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第三章 舞踏会と武闘会
第三百二十五話 人の道とは
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意識が戻ると、俺はメロンパイを作っている最中だった。
ブネはその場にはおらず、後ろの席に座っていた。
……神ってのは恐ろしいと思う。それは人の能力を大きく超える存在だからなんだろう。
ましてや人がメロンパイを作ってるときに……とはいえ思い出せた事は他にもある。美味しいメロンパイ
の味だ。
「うーん、これで代用できるかな? 俺がいない間に随分と調味料とか整えてくれたんだな」
このルーンの安息所は基本的に共同で使っていい事になっている。
とはいってもここの住民はかなり増えた。三夜の町の住民さんはあまり使用していないのだろう。
「味は……よし、後は焼いて……ってメルザいないんだった。どーしよ。そうだ、獣化して……っと」
ついに使えるようになった炎! 少々焼き過ぎるかもしれんが……これも練習だな。
えーと……「フレイムノード」
点火位置から少しずつ焼き入れをする点に微調整していく。
「あ……焦げた。まぁそりゃそうか。これ、幻術なのか妖術なのかどっちなんだろう……」
「おい、準備は出来たか? ……何をしている。真っ黒なダークマターを作っているのか」
「火力の調整が難しいんだって。覚えたばかりだし……」
「時間が惜しい。教えてやる、今貴様が使用したのは妖術だな。フレイムノードといったか。
器用なイメージが出来ているが、この炎は先端部分の温度が高すぎるのだ」
「見ただけでそこまでわかるのか?」
「レピュトの手甲を使ってみるがいい。今はそちらの方がうまくできるだろう。
そちらでもう一度フレイムノードを放て」
「あ、ああ。つってもまずは……神魔解放! ……お、本当だ。感覚の違いか」
「よし、その温度で留めよ。上手くいったな」
「ふぅ、神魔解放。この感覚をつかめばいいのか」
「要領は教えた。後は練習するがいい。さぁそれで全部か? あちらで貴様の支度もせねばならぬ。
それを持っていくぞ!」
「え、ええ? その、色々進みすぎてて何がなんだか……」
焼きあがったメロンパイを皿に乗せて持ち、俺はブネに連れ去られた。
透明な玉のようなものに入り一気に外へ出て泉へと落ちて行く。
三層に一気に戻り、そこから神殿下の滝へと突撃していく。
「うわ、ぶつかる! まじか!」
「まったく、人の子はみんな同じ事を言う。ぶつかるわけがなかろう。
それでぶつかるならこのブネもぶつかるではないか」
「あ、確かに」
すーっと滝の中に入ると、その先は真っ暗な空間。そこから下へ下へと降りていっているようだ。
「なぁブネ。人の死についてと、俺がいた前世について少し聞いていいか?」
「四層に着く間であれば構わぬ」
「前世とこの世界についての繋がりってなんなんだ? 前世で死ぬとみんなここに来るのか?」
「海星の一部。銀河系の星、地球。あまねく無数の神々は地球とこの世界を行き来しておる。
神々はこの世界に良い影響をもたらす文明、知識のみを送り込む」
「この世界にとってのよい影響?」
「よいか、人にとってではないぞ。この世界にとってだ。それは先ほど貴様に話した魂魄であったり
世界を破壊しない知識であったりする」
「行き過ぎた文明は星を滅ぼすからか。今の地球のように」
「かの星は滅びぬ。なぜかわかるか?」
「星が在り続けるために、その姿を変える……からか?」
「そうだ。人が住めなくなることはあり得るが、星が消滅するわけではない。
人はその存在こそが中心であると考えるが、世界においては極小さい存在。
生と死。これが人の持つ最大の役割」
「その役割を乱す者がゲンドールの神々にいる……と?」
「そうだ。ゲンドールの世界そのものが消滅すれば、宇宙は膨張し、星々は消え去る。
生命体の存在そのものを消滅させるかもしれぬ。
エターナルボイド。その状態になれば神々も消滅するだろう」
「エターナルボイド……どうやって止めれば」
「暗躍している神々を封印する。ディーンに任せる予定だが」
「そのブレディーがいないじゃないか!」
「貴様は何を言っている。幾らでも生み出せる存在。シャドーダインのブレアリア・ディーンはな」
「それの魂魄はどうなるんだ。そいつらに魂魄はあるのか?」
「……無いな。あのブレアリア・ディーンには特別な感情が生まれたのかもしれぬ。
だが再び作り出せば……」
「俺にとってのブレディーはあいつだけだ。あんたがそうさせたいならそれは構わない。だけど、そいつら
をブレアリア・ディーンと呼ぶのはやめてくれ……頼むから」
「人の子らしい意見だ。貴様がそういうならいいだろう。シルアリア・ディーン。
とでも呼ぶがいい。イネービュ様にお願いするのだぞ」
「ああ。ついでにブレディーの事もきっちり問い詰めてやる。
正直いらついてるんだ、今回の件。神は勝手すぎる」
「ふふ、このイネービュ様の遣いに、それを言うか。まこと人の子は面白い」
沈んで行きながら目的地に着いたのか、闇が晴れていく。
