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第三章 舞踏会と武闘会

第三百七十八話 イネービュへ伝えた遊び ロブロード!

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「そろそろ戻るぞ二人共」
「うわぁ! いきなり背後から話かけるなよブネ」
「こうでもしないといつまでたってもひっついておるだろう、貴様らは」

 ごもっともです。大変失礼しました! 
 きっと今頃メルザは真っ赤に違いない。

「それで、子を持つ準備までは終わったのだろうな」
「ぶふっ、げほっ、げほっ。おい! こんな所でそんな事するわけないだろ!」

 メルザの手は汗でびっしょりだ。俺たちはブネにしてやられた。

「なんだまだ済んでおらんのか。つまらぬ。まぁよい。そっちは後だ。
イネービュ様が呼んでおる。例の遊び道具についてだ」
「そうだったな。その前にブネ。イネービュに加工してもらった指輪の事だけど、これの材質ってなんだ?」
「メルゼナイト硝子という、この海底でしか産生出来ない特殊性質の物だ。貴様らもここまでに幾度か
目にしたであろう。あれの精錬された物。非常に貴重なものだ」
「そうか。やっぱり硝子製のものだよな。つまりただの硝子なら簡単に構築できるか?」
「可能だろう。一体どうするつもりだ? 硝子加工であればエーナを呼んでおく」
「あいつが得意なのか。それじゃ頼むよ。内容は……」

 一通りブネに伝えると、俺たちは四層へと運ばれる。
 食事などを一通り取っていると、ぼんやりだが目が見えるようになってきた。
 これでどうにか確認できる。メルザと密接に接していなかったから少し早めに戻ったが、以前より
目の技を行使すると酷くなっている気がする。注意しないとな……。

「マミムメモマミムメモヤ、ユ……」
「ようエーナ。硝子の加工はどうだ?」
「ヨを取らないで欲しい。あなたに頼まれていたもの。これだよね。うまくできたかな」
「ここをこう……ボタンのような形に出来るか? あー、そう、表面がつるつるに……色入れは
また今度にしてひとまずこれだけあれば説明できる。しかし凄いな。その手はどうなってるんだ。
なんで硝子をそんな風に加工できるんだ?」

 このエーナ。指で持った硝子細工をいとも簡単に変化させている。熱でも発してるのか? 
 十分戦えたんじゃないかこいつは……。

「あなたの説明は意味不明だけど、あなたの要望をかなえたらこうなった。
これで一体何をするというの? どんな遊びが生まれるの? その物語を綴りたいけどいい?」
「落ち着けって。イネービュを呼んできてくれ。それと台を一つ」
「いい加減イネービュ様を呼び捨てにするのはやめて欲しいな。幾らイネービュ様でもそのうち怒られる」
「う……なんかイネービュって親近感があるっていうか、なんでだろう。他人の感じがしないんだよ」
「それはあなたとイネービュ様が一度繋がったから。イネービュ様もそのせいであなたがお気に入り」
「まぁ、気を付けるよ」
「やっぱりいい。イネービュ様が許してるならエーナには何も言う事はできないの」

 すーっと消えてイネービュを呼びに行くエーナ。つかみどころがまるでない。ティソーナは
エーナの大ファンのようだが……少し不気味感もある。
 あいつのツボが俺にはわからん! 

「やぁ。待たせたね。ただの硝子を使う単純な遊びって聞いたけど」
「ああ。おはじきという古き伝統の遊びだよ。台の上にこの平べったい硝子を並べるだろ? 
そして欲しい硝子を決める。今は色とか入ってないからみんな無色透明だけどさ。これに好きな色や
デザインを模様する。そしてこれが欲しい! というのがあったらそれめがけて指ではじいて
当てるんだ。ただしそこに条件がある」
「ほうほう。つまりこれは……硝子ではなく貴重なアーティファクトなどをかけて遊ぶ事もできる。
そう言いたいのかい?」
「先読みされたか。そうだ。それで条件だが、これはその商品の貴重さによって引き上げたり引き下げたり
できる。例えばよく遊ばれるのが間遠し。ある定めた二点のおはじきを決め、その間を
はじいたおはじきがその二つにぶつからずに間を通し、欲しいおはじきにぶつけたら取得できる。
通すものにぶつかったら失敗だ。またはじきすぎて落下しても失敗。ぶつけたものが落下しても失敗だ」
「実に面白そうだ。早速やってみたい」
「それじゃここを狙って、こうだ!」

