上 下
408 / 1,085
第三章 舞踏会と武闘会

第三百五十五話 第三試合 サンドラ国とムンドラ国

しおりを挟む
 俺がティソーナと押し問答していると……声が降り注ぐように聞こえてきた。

「ここはムンドラ国。サンドラ国とムンドラ国は隣国同士で非常に親密な関係だった。
ムンドラ国の王子ルインは、サンドラ国より訪れている姫と恋仲となり、永遠の愛を誓いあう。
世界最高の駿女ファーフナーにまたがり、りりしい姿で国民を安堵させるルイン。
一見何もかもうまくいっているように見えた。物語はルインたちが、メルザ姫をサンドラ国へ送る所より
開始される」
「何もかもおかしいわよ! 駿女ってなによ! 駿女ってなによーーー!」

 確かに。ファナのお怒りもごもっともです。

「俺様、もうルインの嫁だぞ?」
「それは私もよ!」
「いや、これはあくまで物語の登場人物としての話なんだろう。二人共冷静にな」
「冷静でいられるわけないじゃない。私、馬扱いよ! 頭にくるわ!」
「ファナ、姫役変わるか? 俺様も馬はやだけどよ……かわいそーだよ」
「メルザ……ううん。これも術なら耐えてやるわ。かけた奴を全力でぶん殴るわ!」
「その息だ。二人共、用心しながら行くぞ」

 大臣たちが歩きだしたので、それに付き従い俺たちも移動を開始した。

「機嫌の悪いファーフナーをいたわり歩いていくとは。王子は相変わらず優しいですな」
「……頼むから少し黙っててくれ。ファナがこれ以上不機嫌になったらたまらん。これある意味
攻撃だろ……」

 ファナがいつ牛鬼になって暴れ出してもおかしくないので、お爺ちゃんを少し黙らせる。
 歩いていると情景が変わってくる。何倍もの速さで進んでいる感じだ。

「なぁ。凄いいい匂いするぞ。俺様、腹減ったよー……」
「メルザ姫! はしたないですよ。我慢なさい!」
「けどよー。なんだこの匂い……すげーうまそうだ……」
「ルイン、どう思う? 罠よね、きっと」
「……いや、質問がある。大臣」
「何でしょう、王子?」

 やはりか。エーナの問題は質問が認められていた。だがそれをファナたちに伝えられないのがネックだ。

「ここはどこだ? 姫がお腹を空かしているようなのだが、美味しい食事などはあるか?」
「こちらはサンドラ国道中の町、ドラドラ。姫の食事は当然用意してあります故、もう少々お待ちください」
「あそこに売っている物は買えないのか?」
「買う事はできますが姫のお口にあうかどうか……」
「なら俺が毒見をする。その後姫に食べてもらえばいいだろう?」
「なんと……それではまず侍女めに毒見をさせましょう。その後に……」
「それは駄目だ。俺が確かめなければならないんだ。それが主への務めだ」
「……承知しました。それではまずこの大臣が食し、その後に王子、そして姫ということで」
「……それで構わない」
「あの爺ちゃん、そんなに腹減ってんのか?」
「いや、そういう事じゃないと思うぞ……」

 無邪気なメルザに癒されながら、謎の屋台へと赴く大臣。確かにいい匂いがするが、見えたのは白い箱だ。
 これは……選択……か? 

「ふうむどれも奇怪な料理ですな。王子は姫がどれを好むと思われますかな?」
「どれって俺様には何も見えねーぞ?」
「私にもよ。どうなってるの?」
「……この選択権は俺だけか……」

 一つずつ箱を開けて中を見る。一つ目は高級そうな更に盛られたスープ。二つ目は肉の丸焼き。三つ目は
米料理だった。米……米だと!? くそ、こんなところで出てくるとは。
 食いたい。きっとこれだ! 俺の食いたいものは! 

 ……だがそれは俺が食いたいだけでメルザが食いたいわけじゃない。これを出しても喜ばないだろう。
 俺は肉の丸焼きが入っていたものを選びメルザの前に持っていく……すると
先ほどまで二人には見えなかったものが見えるようになった。

「おー! すげーうまそうなものの正体はこれか! 食っていいか?」
「いや、まず大臣が毒見をする。その後は俺。そうしたら好きなだけ食べてくれ」
「では……ほうほう、これはうまいですな! 実にいい。しかしこちらの方へ毒があるやも。
いやいや、はたまたこっちの……いやはやこちらか?」

 どんどん食う大臣。肉食爺ちゃんだなおい! 
 あっという間に一皿平らげてしまい、腹をさする大臣。

「いやーこれは、実に目に毒でしたな。全て取り払った故もう大丈夫です」
「やっぱこいつ、ぶん殴るだけじゃ足りないわね」
「俺様、燃斗唱えていいか?」
「俺の毒見の役は? 毒見するものは?」

 謎の大臣に振り回され、どっと疲れがたまった。
 他のを選んでいたらどうなっていたんだろうな。
 気になるところだ。

「食事にありつけなかった姫は、おなかが減ったままドラドラの町の休息所へと赴こうとする。
その道中……あなたたち一行を何者かが襲い掛かった!」

 ついに……敵襲か。
 場面が変わり、俺たちは数十人の何者かに取り囲まれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて
ファンタジー
謎のダンジョン、真実クエスト、カウントダウン、これは、夢であるが、ただの夢ではない。――それは世界のルールが書き変わる、最初のダンジョン。  無自覚ド善人高校生、真瀬敬命が眠りにつくと、気がつけばそこはダンジョンだった。得たスキルは『ガチャ』! クラスメイトの穏やか美少女、有坂琴音と何故か共にいた見知らぬ男性2人とパーティーを組み、悪意の見え隠れする不穏な謎のダンジョンをガチャスキルを使って善人パーティーで無双攻略をしていくが…… 1部夢現《ムゲン》ダンジョン編、2部アポカリプスサウンド編、完結済。現代ダンジョンによるアポカリプスが本格的に始まるのは2部からになります。毎日12時頃更新中。楽しんで頂ければ幸いです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...