているエリアだったそうだ」
「うん、俺様はあんま外に出してもらえなかったからなー」
「無理もない。近くに奴隷を扱う町などもあった。人さらいが多いエリアだと
聞いている。このゲンドールに治安がいいエリアは少ないようだ。
だからこそドラディニアについてから、ずっとジェネストに守ってもらっていた」
「そーだったのか。ジェネスト、ありがとな! お前の事大好きだぞ!」
「っ! 別に私が好きでやっていたことです。感謝される覚えはありません」
「それって照れ隠しなのか、お前……ほぼ肯定しているけど」
「あなたは黙っていなさい。深淵に沈めますよ」
こいつも少しベルローゼ先生に似ているところがあるな。
これ以上突っ込むと本気で沈められかねないからやめておこう。
「さて……メルザ。ここからは俺が担いでいく。途中でコウテイ、アデリーが
消えたら大変だ。紐でしっかりくくりつけていくぞ」
「ああ。落ちねーように気を付ける」
「ジェネストは先生とスピアを頼む。と言っても先生は十分動けるけど」
「……別に動くくらいならちゃんとできる」
「竜族は傷が癒えるのも早いようだが、先生が側にいてあげたほうがいいだろう」
「ええ。患者ですからね、しっかり見ておかないと」
メルザを抱え再び進みだす。もうインステッド村は近い。正確には跡地だろう。
ただ、跡地というにはあまりにも残酷。
自分が住んでいた地域が崩壊する……そんな事、前世だってなかなか受け入れられるような
事じゃない。
幸いにもアンデッドの気配が今のところ無いのが救いだ。
「ここ、俺様の……故郷……? あ……」
「何か、思い出せそうか? この風景、この場所」
「う、ううん。ダメだ。俺様、ジャンカの森に落ちた時に色々忘れちまったのかな」
「どうかな……人間の記憶ってのは精神を保つために都合の悪い事はなるべく時間を
かけて忘れられるようにできている。あれからかなり時が経った。
俺もメルザも随分と成長した。前に進もう。メルザを育ててくれた人たちに、別れを
告げるために」
「うん。俺様、絶対泣かねーぞ。笑って、笑ってとむらいてぇんだ……絶対に、絶対に」
「だったら今は思い切り、泣いておけ。だからこそ、俺の背中にお前がいるんだ」
「うう、うわあーーーーーーー! あっ、ああっ、お父ちゃん、母さん。俺様、俺様
やっと、帰ってきたよ、帰って、帰ってこれたよ……」
村の跡地入口で、メルザは俺の背中でめい一杯泣いた。
俺はティソーナとコラーダを出し、十分に警戒しながら、メルザが落ち着くのを待った。
ここから先のアンデッドは、村人かもしれない。いや、先ほど襲ってきたのもそうかもしれない。
不死者を、弔いを、冥福を……それこそが、我が主の願いなのだから。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~
すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。
無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』!
クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが……
1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる