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第四章 メルザの里帰り
第三百八十二話 ジャンカの村にて
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ムーラと共に泉からジャンカの村方面へ出ると、美しい馬に乗る甲冑の者がいた。
「おおー、あんたがこの村の管理者か?」
「いや、俺は管理者なんかじゃないよ。この村の管理者は……ムーラになるのか?」
「わしは管理などしておらんよ。皆自由に暮らして居るが、多くの子供たちのため
必死に働いておる。兵士もおるし今のところ安全だしな」
「そうなるとメルザってことになるのかな。まぁそれはいいとして。俺はルイン・ラインバウトという」
「ラインバウトじゃと? それは家名か!?」
「ん? ああ。俺の名づけ親はメルザ・ラインバウトって言うんだ。もらい名だ」
「ふうむ。まさか……いや、今はそれどころではなかったんじゃ! わしゃハクレイと申す。
見ての通り騎士じゃが、ハーヴァルに会いに来たんじゃ。しかしハーヴァルはいないと言われて
困っておる。あんたなら連絡が付くと聞いたんじゃが……」
「なんだ、ハーヴァルさんの来客だったのか。これは失礼した。戻ったばかりで少し警戒していてね。
確かにハーヴァルさんは不在だが、言伝でよければ預かるぞ?」
「直接どうしても話さねばならんのじゃ。しかも急ぎでじゃ」
「そう言われてもな。ブネに聞いてみればあそこへの連絡方法もわかるだろうけど、入浴中だしな、きっと」
「入浴とな? ここには泉しかないが、水浴びでもしておるのか?」
「ハクレイさん、あんた身元を示すものか何か持ってないか? そうすれば少し落ち着いた所で話ができるんだけど」
「ふうむ。それではこれでどうじゃ。我が家宝ウィンディソード。見事じゃろう」
「んー、参ったな。メルザがいないからアナライズ出来ない」
「ここに家紋が入っておるだろう。これはウインディ家の証なんじゃが、知らんか……はぁ」
「悪いな。ここトリノポート近隣ならようやく少しわかるようになったけど、それ以外は殆ど知らないんだ」
「無理もない。ここトリノポートは他地域と疎遠じゃ。特にシフティス大陸の者など――――」
「っ! あんた、シフティス大陸から来たのか? どうやって?」
「おや、シフティス大陸はわかるんじゃな。わしはそこのドールアンという城から来たんじゃが」
「シフティス大陸には城があるのか。ドールアン……少し詳しく聞かせてくれないか。
妖氷造形術、椅子、テーブル! 少し冷たいが座ってくれ」
「なんと奇怪な!? 幻術ではなく、妖魔の術使いだったとは。珍しいが相当な実力者とみた! 貴殿の名は!?」
「いやさっき名乗っただろ。俺はルイン・ラインバウトだって」
「そうであった。年を取ると忘れっぽくてのぅ。わしゃ齢七十になる」
齢七十にしちゃ随分と元気そうな爺さんだが……詳しく話を聞くと、ハーヴァルの父にあたる
人物が危篤。至急戻って欲しいとのことだが、仲が悪いらしい。
母は既に亡く跡継ぎは弟が次ぐ予定の貴族のようだ。
シフティス大陸出身だったのか、あの人。
案内はライラロさんよりハーヴァルさんの方がよかったなぁ……ライラロさんは時々無茶苦茶だし。
今すぐシフティス大陸に向かうわけじゃないから、戻ってきてくれないかなーと淡い期待をしておこう。
「……というわけでハーヴァルに会うのは難しいんだ」
「いやぶったまげたわい。しかしわしを信用してくれたようで嬉しいぞ、若者よ」
「ルインだって。名前覚えてくれよ!」
「ふうむ。時に若者よ。その町とやらを見ても構わんかのう? わしゃこの愛馬を休ませてやりたくて」
「立派で美しい馬だな。これほどの白馬、生まれて初めてみた」
「そうじゃろう! わしのホイホイは最高じゃろう?」
「今何て言った?」
「ホイホイじゃ、ホイホイ。この馬の名前じゃよ」
「それってどういう意味合いでつけたか聞いてもいいか?」
「おお、よくぞ聞いたり! こいつがまだ小さい時じゃ。わしにホイホイついてきてのぅ。
だからホイホイじゃ」
「……戻ってそうそう、馬に同情することになるとは……」
「同乗したいのか? 構わんぞ?」
「ちげーよ! 改名してやらないか。なんだか物凄く悲しそうにしているぞ、この馬」
「ホイホイはいつもこんな表情だぞ。なぁ、ホイホイ?」
プイッと横を向くホイホイ。ほら、嫌がってるって!