そこは殺風景だが広い空間で、光のあたる不思議な場所だった。
ここに、絶対的な神の一柱がいるのか。
俺はごくりと唾をのんだ。
ブネはその場にはおらず、後ろの席に座っていた。
……神ってのは恐ろしいと思う。それは人の能力を大きく超える存在だからなんだろう。
ましてや人がメロンパイを作ってるときに……とはいえ思い出せた事は他にもある。美味しいメロンパイ
の味だ。
「うーん、これで代用できるかな? 俺がいない間に随分と調味料とか整えてくれたんだな」
このルーンの安息所は基本的に共同で使っていい事になっている。
とはいってもここの住民はかなり増えた。三夜の町の住民さんはあまり使用していないのだろう。
「味は……よし、後は焼いて……ってメルザいないんだった。どーしよ。そうだ、獣化して……っと」
ついに使えるようになった炎! 少々焼き過ぎるかもしれんが……これも練習だな。
えーと……「フレイムノード」
点火位置から少しずつ焼き入れをする点に微調整していく。
「あ……焦げた。まぁそりゃそうか。これ、幻術なのか妖術なのかどっちなんだろう……」
「おい、準備は出来たか? ……何をしている。真っ黒なダークマターを作っているのか」
「火力の調整が難しいんだって。覚えたばかりだし……」
「時間が惜しい。教えてやる、今貴様が使用したのは妖術だな。フレイムノードといったか。
器用なイメージが出来ているが、この炎は先端部分の温度が高すぎるのだ」
「見ただけでそこまでわかるのか?」
「レピュトの手甲を使ってみるがいい。今はそちらの方がうまくできるだろう。
そちらでもう一度フレイムノードを放て」
「あ、ああ。つってもまずは……神魔解放! ……お、本当だ。感覚の違いか」
「よし、その温度で留めよ。上手くいったな」
「ふぅ、神魔解放。この感覚をつかめばいいのか」
「要領は教えた。後は練習するがいい。さぁそれで全部か? あちらで貴様の支度もせねばならぬ。
それを持っていくぞ!」
「え、ええ? その、色々進みすぎてて何がなんだか……」
焼きあがったメロンパイを皿に乗せて持ち、俺はブネに連れ去られた。
透明な玉のようなものに入り一気に外へ出て泉へと落ちて行く。
三層に一気に戻り、そこから神殿下の滝へと突撃していく。
「うわ、ぶつかる! まじか!」
「まったく、人の子はみんな同じ事を言う。ぶつかるわけがなかろう。
それでぶつかるならこのブネもぶつかるではないか」
「あ、確かに」
すーっと滝の中に入ると、その先は真っ暗な空間。そこから下へ下へと降りていっているようだ。
「なぁブネ。人の死についてと、俺がいた前世について少し聞いていいか?」
「四層に着く間であれば構わぬ」
「前世とこの世界についての繋がりってなんなんだ? 前世で死ぬとみんなここに来るのか?」
「海星の一部。銀河系の星、地球。あまねく無数の神々は地球とこの世界を行き来しておる。
神々はこの世界に良い影響をもたらす文明、知識のみを送り込む」
「この世界にとってのよい影響?」
「よいか、人にとってではないぞ。この世界にとってだ。それは先ほど貴様に話した魂魄であったり
世界を破壊しない知識であったりする」
「行き過ぎた文明は星を滅ぼすからか。今の地球のように」
「かの星は滅びぬ。なぜかわかるか?」
「星が在り続けるために、その姿を変える……からか?」
「そうだ。人が住めなくなることはあり得るが、星が消滅するわけではない。
人はその存在こそが中心であると考えるが、世界においては極小さい存在。
生と死。これが人の持つ最大の役割」
「その役割を乱す者がゲンドールの神々にいる……と?」
「そうだ。ゲンドールの世界そのものが消滅すれば、宇宙は膨張し、星々は消え去る。
生命体の存在そのものを消滅させるかもしれぬ。
エターナルボイド。その状態になれば神々も消滅するだろう」
「エターナルボイド……どうやって止めれば」
「暗躍している神々を封印する。ディーンに任せる予定だが」
「そのブレディーがいないじゃないか!」
「貴様は何を言っている。幾らでも生み出せる存在。シャドーダインのブレアリア・ディーンはな」
「それの魂魄はどうなるんだ。そいつらに魂魄はあるのか?」
「……無いな。あのブレアリア・ディーンには特別な感情が生まれたのかもしれぬ。
だが再び作り出せば……」
「俺にとってのブレディーはあいつだけだ。あんたがそうさせたいならそれは構わない。だけど、そいつら
をブレアリア・ディーンと呼ぶのはやめてくれ……頼むから」
「人の子らしい意見だ。貴様がそういうならいいだろう。シルアリア・ディーン。
とでも呼ぶがいい。イネービュ様にお願いするのだぞ」
「ああ。ついでにブレディーの事もきっちり問い詰めてやる。
正直いらついてるんだ、今回の件。神は勝手すぎる」
「ふふ、このイネービュ様の遣いに、それを言うか。まこと人の子は面白い」
沈んで行きながら目的地に着いたのか、闇が晴れていく。
そこは殺風景だが広い空間で、光のあたる不思議な場所だった。
ここに、絶対的な神の一柱がいるのか。
俺はごくりと唾をのんだ。
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