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第四章 メルザの里帰り

第四百十二話 シュイオン先生の能力

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「おいルイン、ルイン! そろそろ起きてくれよ! ルーイーンー!」
「ふぁ!? あれ、寝ちゃってた?」
「口開けて寝てたぞ? 俺様より寝坊助だな! にはは!」
「くっ……寝言を言ってたメルザにだけは言われたくないぞ……」

 あの後時間を潰そうと腰をかけていたら、どうやら寝てしまっていたらしい。
 そこをメルザに起こされたようだ。

「あ、先生。おはようございます」
「ルインさん。おはようございます。昨晩は途中で寝てしまったようで……すみません」
「気にしないでください。よく眠れましたか?」
「おかげさまで……あれだけ寝れたのは久しぶりですよ。今日はレンズに行くんでしたね」
「はい。メルザの里帰りを兼ねて、何か必要物資の補給あたりの依頼をうけようかと」
「それはどのあたりなのですか?」

 先生にロジアールの村あたりへ向かうルートを説明すると……「あの、お願いがあります。
どうか私もその場所まで連れて行ってはもらえないでしょうか?」
「実は昨日、先生を誘ったんだよ。ちょうど寝ちゃったタイミングでさ。今日誘おうと思ってたんだ。
ここで治療ばかりしていても息が詰まるだろう?」
「そうですね。私も……今このままこうしているだけでは、彼女を救う事なんて出来ない。
そう思いました。あなたは即座に行動し、メルザさんを救って見せた。私も……何かしなければいけない。
そう思っています」
「俺も先生と、旅をしてみたいと思ったんだ。それにこっちには……今は少ないが、幻妖団メルの
メンバーがいる。紹介しよう」

 封印されているメンバー全員を出し、挨拶する。

「まずは頼れる最初の封印仲間、骨だけどいい骨。バシレウス・オストー。通称レウスさん」
「だっはっは! 全てはこの当たりの俺に任せろ! な? な?」
「コラーダの元守護者にして空駆ける馬。喋り出すと止まらないし飛び回っても止まらない。
セーレだ」
「ヒヒン! 僕喋ってもきっとわからないよ。封印仲間じゃないからね! ヒヒン!」
「そうだった。喋る言葉は我々にしか理解できない。さて次は、幻魔人形ジェネスト。幻魔人……
なのか? 詳しい事は本人に聞いてくれ。俺は恐くて聞けない」
「どういう意味でしょうか。一度ボロボロに負けた相手だからですか?」
「怖いので次! 出会ってまだ日は浅いもののどっしりした兄貴という風貌のエレギー。
多分弱い」
「弟よ! わては弱くはない! 弟が強すぎるだけだ!」
「はい。そして我が主、メルザ・ラインバウト。食いしん坊です。万歳!」
「ん? そーいや腹減ったなー……」

 全員の紹介をさらっとすると、シュイオン先生の目は引きつっていた。

「ず、随分と個性的なお仲間ですね……私の名前はシュイール・ウェニオンといいます。医者を
やっております。怪我などをした際はぜひ治療させてくださいね。
もちろん得意な術は医術です」
「……先生今なんて? 医術って医者だから医業が得意ってことだよな?」
「いえ、医術という秘術分類の術ですよ?」
「……はい?」
「ですから……いえ、説明するよりは見せた方が早いですね。例えばですが、指先を少し
負傷したとしましょう。このように」

 少し針のようなもので先端を切る。当然出血する。

「医術、オペルブロキシブル」

 先生が指をメス状に指先へ一閃すると、傷が塞がっていく。
 これは……血小板を促進したのか? しかも状態から見て殺菌も行えるのだろうか。

「これは医術の初歩ですね。患部の傷を塞ぎます。当然使用者も、使用された側も疲労しますけど」
「なんつー能力だ。俺の仲間にもいくつか治癒術を使用できるものはいるが……極めて少ないんだ。
助かるよ」
「いえ。私自身に戦う能力が殆どありませんから、後方支援くらいにしかなりませんけど……」
「何言ってるんんだ。後方支援があるかないかで、まるで違う……よし、まずはレンズへ向かおう」

 先生の能力はかなり貴重に思える。道中どんな危険があるかもわからない。
 助け合っていくとしよう。
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