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第二章 神と人

第三百十五話 獣神魔・真 ベリアル

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 俺の身体がみるみるうちに変化する。角が生えた炎の獣といったところだろうか。
 今まで一度も炎の術など
使用出来なかったのに、この体になじむ感じは一体なんだ。
 しかも本来のモードは海水。海水と炎の双方を操る術を持つこの形態。
 いままで以上の事が間違いなく出来る! 

 今自分に出来る最終形態。意識もはっきりし、破壊衝動も十分抑えられる。
 ……これもメルザのおかげだ。
 異常なまでに体が軽い。気分の高揚が凄い。

「ジェネスト! メルザを頼む! バラム、いくぞ!」
「……」
「……ベリアル。そのうちなるはベリアルそのもの」

 四足で駆け一気にバラムの眼前に出る。獣の拳を一本の剣へと変化させ
回転しながらえぐり込む。

変革なる一撃カタストロフィ
「闇の……くっ。防御が光で防がれる」

 メルザの光幻術が相手の行動を大きく阻害する。
 おかげで俺の技は炎を纏い貫通し、闇の一部を切り裂き反対側へ突き抜ける。
 百八十度回転し、今度は戦車形態へと変形し、でかい一撃を放つ。

「セーレ、右にそれろ! 赤海星の変革なる一撃!」

 主砲に赤海星の力を込めてぶっ放す。
 右半分を思い切り吹き飛ばした。

「痛みなどない。悲しみもない。哀れみも無い。無情に、そして無常に。
散りゆくは戦場の調べ。汝、まさしくベリアルの力!」
「うおおーーーー、終わらせてやる。これがお前へぶつける最後の力だ!
「剣戒! 驚、懼、疑、。妖赤海星の巨爆烈牙剣・双」

 レピュトの手甲をお用い、三つの分厚い斬撃を正面に放つ。
 それに重なるよう、メルザのラージャが強烈なブレスを放つ。

「&、俺ぇーーーー! 変革なる一撃! これで、終わりだ!」

 先ほどと同じくして心臓部分へ手をかけようとした……が、くそ。失敗だ。

「汝らにこれを渡すわけにはいかない。このバラム死す時こそ至宝の宝は委ねられる」
「へへ。そうだよな。俺、一人だと不可能だよな。ここにいるメルザ、ジェネスト、セーレ
だけでも難しいよな」
「汝、何を問う。このバラムを撃ち滅ぼし、神の剣を手にするのであろう」
「いいや違うね。お前を討ち滅ぼす必要なんてない。
一か八か、アルカーンさんに聞いた。いい答えが得られたよ。あっちも大変だろうが
あっちを助けに向かうにも、ここを何とかしなきゃいけない」


 ――――。

 バラムへ挑む前の休息中の事。

「今のまま突撃して、どうにかなる可能性はあるか、ブレディー」
「無い。絶対に。ブレディーは、ルインを襲う。負けたら消滅する」
「つまりティソーナを得るにはブレディーを負けさせないと手に入らないのか?」
「わからない。でも、動き出したら、死ぬまで、襲ってくる」
「俺に考えられる術はまず、ブレディーを止める事だ。だが……具体的にどうすればいいんだ?」
「わからない。ブレディー、そうなったこと、ない」
「そうだ! アルカーンさんならもしかして……あの人の能力は神に匹敵するんじゃないか」
「誰? 人?」
「妖魔だが、時術やモンスター作成術を持つ、稀代の天才妖魔だ」
「でも、ここ、海底……」
「アルカーンさん、聞こえてたら返事してください! お願いします。大ピンチなんです!」
「騒がしいぞ。一体何用だ。こちらも非常にたてこんでいるというのに」
「賢者の石って、知ってますか? それと、闇の賢者についてとか」
「興味無いな」
「賢者の石っていったらそれこそ時計の情報すら満載ですよ」
「興味が沸いた。詳しく話せ」
「……」

 やっぱり時計狂だよ! 一通り話をしてみた。ある種の賭けだが、アルカーンさんは
ぶっ飛びすぎていて俺と似ている。
 前世の発想がぶっ飛ぶ俺に対して現世での発想がぶっ飛ぶアルカーンさん。
 だからこそ馬が合っているのかもしれない。

「成程。そういうことならどうにかなるかもしれんな。その代わり貴様のルーニーは
失われ、プログレスウェポンも一度消滅する」
「……そうですか。ルーニーは再構築、可能ですか?」
「可能だ……ちょうどいい。貴様のそのナマクラ、たたき直してやる」
「プログレスウェポン、無いと俺の身体能力が大幅に下がりますよね……」
「いいや。一度身に着いた身体能力は、その武器が消滅しても消えることは無い。
封印されたモンスターを失えば身体能力は下がるがな」
「っ! そうか。武器そのものが強化された武器になるだけで、プログレスウェポン自体の
能力が俺へと還元されてたわけじゃないのか」
「当然だ。いいか、これはルーニーに仕込ませたプログレスウェポン再構築用の術。
貴重な鉱石などを見つけた時、ルーニーとプログレスウェポンを再構築するため、仕込んでおいた。
対象を吸収してルーニーごと俺の許へ空間術で自動的に戻る仕組みとなっている。
俺と貴様だけ発動可能だ。使用後どうなるか俺にもわからん。だが」
「つまり対象を完全封印してアルカーンさんの許へ戻ると?」
「そうだ。そのブレアリアとかいうのに戻せるのかどうかはわからん。だが、殺す事はない。
しかも俺の許へ戻せば俺の部屋へと封印しておける。そうすれば……」
「あの部屋なら、時間経過することなく、戻す方法を模索できる……ですね!」
「そういうことだ。だが結果がどうなるかまで予測はつかん」
「いえ、どのみち殺さずにどうにかする手段として、試してみる価値はあると思います!」
「久しく聞いていない程いい声だな。ルインよ、まだまだなすべき事が多い貴様だが、期待して
いるぞ」
「それは時計作りへの期待ですよね」
「当たり前だ。ルーニー再構築の言葉だが……」

 アルカーンさんからその言葉を聞き、俺は決意した。
 ルーニーをここぞという時のタイミングで使用できるよう事前に放出しておき、隙をつくると。


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