「この馬、雌だろう? いくら何でももうちょっと女の子っぽい名前の方がいいだろう。
ブランクーラ……いや、ラーラってのはどうだ? ブランクーラが純白といった意味合いなんだけどさ」
「ヒヒヒィーーーン!」
「おお、お前も気にいったか」
「な、泣いたじゃと? 今まで一度も声を発する事がなかったというに!」
「そりゃ、ホイホイじゃな……今日からお前はラーラだ」
ラーラはとても嬉しそうに嘶き続けた。
「そうだな、話を聞く限り町には入れてもよさそうだ。驚くと思うが案内しよう。
ハーヴァルさんの知り合いってことは死流七支は知ってるか?」
「聞いてはおるがあったことはないのう」
「そうか。そのメンバーの人にシフティス大陸の案内を頼もうと思っていたんだが,心もとなくて。
爺さん、案内を頼めないか」
「それは構わんが、お主シフティス大陸に行くつもりか? 腕はたつんじゃな?」
「ん、そうだな。この大陸にしちゃそれなりに強いとは思うぞ。
フー・トウヤとかエッジマールっていう化け物クラスもいるけど」
「そりゃ格闘世界最強と鋼鉄王子のことかの?」
「どっちも変な異名があるんだな……まぁいい。とりあえず案内するよ」
俺はハクレイを連れて、ルーンの町へと戻っていった。
「おおー、あんたがこの村の管理者か?」
「いや、俺は管理者なんかじゃないよ。この村の管理者は……ムーラになるのか?」
「わしは管理などしておらんよ。皆自由に暮らして居るが、多くの子供たちのため
必死に働いておる。兵士もおるし今のところ安全だしな」
「そうなるとメルザってことになるのかな。まぁそれはいいとして。俺はルイン・ラインバウトという」
「ラインバウトじゃと? それは家名か!?」
「ん? ああ。俺の名づけ親はメルザ・ラインバウトって言うんだ。もらい名だ」
「ふうむ。まさか……いや、今はそれどころではなかったんじゃ! わしゃハクレイと申す。
見ての通り騎士じゃが、ハーヴァルに会いに来たんじゃ。しかしハーヴァルはいないと言われて
困っておる。あんたなら連絡が付くと聞いたんじゃが……」
「なんだ、ハーヴァルさんの来客だったのか。これは失礼した。戻ったばかりで少し警戒していてね。
確かにハーヴァルさんは不在だが、言伝でよければ預かるぞ?」
「直接どうしても話さねばならんのじゃ。しかも急ぎでじゃ」
「そう言われてもな。ブネに聞いてみればあそこへの連絡方法もわかるだろうけど、入浴中だしな、きっと」
「入浴とな? ここには泉しかないが、水浴びでもしておるのか?」
「ハクレイさん、あんた身元を示すものか何か持ってないか? そうすれば少し落ち着いた所で話ができるんだけど」
「ふうむ。それではこれでどうじゃ。我が家宝ウィンディソード。見事じゃろう」
「んー、参ったな。メルザがいないからアナライズ出来ない」
「ここに家紋が入っておるだろう。これはウインディ家の証なんじゃが、知らんか……はぁ」
「悪いな。ここトリノポート近隣ならようやく少しわかるようになったけど、それ以外は殆ど知らないんだ」
「無理もない。ここトリノポートは他地域と疎遠じゃ。特にシフティス大陸の者など――――」
「っ! あんた、シフティス大陸から来たのか? どうやって?」
「おや、シフティス大陸はわかるんじゃな。わしはそこのドールアンという城から来たんじゃが」
