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第四章 メルザの里帰り

第四百四十三話 付近の偵察がてら見つけた果物

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 早朝にルインは神の空間を抜け出し、偵察に向かっていた。
 先生とスピア、ジェネストは起きているようだったが、あえて何も言わず
目くばせだけしておいた。

 
「スピアは落ち着いたな。任せておけば安心かな」
「ルイン、俺も起きてるからな。用事があれば呼んでくれな? な?」
「レウスさん。まだ休んでていいよ。戦うつもりはないからさ。主が起きた時用に
果物とかを探したくて。なにせレミのやつ……食料殆ど持ってったからな。
あいつらすげー食ってたからなぁ。どんな胃袋してるんだか……いや待てよ。
食い意地が張ってるやつらならもしかして……この辺は後回しだ」
「ルイン、何か見えるぞ。友達か?」
「飛び出すなよレウスさん……かなり遠いけどよく見えるな」

 どうしても一緒に行動したいようで、出てきてしまうレウスさん。
 俺一人だと寂しいと思っての事だろう。最初からレウスさんは変わらないな。

 レウスさんの示す方向を注視する。すると――――遠目にだが地中を掘っている
ような仕草の何かが見え隠れしていた。草が生い茂りすぎていてはっきりとはわからない。

 南下したここら一帯はかなり草が生い茂り、道という道が無い。
 恐らくアンデッドの巣窟となってから誰も近づかなくなったのだろう。
 動物や通常の魔物でさえも。

「可能性として考えられるのはアンデッドか。しかしなぜ掘っているんだ? 
ここからだとあまりわからないが、今は偵察だし近づくのはやめとこう」
「ルイン、反対側に果物があるぞ。これなんだ? 黄色いぞ」
「おや、これはバナナみたいだが……活火山が近くにあるし気候が温かいから
生えてるのかな。湿気はあまりないように思うが」

 レウスさんの指す木になるバナナっぽいそれをもぎ取り、匂いを嗅いでみる。
 ほぼバナナっぽい香りがするが、念のためシュイオン先生に聞いてからにしよう。
 先生ならこの辺りの果物にも詳しいはずだ。

「それなりの数があるな。束で持っていくか。たまにはこいつを使ってやらないとな。
封剣!」
「にゅいー-ん。てぃーちゃん参上でごじゃろ。何でごじゃろ?」
「バナナっぽいのを切る」
「果物を切るためにてぃーちゃんを呼んだでごじゃろ!? 酷いでごじゃろ!」
「だってお前、最近出番ないからさ。錆びてないか一応な」
「てぃーちゃんは錆びないでごじゃろ! おや、これはエーナちゃんの大好物
ナマルでごじゃろ」
「ナマル? バナナじゃないのか。どう見てもバナナっぽいんだけど」
「ナマルといって、クリーミーな濃い味が大人気でごじゃろ。食べてみるでごじゃろ」
「お、平気なのか? 信じるぞ。いいな?」
「平気でごじゃろ。てぃーちゃんを信じるでごじゃろ。そっちの青いのを食べるでごじゃろ」
「やっぱさっき怒ってたから後にするわ」
「……」

 めいいっぱいナマルを抱えて戻る。朝食はこれで何とかなるかな。
 うちの主は食いしん坊だから、本当はスッパムも用意してやりたいんだけど。
 
 急いで戻り、先生に取ってきたナマルを見せると食用で間違いないらしい。
 ただ……「この青い色のものはかなり苦いので止めた方がいいでしょう」
「……ティソーナめ。今度からしかワサビでもみつけてティソーナで切ってやるとしよう」

 そうつぶやきながら、黄色みが強いナマルを一本食べてみた。

「これは確かに。濃厚なヨーグルトみたいな味だ。バナナとはだいぶ違う味だがいける!」
「これだけ熟れたナマルは町じゃ食べれないですね。これも冒険の醍醐味でしょう。
ほら、スピアさんも」
「あ、ああ……本当だ。こんな果物美味しくないと思ってた」
「メルザも……あれ、だめだ。まだ寝てる。本当に朝が弱いなメルザは……」

 ジェネストにしがみついて寝てるメルザ。だがジェネストは嫌そうにはしていない。
 どこか少し、落ち着いている様子だった。
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