上 下
473 / 1,085
第四章 メルザの里帰り

第四百十五話 ロブロードを教える

しおりを挟む
「ロブ……ロード? それってなぁに? 遊びなの? 僕、目が見えないから何も出来ないよ」
「レェン。君の目が見えなくなったのはいつからだ? 生まれつきか?」
「ううん。五年前までは見えてたんだ。でも五年前に……」
「そうか。後天性……俺もいうなれば後天性のようなもんだったからな。
だがこの遊びは目が見えていなくてもできるようにするつもりだ。俺の世界じゃ当たり前に行われて
いた読みながら行う将棋など、ハンデをハンデとしない手法はある。特にこの世界には術という
とんでもない手法がな……」
「僕でもできるの? その遊び」
「ああ。しかもこの遊びは……収集欲をそそる遊びになる。色々なものを集めたくなるように作る。
つまりこの遊びが流行る前にレェンがこの遊びを極めていれば……」
「レェンでも生活をしていける?」
「そうだ。だから兄弟で協力して極めて欲しい。この場所、このメンツでなら見せていいだろう。
神魔解放! レピュトの手甲よ、我が主神イネービュの名において命ず。
天地創造の力、ディミオルゴポティリガラス創造

 物質を具現化して創造する。飛んでもない術。これをレピュトの手甲から創造できるようにしてもらった。
 しかもこの能力だけではない。まだまだ他に与えられた能力はあるが今は割愛しよう。

「な……何が。急に手が現れて、何かが……」
「このような力を与えられたのですか? まったく、あなたはどれほど気に入られたのですか」
「すげー! ルイン、神様みてーだ」
「驚きました。神の奇跡としか言い換えようがない。私はとんでもない方と一緒にいるのかもしれません」
「確かにとんでもない力だ。俺にもまだ、原理に関しては訳が分からないよ。今後解明していくつもりだ。
それよりレェン。これ、触ってみな」
「う、うん。わぁ。ツルツルしてて気持ちい……あれ? 何か掘られている? これは……うーん。剣? 曲がってる?」
「正解だ。俺の予想通りだ。レェン。それをアルンに渡して。アルンも同じように手で触って、何かわかるか?」
「えーと……ダメです。全然わからない。レェン、これ触っただけでわかるのか?」
「う、うん。それくらいしか楽しみがなかったから」
「五感ってのは損なわれると、他の感覚で補おうとする能力が強くなる。つまり視覚が失われれば、他の感覚……特に俺たちみたいな中途で失った者は触覚が跳ね上がる。先天性の失明者はもっと凄い。
空間把握能力が引き上げられ、音の反響などで空気の流れまで読む」
「それは本当ですか!? 確かに幾人かの視覚障がいの片を拝見しましたが、そこまでは気づきませんでした」
「実際目の当たりにしてきた。その方は開いている扉を何も使わず普通に曲がって入っていた。
見えていると錯覚するほどにだ」
「ぼ、僕も練習すれば色々出来るようになるの? 本当に?」
「なる。断言してやる。人間ってのは可能性の塊だ。レェンはこれからロブロードを兄と一緒に
楽しみ、そして兄と一緒に色々な景品を手にしていくといい。ルシアさん、頼みがあるんだが」
「聞いてやるよ。今はセフィアもいねぇしな。その代わり……」
「わかってますよ。この町でセフィアさんの土産でも買って、不要になったものをもらっておきますから」
「いやっふぅ!」
「レェンとアルン二人をルーンの町へ。町に着いたら三人娘あいつらにちゃんと面倒見るのと、ロブロードの現状ルールを教えるよう
伝えてもらっていいですか? レェンがこの人が一番といった人に一番の土産を買っていくと」
「任せておきな。元々こいつら拾ってきたのは俺だ。ちゃんと俺たちルクス傭兵団も手をかしてやる」
「頼みます。それとエーナに言伝を……」
「ん? ああ。そうか。確かに伝えておく。俺もロブロードの練習すっかな。ガキ共に負けてられねえし」

 一通りルシアさんにお願いし、レェンとアルンを見送る事にした。
 ずっとふさぎ込むように下を向いているレェンはもういない。
 今は上を向き、これから訪れる新しい町や、自分の出来る事に胸を膨らませている。
 そんな素晴らしい表情を見せてくれた。
 隣にいるアルンは嬉しくて泣いていた。いい兄弟だ。

「なぁなぁルイン。やっぱルインはさ。誰にでも優しいよな」
「何言ってんだ。誰にでもは優しくない。お前に降りかかるような火の粉は鬼の形相で振り払っているぞ」
「なっ! きゅ、急にそんなこと言うなんてずるいぜ」
「事実だからな。俺の中心はあくまでメルザ、お前だけだよ」

 真っ赤になってるメルザを見つつ、冷ややかな視線を感じたので全員に振り向く。

「さて! 出発は明日にしよう。今日は買い物と支度。明日からそれなりの冒険になるぞ!」
『おー!』

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜

北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。 この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。 ※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※    カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!! *毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。* ※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※ 表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...