「シフティス大陸には城があるのか。ドールアン……少し詳しく聞かせてくれないか。
妖氷造形術、椅子、テーブル! 少し冷たいが座ってくれ」
「なんと奇怪な!? 幻術ではなく、妖魔の術使いだったとは。珍しいが相当な実力者とみた! 貴殿の名は!?」
「いやさっき名乗っただろ。俺はルイン・ラインバウトだって」
「そうであった。年を取ると忘れっぽくてのぅ。わしゃ齢七十になる」
齢七十にしちゃ随分と元気そうな爺さんだが……詳しく話を聞くと、ハーヴァルの父にあたる
人物が危篤。至急戻って欲しいとのことだが、仲が悪いらしい。
母は既に亡く跡継ぎは弟が次ぐ予定の貴族のようだ。
シフティス大陸出身だったのか、あの人。
案内はライラロさんよりハーヴァルさんの方がよかったなぁ……ライラロさんは時々無茶苦茶だし。
今すぐシフティス大陸に向かうわけじゃないから、戻ってきてくれないかなーと淡い期待をしておこう。
「……というわけでハーヴァルに会うのは難しいんだ」
「いやぶったまげたわい。しかしわしを信用してくれたようで嬉しいぞ、若者よ」
「ルインだって。名前覚えてくれよ!」
「ふうむ。時に若者よ。その町とやらを見ても構わんかのう? わしゃこの愛馬を休ませてやりたくて」
「立派で美しい馬だな。これほどの白馬、生まれて初めてみた」
「そうじゃろう! わしのホイホイは最高じゃろう?」
「今何て言った?」
「ホイホイじゃ、ホイホイ。この馬の名前じゃよ」
「それってどういう意味合いでつけたか聞いてもいいか?」
「おお、よくぞ聞いたり! こいつがまだ小さい時じゃ。わしにホイホイついてきてのぅ。
だからホイホイじゃ」
「……戻ってそうそう、馬に同情することになるとは……」
「同乗したいのか? 構わんぞ?」
「ちげーよ! 改名してやらないか。なんだか物凄く悲しそうにしているぞ、この馬」
「ホイホイはいつもこんな表情だぞ。なぁ、ホイホイ?」
プイッと横を向くホイホイ。ほら、嫌がってるって!
「この馬、雌だろう? いくら何でももうちょっと女の子っぽい名前の方がいいだろう。
ブランクーラ……いや、ラーラってのはどうだ? ブランクーラが純白といった意味合いなんだけどさ」
「ヒヒヒィーーーン!」
「おお、お前も気にいったか」
「な、泣いたじゃと? 今まで一度も声を発する事がなかったというに!」
「そりゃ、ホイホイじゃな……今日からお前はラーラだ」
ラーラはとても嬉しそうに嘶き続けた。
「そうだな、話を聞く限り町には入れてもよさそうだ。驚くと思うが案内しよう。
ハーヴァルさんの知り合いってことは死流七支は知ってるか?」
「聞いてはおるがあったことはないのう」
「そうか。そのメンバーの人にシフティス大陸の案内を頼もうと思っていたんだが,心もとなくて。
爺さん、案内を頼めないか」
「それは構わんが、お主シフティス大陸に行くつもりか? 腕はたつんじゃな?」
「ん、そうだな。この大陸にしちゃそれなりに強いとは思うぞ。
フー・トウヤとかエッジマールっていう化け物クラスもいるけど」
「そりゃ格闘世界最強と鋼鉄王子のことかの?」
「どっちも変な異名があるんだな……まぁいい。とりあえず案内するよ」
俺はハクレイを連れて、ルーンの町へと戻っていった。
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