 すーっと間を通して狙ったものへこちりとあたる。よし、加減もうまくいったぞ! 

「流れる彗星のような動きが美しい。おお……これは星でやってみてもいいかもしれない。
衝突させればその星は生き残れる。外したら宇宙の藻屑……とかね」
「おい! おっかない遊びに変えるなよ! 星を破壊する遊びじゃないよ!」

 俺もブネも頭を抱える。仕方ない。エーナに頼んで指定してもらった色を入れよう。
 とりあえず星を壊されたら困るので、太陽及び水星から冥王星までのデザインを説明しておはじきに
してもらった。

「これは、君のいた銀河系の星々だね。これが地球……美しい星だ。これは確かに欲しくなる。
エーナ。銀河系以外の星々を幾つか作れるかな。これは他の神々にも話そう。
色々なおはじきを用意して……人や魔物、武器などを象ったおはじきを構築しよう。
それらに強弱をつけて……うん、当てた時の衝撃能力を数値化して……よし。ルイン、再び
はじいて当ててくれないか」
「え? あ、ああ。今の短時間で何をどうしたらこうなるんだ?」

 俺はおはじきを再び指ではじき、地球色にしあがったそれに当ててみた。当たると同時に上部に数値が出る。大した威力ではないので数値は三とでた。

「この数値がこれを手に入れる値までいけばこの地球型おはじきが手に入るようにした。
ちなみに数値は六千五百だ。まだまだ足りないね」
「……おい。ぶっ壊す勢いでやっても取れないだろ、それ……」
「材質もただの硝子ではなく希少な鉱石などにしたらより白熱しそうだね。いいよ、実に楽しい遊びだ。
君は秀才だ。この遊びに名前をつけよう。おはじきなんて名前ではもうないだろう」
「追加で殆どイネービュが考えたよな……そうだな、それじゃロブロード……なんてのはどうだ? 
主を奪うって意味だけど。実際手に入れられるのは主じゃないけどな」
「いいね。素晴らしいよ。これはゲンドールの世界でも流行るだろう。いや、流行らせてこようか。
ディオ、エークシ。お願いしようかな」
『はっ』
「これは予想以上だったね。何か追加でお礼をしようと思うけど、何がいい?」
「そうだな、それじゃ加工技術を教えてくれないか? 俺もロブロードを行いたいが、あんな
風に数値化できたりしないし」
「君はレピュトの手甲があるから、あれで製作すれば可能だろう。あの手甲は非常に高性能。戦い以外に
多くの事ができる。やり方は教えるね。
技術だけだと褒美としては足りない。加工用の貴金属と宝石を提供しよう。後で町に送っておくから
開封してみてくれ。面白いものもつけておくからね」
「そうか……神様からの賜りものって恐れ多いんだけど……他にもまだ面白い遊びは
地球に溢れてたんだけど。あまり教えるとブネが怖いからやめておこう」
「今はこれだけで十分だよ。色々同時に新しい事を進めても、一つどころに落ち着くものさ。
君のモンスターアクリル板とやらも、この遊びの対象に出来そうなんだけどね。
使役できるモンスターをロブロードで奪い合う……なんてのも面白そうだし、そのアクリル板をはじいて
取り合うのもいい」

 確かに……ゲーム内のミニゲームコンテンツでそういうのがあったら夢中でやりそうだ。
 この神様、案外ゲーム好きなのかもしれない。

 一通り説明を終えた俺は、地球にいた頃を少し思い返していた。
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