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第二章 神と人

第三百十七話 悲しみの意識

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「なんだこれは。ティソーナが俺に見せているのか? それとも賢者の石? 
或いはブレディー……なのか?」

 目の前の情景が今居た場所と全く異なる景色へと変わった。

 ここはどこだろうか。一面真っ青だ。海……か? この世界の海なんだろうか。
 何もない。地平線が見える程に何もない。
 
「本当にこの地でよいのか」
「宙域は膨張し続けている。抑制するためには必要なことだ」
「だが、ゲン神族たちは許すまい。大きな争いが起こる」
「それも定められた事。宙域の膨張が止まらなければ、ゲン神族とて支配場所を多く失う
事になる。結局受け入れるしかないのだ」
「管理者はどうするのだ?」
「それぞれ役割を持たせる者を創造し、管理させよう。その者が失われた場合、最も近しい者を
引き継ぐ者へ移す。よいな」
「我はネウスーフォ。海冥神の名の下に冥府の管理者を招来する。タルタロス・ネウス」
「……」
「気が早いな、ネウスーフォよ。ここで呼び出してもまだ、海しかあるまい」
「冥府は地底へ創造する。ついて来い、タルタロスよ」
「……」
「スキアラよ。其方はどうするのだ」
「海底で神殿を築き、そちらで創造しよう。シャドーダインを創造し、賢者の石を与える」
「それならば私も共に参ろうか。このイネービュも海底にて創造するとしよう」
「みな、勝手だな。このウナスァーには海で機能することが難しいというに。
イネービュよ。其方はどのようなものを管理者にするつもりだ?」
「そうだな。ネウスーフォが地底を構築して冥府を管理するのであれば、拮抗する力が
必要となるだろう。まさか一名の者に管理させるとは思わなかったが。
まず地上を構築してエルフ族に一名、そして地底に住まう魔族に一名。
強大な力を分けて持たせる。二神の剣と黒曜石の剣を」
「コラーダとティソーナか。紫電はどうするのだ。ネウスーフォは先ほどのタルタロスに
紫電を持たせるはずだが」
「冥府の番人であれば必要であろうが、紫電を保持させておくのはあまりに危険。
辞めておくよ。ウナスァーはどうするか決まったか?」
「強大な兵器を創造して地上に分散し、置く事にする。そうしなければ
人が増えすぎるだろう。このウナスァーの役目は拮抗を取る事。人類が増えすぎても減りすぎても
いけない。偏れば冥府の番人の仕事が増えすぎるだろう。それとアーティファクトを
多く創造してばらまいておこう」
「そうか。管理者は?」
「後々創造しよう。今は創造出来そうにない」


 ……絶対神……か。そして語らう内容が恐ろしい。特にタルタロス……あいつがそうなのか? 
 これは遠い昔の話何だろう。あいつは一体何年生きているんだ。役割を与えられ、まるで道具のようにか。
 そして、きっとブレディーもこの神たちの道具に……。
 勝手だよな。本当に勝手だよ。普通に生まれ、普通に死ぬ。生物が本来持つべき生き方すら
出来ないなんて。何百年、何千年、何万年も縛られて。
 本当は終わりたかったんじゃないのか? でも、あいつがバラムになる前に願った事。
 一緒にいたい。戦うのは嫌。俺たちといると温かい……そんな場所。
 それに、俺が死ねば一緒に消滅してしまう……か。だったら俺が生きてる間、めいいっぱい一緒に
いてやろう。今まで楽しめなかった分、大いに楽しませてやろう。
 そして俺自身も大いに楽しもう。
 それがブレディーの主になった、俺に出来る事だ。


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