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第四章 メルザの里帰り

第四百四十話 修行の手始め

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 ここは海底神スキアラが住まう宙域のとある場所。キアラズにおける泡の中の一つ。
 その泡の中に入ると空間が広がるように視界が開け、大きな舞台がある。

 そこにベルディス、ハーヴァル、亀、うさぎ、そして遅れてきたシュウがいた。
 シュウは現在黙想中。邪念を捨て、己が持つ精神を鍛えている。
「カッメ……カッメ」
「ウッサ!」

 そしてなぜか亀イビンがウサガイセフィアの背中を押している。
 非常に苦しそうな亀。そしてけろっとしているウサギ。
 ベルディスとハーヴァルはそれを見ながら準備運動をしていた。

「今日から実践だろ。今のところ神兵には合ってないからな」
「そーいやおめぇの出身地には神兵いるだろ。実際のところどうだ?」
「魔王側が圧倒的に強いからな。どうと言われても返答に困る」
「そうか。俺ぁあんま、あの大陸に肌があわねぇ。つええ奴が多いのはいいが、貴族だの
なんだのくだらねぇしな」
「どこぞの貴族をぶん殴って指名手配されてたよな、ベルディスは」
「知らねえな。身分がどうとかごちゃごちゃ言ってたからよ。ウェアウルフにそんなものねえな」
「違いない。俺もうんざりだった。偉そうなやつをぶん殴るとすかっとするしな! はっはっは」
「汝ら、準備はよいか?」
「おせぇぞスキアラのおっさんよ。早いとこやろうや」
「汝、おっさんはやめよ。気性が荒いのはよいが言葉は慎むように」
「それで、対戦相手ってのは?」

 突如として現れたスキアラ。
 掲げた右手を垂直にして斬るように振り下ろすと、空間が裂け、歪から
何者かが二人現れる。どちらもかなりごつい。


「これなるは我が神兵末端。第六神兵イドとアド。
今の汝らと同等かそれ以上であろう」
「へぇ。俺たちと同等かそれ以上? 面白いな」
「そりゃいい。さっさとやろうぜ。精神修行ばっかりでうんざりしてたとこだ」

 大柄のイドと小柄なアド。どちらも二人を睨みつけている。

「スキアラ様。こいつらが相手ですか? 下等な種族の分際で、随分無礼なやつら
ですが殺してもいいんですか?」
「人とウェアウルフがなかよしこよしか。笑わせるな」
「流行るな。これは修行。殺し合いではない。汝、考えを改めよ」
「……はい」
「別に俺ぁ構わねぇぞ? 殺されるつもりはねぇが、殺す覚悟でかかってきてもよ」
「同館だ。俺たちとやり合って、同じ口が叩けるかな」
「なんだと! スキアラ様。たかが人族やウェアウルフなどにばかにされては黙って
おれませぬ!」
「戦いの許可を!」
「偉そうな事言ってるがよ。俺らとお前さんらに身分差でもあるってのかい? 
ちょうど二人で話してた最中だ。そういう偉そうなやつらはぶん殴るとすかっとするってな!」
「まったく。話し合いでは興奮するばかりであろう。もうよい、修行を始めるぞ」


 舞台に上がり、それぞれ左右に分かれて身構える。
 両者共に武器を所有せず、衣類もただの布類だけだ。

「よいな。技の使用は認めるが、殺傷力のある武器は全て禁止だ。
ベルディスよ。そなたの体毛を硬化する技も禁止とする」
「ありゃあ使うと派手に疲れて動けなくなる。こんな雑魚相手に使う必要はねぇよ」
「貴様ぁー-!」
「イド、アド。汝らは直ぐ挑発にのる。悪い癖だ。考えを改めよ。これは修行だ」
「そういうこと。直ぐ頭に血が上るから、他者を見下したくなるんだろ。
嫌だねぇ、かっかして暑苦しいやつは」
「もう許せぬ! いざ!」
「叩きのめしてやる、覚悟しろ!」
「仕方ない。始めよ!」
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